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[クラブユース選手権(U-18)]甲府U-18がプレミア勢の神戸U-18に逆転勝ち!3度目の挑戦で初の8強進出!!

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[7.26 日本クラブユース選手権(U-18)大会決勝T1回戦 神戸U-18 1-2 甲府U-18 宮城総合]

 第39回日本クラブユース選手権(U-18)大会は26日、グループステージを勝ち抜いた16チームによる決勝トーナメントへ突入。1回戦8試合が行われ、プレミアリーグWEST勢のヴィッセル神戸U-18(兵庫)とヴァンフォーレ甲府U-18(山梨)との一戦は、2-1で甲府が逆転勝ちした。甲府はクラブ史上初のベスト8進出。28日の準々決勝では横浜FMユース(神奈川)と対戦する。

 昨年、一昨年と跳ね返されていた全国8強への壁。甲府が3回目となる「ラウンド16」挑戦で歴史を塗り替えた。小佐野一輝監督が「去年も、一昨年もこの16で跳ね返されていたので、ひとつここを越えたいと。今年スタートしたところから、クラブユースではそこを目指すとやっていた。去年、ピッチでその悔しさを味わっていた選手が多いですし、何とか今年ここを越えようという気持ちが大きかった」と表情を緩め、終盤、相手のパワープレーを跳ね返したCB佐藤開(3年)は「ヴァンフォーレ史上初のベスト8。壁をひとつ乗り越えることができた」と胸を張った。

 雪辱の舞台に臨んだ甲府だったが、鮮烈な一撃でいきなり失点してしまった。序盤からボールを保持して試合を進めた神戸は前半5分、パスワークに変化をつけたMF中坂勇哉(3年)がドリブルで中央突破してミドルレンジから左足を振りぬく。これがゴール右上隅に突き刺さるスーパーゴール。早くもリードを奪った神戸は畳みかける。8分には相手のプレスを強引に剥がしたCB山川哲史(3年)のスルーパスで抜け出したFW野原健太(3年)が決定的な左足シュート。だが、これは甲府のU-18日本代表候補GK中村将(3年)が阻止する。甲府はビッグセーブに救われたものの、12分にも神戸のU-18日本代表右SB藤谷壮(3年)にワンツーからのドリブル、クロスで決定機をつくられた。

 それでも、何とか踏みとどまった甲府はボールを奪い返すと、強いプレッシャーをかけて来ない相手に対してポゼッションから反撃。だが、甲府は「(神戸は)プレミアだけあって、一人ひとりの質が凄い高くて、ミドルシュートもめっちゃ上手くて、どうなるんだろうと思った。でも、監督が相手と自分たちをマッチさせて、相手に合わせて行って、自分たちの流れに持って行こうと試合前に言っていた。試合中にヴィッセルに合わせられて、自分たちの流れに持っていけた。全然逆転できると思っていた」というU-18日本代表候補MF末木裕也(3年)を中心にボールを左右に動かすと、前線で強さを見せるFW宮川瑞希(2年)がボールを収めるなど攻め返して見せる。また前線からの守備で良く相手のパスコースを消していた甲府は、神戸に仕掛けられるシーンはあったもののDF陣が1対1で強さを発揮するなど、相手に劣らない内容のゲームを展開していた。

 それでも前半はまだ落ち着いて攻めるまでには至らず、強引なパスを奪われていた甲府に対して、個々の技術で上回る神戸が主導権を握る。正確なボール回しで相手を走らせると、38分にはループパスで抜け出した野原がGKとの1対1からループシュートを放つ。だが、これが枠を外れると、甲府がファーストシュートで同点に追いついた。42分、甲府は前線でボールを収めた宮川が右前方へはたくと、MF川手秀斗(3年)が正確なクロス。これを連係よくニアサイドへ飛び込んだFW土屋真輝(3年)が右足ダイレクトで合わせて1-1で前半を折り返した。

 後半、中坂からの大きな展開も交えて攻める神戸は、相手に警戒されながらもスピードで違いを見せていた藤谷がクロスまで持ち込んで甲府にプレッシャーをかける。だが13分にU-17日本代表MF安井拓也(2年)が放った右足ボレーを中村にはじき返されるなど突き放すことができない。逆に甲府は後半21分から投入されたMF深澤泰雅(3年)が鋭い動きでチャンスメーク。30分に絶妙な飛び出しで土屋のアーリークロスを引き出したシーンは得点には結びつかなかったものの、深澤は33分に左サイドでの突破によってFKを獲得する。このFKを末木が右足で蹴り込むと、「相手の3番(山川)に前のセットプレーから全部返されていたのでそこは外そうと。(佐藤)開くんが前に引き付けてくれたし、自分もニアに行くフリしてファーに行ったら、相手も引っ掛かってくれた」というMF西海那音(2年)が頭で叩きつける。「10番の(末木)裕也クンがいつもいいボールくれる。今回もすげぇいいボールだった。(ゴールは)完全にキッカーです。キッカーに感謝です」という一撃がゴールへ吸い込まれて甲府が試合をひっくり返した。

 神戸は終盤、藤谷のクロスやDF前川智敬(1年)のロングスローを次々とPAへ放り込んで同点ゴールをもぎ取ろうとする。だが、西海が「相手の方が上手いのは分かっていた。甲府らしく泥臭く走らないと次にいけない。それが甲府スタイルだと思っているので、暑い中でも走れたのは勝てた要因」と語ったように運動量を落とさずに走り続け、佐藤やDF森本裕来以(3年)、河野陸也(3年)中心に神戸の攻撃をはじき返した甲府が勢いを保持したまま2-1で勝利。「勢いがなくなったら、ウチは終わっちゃう。そこが一番の強みだと思っています」という小佐野監督は「質のところとかは胸を張れるような内容ではないので、質を上げてもうちょっと自分たちの時間を増やしてということが理想」と内容面については首を振ったが、堂々の8強入りを果たした。

 甲府は1年生から3年生まで合わせて28名。3年生が引退すると、紅白戦も行うことのできないような状況だ。だが、人数が少ない分、芽生えた責任感がある。「少ないと他人任せにはできないメリットがあるので、多いと誰かがやってくれるみたいなところもあるけれど、少ない選手、少ない人数の良さかなと思っています。ピッチに立てるチャンスも(多く)ある」(小佐野監督)。また、中村も「(人数が)少ないんで日々の練習もハード。ゲームも何本も連続で出るんで、そういうところで夏暑くても走れるということに繋がっていると思います」と“少数精鋭”で磨かれた部分を説明した。少ない人数で切磋琢磨しながら成長し、昨年、一昨年の悔しさも晴らして8強入り。だが、選手たちの「本当の」目標はまだ先にある。中村は「自分たちは1年生の時に全国大会に連れて来てもらって、自分たちの代では『絶対に三ツ沢でやろう』と言ってきた。一歩一歩やっていくしかない。次の一戦も自分たちのカラーを出してやっていきたい」。目標はニッパツ三ツ沢球技場で開催される準決勝進出。横浜FMユースとの関東勢対決を制してまた新たな歴史を築く。

[写真]後半33分、西海(中央)の決勝ゴールを喜ぶ甲府イレブン

(取材・文 吉田太郎)
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