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裏方もいとわない澤、団結のなでしこ

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[7.1 女子W杯準決勝 日本2-1イングランド エドモントン]

 なでしこジャパンが2大会連続の決勝進出を決めた。イングランド相手に苦しい戦いを強いられながら、後半アディショナルタイムに相手のオウンゴールを引き出した。FW大儀見優季は言う。「延長に行くイメージはまったくなかった」。理由は分からないそうだが、90分で決着がつくと予感していたのだという。

 ピッチ内では当然、90分間で決着するものとして戦っている。だが、ベンチは延長に備えて準備をしていた。佐々木則夫監督はMF澤穂希をどのタイミングで投入するかを計っていた。

「ラスト3分の手前のところでは澤選手をボランチに投入しようと思っていたのですが、切り替えて延長から使おうと思っていました。他の選手が足をつることもあるので、もう1枚のカードはキープしようと思っていました」

 澤は決勝トーナメントに入ってから先発していない。だが、これまでなでしこジャパンを支え、引っ張ってきた特別な存在であることは確かで、指揮官は「澤が入った瞬間にみんなの意識が高まるし、引き締まる」と、別次元の信頼を置く。

 その澤は後半終了間際、他のベンチメンバーと一緒に氷袋をつくっていた。前後半の間のハーフタイムと違い、延長戦の前はロッカールームに戻らない。ピッチ上でひと呼吸置くと、すぐに延長戦開始の笛が鳴るため、短い時間をロスなく活用する必要がある。試合に出ている選手の体を冷やし、少しでも体力を回復させるための氷袋。それをベンチにいる選手たちが先回りして量産していたのだ。

 澤はその中心で手を動かしていた。大ベテランがその作業を率先して行うことで、どれだけチームの雰囲気がまとまるかは想像に難くない。イングランド戦の前日会見でFW大野忍は「安藤選手も含めた23人で戦っている」と話した。きれいごとのようだが、そうではない。

 厳しい戦いになればなるほど、チームとしてのまとまりは不可欠で、そのためにはピッチに立っている選手以外の力が大事なのだ。この団結を持ってすれば、2連覇は可能なのではないか。試合終了間際のベンチ脇を眺めながらそんなことを思った。

(取材・文 了戒美子)

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