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[MOM345]関西学院大GK上田智輝(2年)_大一番の強さを見せたシンデレラボーイ

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.16 総理大臣杯決勝 明治大0-2関西学院大 キンチョウ]

 夏のトーナメントで一気に存在感を強めた。総理大臣杯の決勝戦、関西学院大の2年生GK上田智輝(2年=京都U-18)は2本のビッグセーブで初優勝に大きく貢献。しかも、2点目をアシストするというおまけも付く活躍を見せた。

 試合後は「後ろが我慢すれば、前は絶対に取ってくれると思ってやっていた。アシストは狙ってはいなかったけど、残り10分でリードしていたのでハッキリやろうと思って上に大きく蹴ったら、そういうことになったので良かったかなと思う」と笑顔を見せた。

 拮抗した試合でチームに流れを引き寄せるセーブが光った。スコアレスで迎えた72分、相手のダイビングヘッドを好反応でセーブ。先制直後は低いクロスを目の前で合わされたが、体を壁のようにしてゴールを守った。

 上田は「1本目は、予備動作のプレジャンプもしっかりとできて、足を運べた。リク君(DF井筒陸也)がコースを限定してくれていてニアしかなかったので、そこを止められればと思って弾くことができた。2本目はヤバイと思った。左に少し移動した瞬間に打たれたけど、正面に来たので体のどこかに当たれば、DFがクリアしてくれると信じた。足に当たったところをDFがカバーしてくれて良かった」と2本の好守を振り返った。もし、先制を許していたら、あるいはすぐに追いつかれていたら、試合の結末は変わっていたかもしれない。

 決勝のアシストは偶然的なものだったが、左足の精度は高い。「目指しているのは、西川周作さん。自分もビルドアップが得意だし、攻撃の起点となるパスを出せる選手になりたい」と目指す守護神像を描いている。

 奈良の東和FCでプレーした小学生時代は、5年生までDF。セットプレーのキッカーも務めていたという。GK転向の理由は「当時から体が大きかったし、足が速くなくて走るのが苦手だったので、一番楽かなと思った。あとは、3つ上の兄が一時GKをやっていたので、その影響はあると思う」と今一つ冴えないが、決断は正解だったようだ。

 転向後は、人生の岐路にとことん強い経歴を歩んでいる。「まさか受かるとは思わなかった」と腕試し程度に受けた京都U-15のセレクションに合格。大学進学も当初はスポーツ推薦を受けていなかった関学大の練習に参加して、実力で推薦をもぎ取った。そして、今大会ではシンデレラボーイとして一気に飛躍した。

 関西学院大の守護神と言えば、C大阪の特別指定選手となっている村下将梧。しかし、成山一郎監督は、天皇杯予選を兼ねる兵庫県サッカー選手権の準決勝で上田を先発に抜擢すると、そのまま総理大臣杯でも起用を続けた。村下を「いつか越えなければいけない存在」と追いかけて来た上田にとって、今大会は並びかける大きなチャンスとなった。

 エースである呉屋大翔が「リーグではずっとサブだったけど、今大会は勝ち上がって行くにつれて、存在感を増して来た。大臣杯の前から調子が良くて起用されたけど、将梧を押し退けて試合に出る責任感もしっかりと持ってやってくれた。正直に言って、能力の面では将悟の方がまだ上だと思うけど、大臣杯では持てる力以上のものを出し続けていて、大会を終わってみると、本番に強いGKというイメージに変わった」と話したように、大会中は、チャンスを物にしていく力をまざまざと発揮した。

 優勝決定の瞬間は、ボールを手に持った状態だった。まさに「持っている男」を象徴するようなシーンだった。総理大臣杯で突如として輝きを放ったシンデレラボーイの将来の夢は、プロ。上田は、再び始まる村下との先発争いでさらに力を高めていくつもりだ。

(取材・文 平野貴也)

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