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終盤は中田浩二の“一人舞台”に…「最初から敵が多いなと」

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[7.5 ENCORE 合同引退試合 ANTLERS LEGENDS 5-2 KAY FRIENDS カシマ]

 主役3人のうち、柳沢敦新井場徹は前半のうちに得点を決めていた。一方の中田浩二は、チャンスがありながらもなかなか決めきれない展開となっていた。「申し訳ないなと思いながら」プレーしていた中田だが、シュートが決まらない展開が面白さに変わっていった。

 後半22分、3選手とゆかりのあるサッカー界の仲間たちで編成された「KAY FRIENDS」がPKを獲得した。キッカーを譲り合っていたため、ゴールのなかった対戦相手の中田が自らキッカーに名乗りを上げる。「ボール持ったら(中村)俊輔も『面白いね』って言ってくれた」。ただ「みんな止めろ止めろって言ってて」と苦笑い。GK曽ヶ端準が完璧に読み切る“期待通り”の展開に、敵味方関係なく選手たちも盛り上がる。「みんな嬉しそうに、両チームともハイタッチして。おかしな光景でしたね」と首をかしげた。 

 さらに終盤戦は、柳沢がスピーチで「僕がピッチにいたことを覚えてますか?」と自虐ネタをはさむほど、中田の独り舞台となった。後半33分、同38分に蹴ったFKは枠を外れる。同35分の壁をひざまずかせたFKは枠を捕えたが、GK楢崎正剛に弾き出されてしまった。「最初から敵が多いなと思っていた。前半から僕がゴール前に行くと、お前には取らせないよと言われていた。冗談だと思っていたら、本当に多かった」。

 しかし最後にはきっちりお膳立てもされた。後半40分、柳沢の突破から獲得したPKを中田がセット。宮島一代主審もバニシングスプレーでPKスポットに「KOJI」と記した。「素直に嬉しかった」と話した中田。PKを蹴る前に楢崎としっかり話し込んだこともあり、見事に逆を突くPKをゴール右隅に蹴り込んだ。

 この日、引退試合を迎えた中田だが、今季から鹿島のクラブ・リレーションズ・オフィサー(C.R.O)に就任。すでに第2の人生をスタートさせている。また、Jリーグと立命館大による経営人材育成プログラム「Jリーグヒューマンキャピタル(JHC)」の第1期生にもなった。

 開講式で話した「いつかはチェアマンになりたい」と話したことも話題を呼んだ。これについては「言葉が大きすぎて、一人歩きしている部分がある」としながらも、「自分は国内だけでなく欧州のサッカー界で見てきたものがある」と胸を張る。「現場だけでなく、経営や事業にも結びつけられれば、日本サッカーはもっともっと良くなると思う」と目を輝かせていた。
 
※敬称略

(取材・文 児玉幸洋)

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