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「研究される側」になり、契機迎える東京V…44歳・MF永井が語る鍵

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[9.20 J2第32節 東京V0-1長崎 味フィ西]

 緑の旋風は止んだのか。7月から8月にかけては5連勝をみせ、一気にJ1昇格プレーオフ圏内へ浮上してきた東京ヴェルディだが、直近4試合は1勝3敗。前節・群馬戦こそ3-1で勝利したものの、4戦連続失点中で得点も群馬戦の3点のみという状況だ。この日の長崎戦ではセットプレーからの1失点に泣き、0-1の敗戦。順位も4位から5位へ後退した。

 攻め込みながらも1点が遠く。不用意なプレーで与えたFKからニアサイドへ飛び込まれるとヘディングシュートを許し、先制点を奪われた。その後の東京Vは判定への苛立ちを募らせると、ゴール前での精度も欠いての零封負け。終了間際には立て続けにセットプレーを得たうえに、PK獲得と思われたシーンもあったが得点にはつながらなかった。

 昨季のJ2を20位で終えた東京V。今季は9位以内を目標にリーグ戦へ臨んでいた。しかし、若手の覚醒や中堅・ベテラン選手の奮闘で夏場には5連勝でJ1プレーオフ圏内へ浮上。長年遠ざかっていたJ1がうっすらと近づいてきたかに思われたが、ここ4試合では1勝3敗と物足りない試合が続いている。

 その原因について、主将を務めるDF井林章は「今まではどちらかというとチャレンジャーとして立ち向かっていくメンタリティだったけれど、自分たちがこの順位になった今は、研究されているのが多い」と言う。

 追う立場から追われる立場になったことで、『引いた相手をいかに崩すか』という大きな壁に直面している。井林は「ポジティブに考えるべき時期。伸びしろは間違いなくある。若さというのは予想以上の力が出てくるし。そこへ連れ出すためには、自分たち中堅やベテランの経験値が一番活きる」と前を向き、「そういう中で強いチームは勝っていく。自分たちで乗り越えていかないといけない時期。それができないと自分たちはこれ以上、上へは上がれないということ」とキッパリ話した。

 これにはベテランMF永井秀樹も同調。「若い選手が成長していくなかでヴェルディが研究される側になっているというのは、確実な成長だと思うし、本当にここからが勝負。研究されて引いた相手をどう崩していくか。それぞれのアイディアを持っていかないといけない」と話すとおりだ。

 引いた相手をいかに崩すか。永井は「一番大事なことは相手を見てサッカーをすること」と言う。「相手がいないところを攻めないといけないし、相手が嫌がることをどれだけできるか。それが出来る選手が今のチームには揃っていると思うので、成長しながら(それを)やっていけるのが理想」。

 この日の東京Vは審判を含めた“相手”をみて、プレーをしてはいなかった。自分たちの志向するサッカーにこだわり、バイタルエリアでパスを選択するシーンも多かった。得点を取ることよりも、得点を取る過程を意識していた節があった。

 また、武器としている厳しいチャージが都度、レフェリーに吹かれるならば、やり方を変えることも選択肢の一つだった。実際に井林も「審判のレフェリングが自分たちのストレスになりやすかったのは正直あった。もう少しコントロールできれば。もうちょっと冷静な試合運びができたが、イライラが積もり積もって、結局は何気ないプレーが失点につながった。そういうのは大人にならないと」と振り返る。

 酸いも甘いも知る44歳のMFは「若い選手も多いし、そこは元気が良くていいかなと思うんですけど」と前置きしながらも「かっかしながらも、頭は冷静にしたたかに勝つというのがやっていければ」と淡々と話した。

「引いた相手をいかに崩すかは今後の課題。J2はそういう相手が多いし、簡単ではないけれど、どれだけ引かれても崩せるところは必ずある。いかに相手を崩すか、そこを見つけられれば。やっていくことは上につながっていく」

 上位戦線へ踏みとどまるためにも正念場を迎えている東京V。次節はホームへ首位・大宮アルディージャを迎える。相手は今季初の2連敗中でエースMF家長昭博とMFカルリーニョスを出場停止で欠く状況だ。井林は「大宮は最近のリーグ戦で取りこぼしが増えている。自分たちはそういう相手に対しては絶対に勝ち点3を取らないといけない」と自分自身に言い聞かせるように話した。

 この苦しみを抜けることができれば……チームはまた一段階、二段階も上へ行き着くことができるはずだ。そのためにはチーム全員がこの課題を理解し、同じ方向を向く必要がある。吹き止んだ風をもう一度、巻き起こせるか。

(取材・文 片岡涼)

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