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[ユニバ]「俺が止めたら、俺が蹴る」、勝利の立役者・GK福島がみせた心意気

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[7.13 ユニバ3位決定戦 日本0-0(PK7-6)ブラジル]

「俺が止めたら、俺が蹴る」

 ユニバーシアード大会3位決定戦。GK福島春樹(専修大4年=静岡学園高)は、そのPK戦を前にしてチームメートにそんな宣言をしていた。サドンデスに入って「決めれば勝ち」のシチュエーションになれば自分が蹴る。そんなシンプルな宣言を受け入れられるような土壌を、福島は1年8か月に及んだこの選抜チームでの活動を通じて築いてきていた。専修大の僚友でもあるDF萩間大樹(専修大4年=川崎F U-18)が言うところの「春樹なら大丈夫かな」という感覚である。

 始まったPK戦、あと少しで止められるという惜しい形を何度も作ったのはブラジルのGKのほうで、福島は逆方向へ飛んでしまうシーンばかりが続く苦しい流れである。迷いが生じかねない状況だが、「この身長ですから相手を威圧して外させるなんてできない。自分の積み上げてきたもの、感覚を絶対に信じようと思っていた」と己の「勘」を信じ続けた。

 6番手でこの試合もっとも惜しい形を作ると、続く7番手のシュートにキッチリ反応してガッチリとキャッチ。そして自らボールを拾うと、事前の宣言通りにペナルティースポットにボールを置いた。

 狙うコースは「ど真ん中。ど真ん中に思い切り蹴る」というシンプル・イズ・ベスト。間合いを取ることもなく、悔いなき一撃を自慢の左足で叩き込む。大きく揺れるゴールネットと派手なガッツポーズとは裏腹に、内心は「正直、ホッとした」という一発で試合は終了。日本の銅メダル獲得が決まった。

「PKだろうと何だろうと、どんな勝ちでも勝ちは勝ち。そういうコンセプトでやってきたチームだったし、勝って終われて良かった」

 ベンチで敗退を見守った準決勝から中1日。絶対的な目標として掲げてきた金メダルの可能性が消滅する中で迎えたこの一戦で、チームには不思議と確かな一体感があった。PKの借りをPKで返したエンディングを頼れる主将が演出し、“神川ジャパン”の冒険は幕を閉じることとなった。

[写真]PK戦で真価を発揮した福島

(取材・文 川端暁彦)

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