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[選手権予選]終了間際の連続ゴールで大逆転!麻布大附が第2シード・武相撃破!:神奈川

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[9.20 全国高校選手権神奈川県2次予選2回戦 麻布大附高 2-1 武相高 桐蔭学園高G]

 第94回全国高校サッカー選手権神奈川県2次予選2回戦が20日に行われ、総体予選4強の第2シード・武相高と13年、14年の全国高校総体出場校の麻布大附高との一戦は後半38分から逆転した麻布大附が2-1で勝った。麻布大附は10月18日の3回戦で湘南工科大附高と対戦する。

 麻布大附は前半30分に武相の10番・FW松尾幸晟の突破を止められずにPKを献上し、FW伊藤峻平に右足で決められた。最終ラインからビルドアップする麻布大附を前線からのプレスで追い込んだ武相はセカンドボールを拾って速攻に持ち込むと、先制後も松尾の突破やFW戸崎大地の右足ミドルなどで追加点を狙っていく。

 麻布大附は前半、最終ラインから攻撃的なパスを繋ぐことができず。ハーフタイムにはコーチングスタッフ陣から「このままで終わっていいのか、自分たちのやってきたサッカーから逃げている」と厳しく指摘されたという。迎えた後半は3バックから思い切り良く前にボールをつけて、そこからサイドへ展開。キープ力高い10番MF大木健汰や、巧みにハイサイドを取るFW峠優輝らが連動した動きでサイドを打開し、MF澤内僚の左足クロスがいい形でゴール前に入るなど、ゴールを予感させるようなシーンを増やしていく。

 23分には澤内とのコンビから峠が左足クロス。これを交代出場のFW小峰郁大が頭で合わせるが、至近距離からのシュートは武相GK長谷川倭馬がビッグセーブではじき出す。また、32分には右クロスを抜群の走力を発揮していたMF岡田悠人が右足で合わせたが、これも長谷川に阻まれてしまう。武相はCB昼間雄介のスライディングタックルや左SB森山壱政のヘッドなどで何とかゴールを死守。それでもアグレッシブな選手交代で28分に3人目のMF安藤礼、さらに30分を過ぎるとMF田中稜磨を投入した麻布大附は武器である走力と、交代選手たちの推進力も活かして武相を押し込んだ。

 超攻撃的な交代策による活性化と、徹底したサイドからの崩し。そして後半38分、麻布大附の執念が実る。左サイドから岡田がクロスを入れると、パワープレーで前線へ上がっていたCB井藤駿太郎が渾身のヘッドで折り返す。これに反応したのは2枚目の交代カードとして後半16分から出場していた2年生MF岩田陸。「(井藤)駿太郎くんは必ず折り返すと信じていた」とポジションを取りなおしたMFがハーフボレーで合わせた右足シュートがゴール左隅を捉えて同点ゴールとなった。土壇場で決めた鮮やかな一撃。「1回戦の光明(相模原)戦でいいプレーができなかったので武相戦で巻き返すしかないと思っていた」という岩田を筆頭に大興奮の選手たちが次々とピッチサイドの先輩・仲間たちの中へ飛び込んだ。

 一息つくことなく攻め続けた麻布大附はアディショナルタイム突入後の43分、右サイド後方から大木が左足で絶妙なアーリークロスを入れる。そしてファーサイドでDFと1対1となった峠が切り返しから右足シュートを放つと、決勝ゴールがゴール右隅へ吸い込まれた。「応援も含めてチームなんでみんなで喜びたかった」という峠は右手を突き上げながら応援席へ向かってダッシュ。わずか数分前に岩田たちが仲間たちの下へ駆け寄ったシーンを再現するかのように、青いユニフォームが次々とピッチサイドのチームメートたちの輪の中へ飛び込む。そして試合再開直後に終了の笛。呆然と立ち尽くす武相イレブンの隣で大逆転劇をしてのけた麻布大附の選手たちはピッチに突っ伏し、涙を流す選手もいたほど勝利を喜んでいた。

 麻布大附は13年、14年に2年連続全国総体出場。特に昨年のチームはMF塚越亮(現日本体育大)やMF中山克広(現専修大)ら下級生時からの主力が多く、テクニカルな選手たちが華麗なサッカーを展開し、神奈川2冠を達成した。だが、今年は顔ぶれが大きく入れ替わり、苦戦の連続。総体予選は2次予選1回戦で敗退した。安彦篤監督は昨年との差について「一番簡単に言ってしまえば経験です。去年のスタートの段階は2年の時にインターハイ出てますから、目標が全国でどう勝つか。でも(その姿を見ているから今年の選手たちも)その気になるじゃないですか。それですね、一番のギャップは。でも経験もないし、技術もない。ちゃんと自分たちを知ろうということからスタートしました」。なかなか結果は出なかったが、それでも「夏の合宿経て変わった彼らがいたので。変わったところで勝ったのは大きい」と指揮官は2試合連続の逆転勝利を讃えていた。

 昨年の麻布大附とは違う。だが、「(麻布大附らしく)攻める姿勢を忘れなかったのが大きかった」と語るDF後藤祐哉主将は「今年は縦に速いというか、そういう部分で両サイドを活かしながら中を使えるか。去年も大前提だった『ボールを無くさない』というのが今年もある。最後、無くさなかったから手が届いたのかなと思います」と昨年の良さと今年の良さを合わせて掴んだ白星を喜んだ。そして峠は「去年と同じようにではなくて、今年には今年の色があるので。去年のサッカーを見習いつつ、自分たちの色が出せればいい。相当みんなで考えて、コミュニケーション取って、だんだん良くなってきた。去年の形をやるのではなくて、今年の形で去年を上回る。試合に勝ちながら成長していきたい」と誓った。

 昨年は第1シードとして2次予選3回戦から登場したが、準決勝でPK戦敗退。この日の劇的勝利にも後藤は「まだ(この時期は去年の)先輩たち試合していないですから。次、初戦です。これからも楽な試合は1試合もないと思う。全試合こういう試合になると思う。チーム全体のコンセプトというのは日本一。そのためにはまず神奈川を取らないといけない」と力を込めた。先輩たちの成績を越えて神奈川、全国制覇するための戦いはまだスタートしたばかり。「一戦一戦先を考えずにやっていきたい」という麻布大附がまずは次戦、昨年準々決勝で戦っている湘南工科大附を再び乗り越える。

[写真]後半アディショナルタイム、決勝ゴールを喜ぶ麻布大附イレブン

(取材・文 吉田太郎)
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