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[T1リーグ]選手権予選組み合わせ決定直後の一戦、國學院久我山が成立学園下す

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[8.30 T1リーグ第14節 成立学園高 0-2 國學院久我山高 成立学園鷲宮G]

 第94回全国高校選手権の東京都Aブロック、Bブロック予選の各組み合わせが8月29日に決定。翌30日には、ともに東京都Bブロック予選を戦うことになった國學院久我山高成立学園高が高円宮杯U-18サッカーリーグ2015 東京1部第14節で対戦し、國學院久我山が2-0で勝った。

 東京都Bブロック予選は全国総体出場の國學院久我山をはじめ、昨年総体出場の成立学園、12年度選手権出場の実践学園高、13年度選手権8強の修徳高、選手権全国優勝6回の名門・帝京高、昨年度選手権出場の三鷹高、東京朝鮮高、暁星高などが名を連ねる激戦区。暁星対狛江高戦の勝者と初戦を戦う國學院久我山の清水恭孝監督は「チャンピオンを目指しているので、こちらのブロックにいろいろな力のあるチームが入っていますけれども、一つひとつやっていかなければならない。私たちからすると緊張感のあるゲームをやらなければならないということが大前提にある。チャンピオンを取るためというのは(組み合わせは)あまり気にしないで一つひとつ勝つしかない」と語った。

 國學院久我山は8月の全国高校総体初戦で明徳義塾高に1-2で逆転負け。先制しながらも直後に追いつかれて1-1で前半を折り返すと、後半27分に勝ち越されてそのまま敗れた。清水監督は「この子らはテクニックはあると思っているんですけど、エネルギーというか、チームの持っているパワーというのがちょっと弱いかなと思っている」と指摘し、右SB宮原直央主将は視察に訪れていた李済華前監督(現FC琉球ゼネラルマネージャー)から試合後にかけられた言葉を明かす。「李さんに『感動を与えられない』と。メンタル的にも逆転されて追いつく勢いがなかった。李さんには『見ている側からしたら、これは追いつけないかもしれない、負けていても、これは追いつけるという力が全然感じられなかった』と言われました」。夏の久我山は、逆転された後に「追いつける」というエネルギーを感じさせる試合ができなかった。

 メンバーの半数は昨年の全国経験者。技術は東京のどのチームにも負けない自信がある。一方で「技術面よりもメンタル面が課題」と宮原は分析。それでも國學院久我山は「インターハイはやり切れずに敗戦したというのが、そこで意識が変わった」(宮原)という。この日、雨中で互いにコンビネーションや個の突破でチャンスをつくりあった成立学園との試合では、終盤の2得点によって宮原も「ここ勝ち切れたというのとゼロで抑えられたのは大きいと思う」という白星を勝ち取った。

 2年生エースFW澁谷雅也が怪我のために不在だった國學院久我山だが、足下、足下に正確にボールを動かすとバイタルエリアではコンビネーションによる崩しで成立学園の守りを揺さぶる。再三右サイドを駆け上がった宮原のアーリークロスのこぼれをFW小林和樹が狙い、そのほかにもFW多嶋田雅司の右足ミドルやスルーパスのこぼれ球にFW安藤謙生が反応するなど決定機をつくり出した。

 だが、成立学園GK吉澤凌のファインセーブに阻まれるなど1点を奪うことができない。成立学園も中盤でMF河口海斗、MF大野泰成が献身的にボールを拾うと、左のオトゥール・コナーと右の矢田部竜汰の両SBが積極的に攻撃に絡むなど両翼を活用した攻撃。サイドチェンジ、クロス、そして俊足FW長島滉大の抜け出しからビッグチャンスをつくった。だがこちらもGK岡田佑太の好守にあったほか、シュート精度を欠いて得点することができない。前半15分に抜け出した長島の右足シュートはゴール左へ外れ、後半9分にMF鈴木龍之介のスルーパスでFW吉村紳が抜け出し、最後は長島が放った一撃もGK正面を突いてしまう。

 後半半ば以降はともに選手を入れ替えるなかで決定的なシーンも減っていたが、勝負どころで國學院久我山が強さを発揮した。35分、右サイドをMF内桶峻とFW安東尚宏のコンビで崩すと、最後は折り返しをMF名倉巧が右足でゴールへ流し込む。國學院久我山は後半アディショナルタイムにも安東からのパスを受けたMF戸田佳佑が右足シュートを左隅へねじ込んで2-0。いずれも交代出場の選手たちが絡んで決めたゴールによって勝ち切った。

 清水監督が「インターハイまでが今年のチームの前期でここからが後期に入ると思っていますので、チームを成熟期に迎えさせるというのが一個のテーマ」という中でこの日は接戦で勝ちきり、層の厚さを示した。一方で、相手の高いラインの背後を狙うシーンが少なく、1点リードの終盤に中途半端な攻撃でボールを奪われるシーンがあるなど、國學院久我山の特長である状況判断の部分ではまだ課題もある。全国制覇を十分に狙うことのできるタレント、チーム力のあった2年前に比べると「もっと質の高いゲームをしなければいけない」(清水監督)というのが現状。より、成長してまずは全国大会への出場権を勝ち取るチームになることを目指す。宮原は「いい時はいい。でも浮き沈みがある。そこのメンタルをこの公式戦含めて持つことができたら、技術では東京で劣っている訳ではない。最高のパフォーマンスと全員の一体感が出せれば自分は(全国大会出場権を)取れると思います」と言い切った。「(夏から変わったことを示すためにも)そのためにも取らないといけない」という選手権全国への切符獲得へ、課題を改善して、よりエネルギーを持って選手権予選を戦う。

(取材・文 吉田太郎)

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