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[プリンスリーグ九州]我慢強く戦い抜いた大津がプレミア参入戦進出を決定!

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[9.19 高円宮杯プリンスリーグ九州第15節 九州国際大付高 0-1 大津高 福岡県営春日公園球技場]

 大津高(熊本)は高円宮杯U-18サッカーリーグ2015 プリンスリーグ九州において、ひとつの負けもないまま首位を独走中。2位の九州国際大付高(福岡)と8ポイント、3位の鹿児島城西高とは9ポイントという勝ち点差を付け、今節は九国大付高との首位攻防戦を迎えた。
 
 戦前の予想取り、ボールを保持する大津に堅守速攻のスタイルで九国大付が挑む展開となったが、序盤の決定機数で相手を上回ったのは後者。「今日のグラウンドの芝は固いというのがあって、みんなボールタッチとかトラップで難しい部分があった」(FW原岡翼、3年)というように、大津はボールの弾み方が独特な春日公園球技場の人工芝に戸惑い、ロングボールの対応に苦慮。前半4分には左CKからピンチを迎え、MF今田源紀(2年)にヘディングシュートを放たれてしまう。あわやという場面だったが、ゴールライン上でMF河原創(3年)がクリアし、事なきを得た。

 立ち上がりの15分間は自らのペースに持ち込めなかったが、九国大付に押し込まれることも想定の範囲内。「『してやったり』というよりも相手がじっくりゲームをコントロールしていただけだと思う」と杉山公一監督が認めたように、ゲームの主導権は大津の手の中にあった。「試合が始まる前のミーティングでスタッフから『最初の何本かはやられるかもしれないけど、あとから修正していけばいいから』と言われていたので、ある程度は想定の範囲内でした」とU-18日本代表の主将DF野田裕喜(3年)が話すように、時間が経過すると相手の攻撃パターンにアジャスト。DF眞鍋旭輝(3年)を中心にボールをバウンドさせる前に空中戦で対応すると、ゴール前に迫られる回数は激減した。
 
 落ち着いてボールを回す時間が増えていった大津だったが、攻撃のテンポは今ひとつ。強固な守備ブロックを敷いてきた九国大付を前にスペースを与えてもらえず、U-18日本代表FW一美和成(3年)に良い形でボールを入らない。後半に入っても、ギアの上がらないチームは10分過ぎにシステムを変更。「一美のところにボールが集まってくるので、相手もそこに来る。であれば、そこに無理して原岡まで行かせなくていいので、サイドから彼が得意とするカットインでシュートを打ってCKとかを取れればいいなと思っていた」と平岡和徳監督が説明したに、2トップに配置されていた原岡を左サイドハーフにし、一美を1トップに置く4-1-4-1へ変更して攻撃の活性化を狙った。すると、この采配がずばり的中。一美が相手のマークを引き連れることで、2列目に配置された4人が変幻自在に前線へと顔を出すようになった。システム変更直後の10分にはMF吉武莉央(3年)がゴール前に抜け出し、左足を振り抜く。惜しくもバーを直撃したが、こぼれ球を拾った原岡が右足でシュート。これはDFにブロックをされてしまったが、得点の匂いが徐々に漂い始めた。
 
 残り20分を切っても得点が奪えない大津は「残り15分くらいになったら、杉山を右サイドハーフに上げると決めていた」(平岡監督)と左利きの技巧派左SB杉山直宏(2年)を右サイドハーフに配置。さらなる攻勢を仕掛け、勝利への執念を燃やした。迎えた30分、その杉山が右サイドを切り崩すと、左足でゴール前にセンタリング。「自分がおとりとしてニアに入って得点できたのは良かった」という一美がニアに相手DFを引き連れたことで生まれた中央のスペースに原岡が飛び込む。ヘディングで放たれた一撃はネットに突き刺さり、待望の先制点を奪取。終盤に入っても集中を切らさなかった大津は九国大付の猛攻を凌ぎ、手堅く1-0で勝利を収めた。この結果、大津は2位以内とプレミアリーグ参入戦進出を確定(勝ち点11差の九国大付と勝ち点12差の3位・鹿児島城西が最終節に対戦。2チームがともに大津の成績を上回ることはできないため)。9月26日に行われる未消化分の第14節・鹿児島城西高戦で大津が勝利を収めれば、3試合を残して優勝も決まる。九国大付が9月24日に行われる未消化分の第14節・神村学園高(鹿児島)戦で引き分け以下ならば、大津は鹿児島城西戦で引き分けても優勝が決まる状況だ。
 
 8月の全国高校総体では優勝候補のひとつに挙げられていた大津だが、3回戦の関東一高戦でまさかの逆転負けを喫した。「うちが前半に先制したのですが、後半に入ってうちは動けなくなってしまった。そして、向こうはどんどん捨て身で前から来ましたし、野田もそれで足をやられてしまってバランスを崩してしまった」と平岡監督も夏の悪夢を振り返る。しかし、U-18日本代表に招集されていた一美や負傷離脱していた野田を欠いていた夏の遠征が、チームに逞しさをもたらした。「野田や一美がいない時でも、フェスティバルでタイトルを取ることができたのでチームの団結力は増したと思います。普段、野田とか一美がいますけど、『いなくても、できるようになれ』とスタッフに言われていたので、それが夏にやっと解決できた」(眞鍋)と攻守の要である2人に頼らないサッカーができるようになったことは、チームにとって大きな財産である。

 10月3日に開幕する全国高校サッカー選手権熊本県予選では、守備を固められる試合が続くことは間違いない。「熊本県の予選はこの試合みたいに守られることが多くなる」と平岡監督も想定をしており、九国大付戦の前には「守りからのカウンターは九州ナンバー1のチームだから、良い意味でのシュミレーションになる」という言葉を掛けて、選手をピッチに送り出した。「去年の選手権予選も(準決勝で)このような戦い方をしてくるチームにやられてしまった。そのような意味で今日のゲームをチームの財産にしたいですね」と野田が話すように、この試合が選手権予選への試金石になったことは間違いないだろう。プリンスリーグ九州で培った財産を武器に、冬の戦いに大津が挑む。

[写真]後半28分、大津は原岡が決勝ゴール

(取材・文 松尾祐希)
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