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[UAチャレンジカップ]元日本代表MF金田氏が高校生の試合を観戦、スペースではなく足下へ通すパスの重要性を説く

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[8.19 UAチャレンジカップ2位リーグ 大体大浪商高 0-2 浜名高 J-GREEN堺]

 日本代表の最年少ゴール記録を持つ金田喜稔氏が19日、「アンダーアーマーチャレンジカップ2015 SUMMER」2位グループの大体大浪商高対浜名高戦を観戦。予選グループ1位にわずかに届かなかった両チームのプレーを見ながら、スペースではなく足下へ通すパスの重要性を強調していた。

 前日18日に出場16チームを対象として行われたサッカークリニックで金田氏は選手たちへ向けて足下へ強いパスを出すことの重要性を説いた。それを意識してか、この試合では大体大浪商、浜名ともに受け手の足下にスピードのあるパスを通すシーンが見られたが、金田氏は「(中盤から)1タッチで瞬間で出してくる選手もいないので、1タッチで出てくると予測して動き出すFWもいない。これではスピードが上がらない」と指摘。「受ける方が、スペースへ出てくるのではなくて、強いパスが足下に出てくると思ってゲーム構築すると受け手と出し手の共通理解だけでも全然ゲームが変わる。これを概念で攻撃を組み立ててくれたら日本のスピードはもっと上がっていくと思う」と語った。

 金田氏の考え方ではスペースへのパスは「チーム全体でマイボールから離れている時間」。スペースへのボールを蹴った時点でボールを相手に渡してしまう可能性が高まってしまう。この試合では出し手がスペースへ縦パスを蹴り出すものの、受け手が全く反応できずに相手ボールになってしまうようなシーンが何度もあった。また味方が反応できずにGKへ渡ってしまうようなスルーパスも。「抜けるようなパスというのは元々パスコースはそこにないですから。(日本の指導は)スペースへ出しなさい、もらいなさいですけれど、インターセプト狙われるのはスペースへのパスなんですよ。日本代表が良くなったのは長谷部とか山口蛍とか足下へきっちり通すパス、それも(相手が予想しづらい)半身になってパスを出せる選手が増えたからだと思うんですよ。身体の向きと足下へのパスの精度が高いからショートパスの連係が(香川)真司とか長友とかが絡んだ時に出てくる。彼らはスペースではなく、足下に通していますよ」。よりゴールやチャンスを増やすため、遅攻でもカウンターでも足下へ正確に強いパスを通して攻撃すること、ボールを離さないサッカーをすることを提言した。

 この試合、浜名はともに技術高いMF前野隼弥とMF染葉達樹のダブルボランチがバックパスを多用しながら、よりいい形で前を向くことができるタイミングで受け直してそこから一気に攻撃をスピードアップさせていた。金田氏はより前を向く回数を増やすために「(受ける際に)角度をつける癖をフリーの時もつけた方がいい。そうすればもっと前を向ける回数が増える。今はゴールへ背中を向けて受けることが多い。受ける位置を左右1mずらすだけでもっともっと前を向けるし、もっと1タッチのパスが増えてくると思うんですよ」とアドバイスを送っていた。

 また金田氏はパスの出し手が相手ゴールと正対する形ではなく、45度の角度でボールを持つことを勧める。それはゴールと正対してしまうと相手にパスを読まれやすくなってしまうから。またサイドにボールを展開する際にステップを踏み直して体の向きを調整しなければならないからだ。それよりも右利きの選手であれば、ボールを受ける際に右サイドにも左前方にもパスを出せる45度の形をとることをアドバイス。視野の確保についても、「視野の確保なんて正面向かなくても半身のまま首触れば見えるんで、身体の向きを相手に読まれないように突き詰めていかないといけない」と自論を展開し、その精度を上げることを期待した。

 教わったことすべてが上手くいくとは限らない。だがこれまで学んできたことにアレンジを加えることで壁を乗り越える可能性だってある。アドバイスに聞く耳を持って自分なりに実行することが現状からもう一段階上へ行くことにつながるかもしれない。この日、金田氏が「常に狙っているし、スピードあるし、あの子はいいですよ。レベル高い」と評価していた浜名FW鈴木将斗がハーフタイムに元横浜FCの吉武剛氏から教わったボールの受け方を後半早速実行しようとしていた。かつて日本を代表するアタッカーだった金田氏の独特な細かいタッチのドリブルは自身で考えて毎日のトレーニングで磨き上げたもの。金田氏は鈴木の姿勢を讃えていたが、彼だけでなく、ユース期において必要とされる様々な情報、知識を提供する「アンダーアーマーチャレンジカップ2015 SUMMER」に出場した選手たちが学んだことで少しでも意識を変え、身に着けることが将来の可能性を広げることに繋がっていく。

(取材・文 吉田太郎)
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