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[プレミアリーグWEST]攻守の要欠く中で京都橘が首位・C大阪U-18に逆転勝ち

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[9.5 プレミアリーグWEST第13節 京都橘高 2-1 C大阪U-18 西京極]

 9月5日に西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場でプレミアリーグWEST第13節が行われ、最下位の京都橘高(京都)が首位のセレッソ大阪U-18(大阪)に逆転勝ちという番狂わせを起こした。

 試合は攻めるC大阪、守る京都橘という図式で進んでいく。C大阪はDF庄司朋乃也(負傷離脱中)、DF舩木翔(U-18日本代表中国遠征)、MF立石和真(出場停止)を欠く中、ボール支配率で上回ってハーフコートマッチで攻撃を仕掛ける。先制点は14分。右CKを獲得すると、キッカーのMF丸岡悟はショートコーナーを選択。右サイドからのクロスを一度は跳ね返されたが、こぼれ球を拾って左サイドへ展開すると、DF森下怜哉のクロスをゴール前でFW岸本武流がトラップから冷静に流し込んでスコアを動かした。

 その後も敵陣で試合を進めるC大阪だが、自陣で人数をかけて守る相手を崩しきれずになかなか決定的な場面を作り出せない。対する京都橘は耐える時間が続くが、攻め込まれても相手のシュートに対して最後のところで身体を張るなど追加点を許さず、逆にカウンターから敵陣深くを突くシーンを作り出す。前半終了間際にはカウンターからFW輪木豪太がドリブルで持ち込んで放ったミドルシュートがポストの内側を直撃するなど、得点の可能性を感じさせてハーフタイムを迎えている。

 後半も同様の試合展開が続く中、次にネットを揺らしたのは京都橘だった。20分、相手のサイドへ展開しようとしたパスを奪ったMF梅津凌岳がドリブルで敵陣を突き進んで右前方のスペースへパスを送り、走りこんだ輪木がGKとの1対1を制してスコアをイーブンに戻した。この場面、右から左へのダイアゴナル・ランで相手DFを引き付けたFW堤原翼の動きも効果的だった。

 ここから試合はヒートアップする。C大阪は28分に投入されたMF松岡大智が積極的な仕掛けやシュートで攻撃に勢いをもたらせば、京都橘も再び梅津ー輪木の1年生コンビにより迎えた決定機がポストに阻まれるなど、両チームとも勝利を目指す姿勢を打ち出していく。そして試合終了間際、両チームにチャンスが訪れる。

 42分、京都橘はCKのこぼれ球に反応した輪木の顔面に相手選手の高く上げた足が当たって、PA内で間接FKを獲得。これをDF堀尾橘平が右足で蹴りこんで、ついに試合をひっくり返した。追い込まれたC大阪も最後の力を振り絞って攻撃を仕掛け、43分にエリア内で松岡がシュートを放つが、GK谷田貝壮貴の好セーブに阻まれる。アディショナルタイムに松岡が放ったミドルシュートも枠を捉えられず、主審のホイッスルが西京極に鳴り響いた。

 試合後、C大阪の大熊裕司監督は「相手の策に自らはまった」と振り返った。京都橘がカウンターを狙っていることは想定しており、選手にも伝えていたが、1失点目の場面をはじめとしてボールを失う場面が目立ち、そこから奪い返すこともできずに自陣へ戻りながらの守備を強いられた。攻撃面については「単純なミスが多く、ボックスの近くに行くと精度が悪い。そこのクオリティーを上げないといけない。早くボールを動かす中で、(攻撃が)単調になったところからミスが出た」と分析している。主力選手が不在の中、これでリーグ再開後3連敗。首位の座も明け渡して3位へ転落した。次節は首位へと浮上した大分U-18との直接対決が控えており、正念場を迎えている。

 一方、劇的な逆転勝利となった京都橘。この日はエースのFW岩崎悠人(U-18日本代表中国遠征)とキャプテンのDF小川礼太(大学入試)が不在の中、米澤一成監督はいつもの4バックから5バックへ布陣を変えて守備的な戦いを選択している。イメージしたのは、昨年のブラジルW杯でオランダ代表がスペイン代表戦で見せた戦い方だ。「うちにはロッベンもファン・ペルシーもいいひんけど(笑)」とおどけて見せたが、1トップに入った堤原、2列目の梅津と輪木は推進力を発揮して攻撃を牽引。中でも1年生の梅津と輪木は夏の遠征を経て成長の跡が見られており、全得点に絡んだ輪木は「夏の遠征できっかけがつかめた。(同点ゴールは)走り抜けたら、いいボールがきた。シュートは無我夢中だったけれど、これまでは『はよ打たな』と慌てるところが、今日は落ち着いて打てた」と手応えを口にしている。守備で耐える展開を強いられる中、彼らの存在は重要だった。

 また、守備も5バックにすることで最終ラインの強度を上げて、流れの中からは失点を許さなかった。CBの中央に抜擢されたDF田中悠太郎も失点シーンではマークしていた岸本に振り切られたが、その後は「あそこに高さが欲しかった」(米澤監督)という指揮官の思いに答えるべくクロス対応などで力を発揮。本人も「岸本君は強さとスピードがあって1対1で止めるのは難しかったけれど、(堀尾)橘平と(濱本)和希と連携をとって対応できた」(田中悠)と話している。

 攻守の要を欠いた中での逆転勝利に沸き立つチームだが、気を緩めている暇はない。これまでも勢いがつきそうな試合を演じながら、次の試合でつまづくというケースが何度かあった。次節は優勝争いを繰り広げているG大阪ユース。中断明けから2勝1敗という結果を確かな自信とするためにも、重要な一戦となる。

(取材・文 雨堤俊祐)
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