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[MOM1436]東福岡MF中村健人(3年)_AT被弾も、逆境跳ね返させた1年前の経験

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.9 全国高校総体決勝 東福岡高 1-1(PK6-5)市立船橋高 ノエスタ]

 1年前の経験が頭を切り替えさせて、身体を動かした。東福岡高は1-0で迎えた後半アディショナルタイム、ほぼラストプレーだったFKを市立船橋高MF工藤大暉に決められて失点。目前に迫っていた日本一が遠のき、一転、延長戦を戦うことになってしまった。

 失望感含まれたまさかの失点。チームの士気は確実に追いついた市立船橋が上回っていた。だが、東福岡は延長戦で崩れなかった。MF中村健人主将は「(追いつかれて)『負けるかも』、というのは思わなかったです。去年、自分たちは逆の立場で押し込まれるというのが分かっていたので、それをさせないためにも声がけをしたり、自分がまず走ってということを意識しました」。中村は延長戦の末、大津高に4-1で勝って優勝した昨年の決勝経験者。その試合で東福岡は0-1から試合終了2分前に追いつくと、延長戦で動きの落ちた大津から3点を奪って優勝した。追いついたチームの勢いと雰囲気、追いつかれたチームが失速した姿も知っているからこそ、チームリーダーの中村はこの日、気落ちしてもおかしくない状況だったチームメートに声をかけて前向きにさせ、自ら走ってチームを鼓舞した。

「走ることは意識しました。みんな延長とかで足が止まっていたので、まず自分がやって、それから指示して、ということで自分が見せる様にしました」と中村。気温33度、延長戦で両校ともに体力、判断力が低下している状況で主将は誰より走り、試合を決めようとしていた。延長後半6分には左クロスに思い切り良く飛び込み、9分には敵陣でのインターセプトからドリブルで仕掛けて右足を振りぬく。森重潤也監督も「『もう一回頑張ろう』と延長戦に入ってからみんなの目も輝いていたし、最後は気持ちが相手よりも上回ったと思います」と選手たちの延長戦での戦いぶりを賞賛。試合を決めるゴールを奪うことはできなかったが、“なかったはず”の延長戦で市立船橋に飲み込まれることなく、チームを前向きにさえた主将の存在は大きかった。

 ヒガシの10番を背負うMFは、やや後ろに重きを置いた戦いとなった決勝でも高い攻撃センスを発揮していた。相手の背後へ通すパスやワンツーでの崩し。マッチアップした市立船橋の注目MF椎橋慧也主将に存在を消されている時間も少なくなかったが、それでも押し込まれる展開の中でも攻め返すこと、カウンター攻撃を意識して運動量を増やして走り回った。闘争心を表に出す選手ではないが、背中で魅せ続けた主将は「みんな最後まで気ぬかずにやってくれたので、キャプテンとしても助けられました」と仲間たちに感謝。そして2連覇を素直に喜んでいた。

 全国屈指の司令塔である中村は今大会、展開を一発で変えるロングパスや相手の背後へ通すパスで脅威となり、2年連続で大会優秀選手に選出されたが、ミスもあり、目標としていた得点量産を果たすこともできなかった。守備を意識してパートナーのMF藤川虎太朗のサポート役に回っていた部分もあるが、本人は大会を通してのプレーには満足していない。「全然得点できていないし、ちょっと厳しくマーク着かれたりしたら個の力で打開できない部分があるので、個の部分を上げていきたい」と誓う。全国制覇したがここで立ち止まる訳にはいかない。個人としても、チームとしても成長して冬を迎える。

(取材・文 吉田太郎)
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