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新潟内定・慶大MF端山の覚悟と決断、「ヴェルディで育ったことは変わらない」

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 小学生の頃から思い描いていた夢が目の前に迫ってきた。迷った末に、そのチャンスを見送った。より難しい道を歩むと決めた。それこそが自分の成長につながると信じての決断だった。

 慶應義塾大に所属するMF端山豪(4年=東京Vユース)のアルビレックス新潟への来季加入内定および、特別指定選手承認が28日に発表された。ジュニア、ジュニアユース、ユースと長い時を過ごした古巣・東京ヴェルディからのオファーがありながらも、端山は新潟への加入を決めた。

 迷いに迷っての決断。かつて東京Vユースで背番号10を背負ったMFは進路に悩んだ今夏を「泣きそうだった」と振り返る。

 2013年には特別指定選手として、東京Vで7試合に出場している端山。古巣からは「J1を目指してやっていくなかで、絶対に戦力になってくれると思っているし、共有しているヴェルディのサッカーの中で育ったから、やりやすさはあると思う。J1昇格へ向けて、ぜひ一緒にやっていかないか」と打診を受けた。直接連絡を取り合っていた冨樫剛一監督からは「来いよ!」と言われ、優しく温かな言葉もかけられたという。

 また、悩む端山の胸には東京Vのサポーターの姿もあった。大学進学後も古巣を応援するため、味の素スタジアムへ足を運んでいたとき、スタンドで端山に気づいたサポーターが声をかけてくれた。クラブを出ても温かく迎え入れてくれるサポーターの姿は「悩む一つの要素だった」と言う。

 一方、新潟からは「能力が高いのは分かっているから、新潟で色々なところを鍛えながら、チームに貢献してくれたら」と話を受ける。今季のJ1で15位に沈む新潟だが、東京Vとも慶應義塾大とも違うスタイルの持つ新鮮さが魅力だった。

 慣れ親しんだ地へ戻るのか、新天地でスタートを切るのか。小学生の時から東京Vで育ってきた端山にとって、東京Vというクラブでプロになることは夢。ずっとそう信じてきた。

「高校時代から竜士(杉本)や南(秀仁)と一緒にプロでやることを思い描いてやってきたわけだから、いざそのチャンスが目の前に転がってきたとき、それこそ本当に揺れた。ヴェルディにいた頃は、ずっとそれが夢だと思っていたから……」

「ヴェルディのことは本当に好きだし、俺がどこのクラブにいっても、ヴェルディで育ったことには変わりはないから。本当にヴェルディのエンブレムに誇りを持っているから。(進路を)決めるときは泣きそうだった」

 溢れるほどのヴェルディ愛がありながらも、端山は新潟への加入を決める。「より厳しい環境でやろう」。それが決め手となった。

「同じヴェルディのサッカーでやっていくという、そういう理想や気持ちは自分の中にあった」と明かす端山は「ヴェルディが厳しくないわけではない」と前置きしながら、「より厳しい新しい環境でやろうと思った。チャレンジしないといけないし、少しでも高いレベルに早く行かないといけない。チャレンジできるチャンスがあるなら、チャレンジするべき。迷いましたけどね」と話す。

 長年、東京Vの中から見続けてきた世界。大学進学とともに外へ出ると、見えてくる景色が変わった。「ずっとヴェルディのサッカーをやってきて、それが全てだと高校のときには思っていたし、それで上までいけると思っていた」と端山は言う。

 しかし、大学での4年間、選抜での活動なども通して、様々なスタイルのサッカーへ取り組んだ。その中でスタイルや監督が変わるたび、順応するよう求められ、無我夢中でやってきた。そこでの経験は端山の血となり、肉となり、いつしか自信につながった。チャレンジした先には成長がある。そんな経験が新潟行きを決断させた。

 既に8月中旬から新潟で過ごしている端山。今後は関東大学リーグが再開しても、クラブから求められる限りはJリーグを優先にし、“二足のわらじ”を履くことになる。今季の目標を「Jリーグに出場して、少しでもチームの助けになる働きをしたい」と語ったMF。「来季からは中心選手として、がっつり活躍したい」と未来を見据えた。

(取材・文 片岡涼)

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