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巻き返しはこれからだ…新潟から武者修行中、高み目指す町田DF増田繁人

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[9.23 J3第30節 町田 1-0 J-22 町田]

 充実感漂う表情を見せた。FC町田ゼルビアDF増田繁人にとって、日の丸を背負う同年代の選手たちが顔をそろえたJリーグU-22選抜に勝利したことはもちろんだが、“ピッチ上で戦える”という事実を幸せと感じているようだった――。

 対戦相手はJ-22ながらも、その多くがU-22日本代表の常連メンバー。92年6月11日生まれの23歳にとって、同年代との、そして日本を代表する選手との対戦で燃えないわけがない。「相手は五輪代表メンバーと言っても過言はないですし、上のカテゴリーでプレーしているメンバーです。絶対に負けたくなかった」と闘志を燃やしていた。

 CBを務める増田は189センチの長身を生かして、J-22の攻撃をはね返し続ける。「たとえサイドを突破されても、中で弾き出せればいいと割り切っている部分もありました」。160センチ台、170センチ台の選手が並ぶJ-22の攻撃陣に制空権は決して渡さない。それは、試合終盤に186センチのDF植田直通がパワープレー要員として、前線に上がってきても同じだ。

「植田くんはヘディングを売りにしている選手だと思うし、僕もそこは売りにしているのでマッチアップを楽しみにしていました。セットプレーでしかマッチアップはないと思っていたのですが、彼が前線に上がって来てくれたのでニヤニヤしてしまいました」。U-22日本代表の常連である植田とのマッチアップを楽しむだけでなく、互角以上の勝負を演じてチームの完封勝利に大きく貢献した。

 流経大柏高時代、3年時にはキャプテンを務めて選手権ではベスト4まで進出したが、準決勝では負傷のためピッチに立つことなく涙をのんだ。高校卒業後にはアルビレックス新潟に加入。しかし、ここまでのプロサッカー人生は決して順風満帆ではなかった。

 プロ初年度は「ちょっとずつプロの生活に慣れてきて、デビューも飾れました」と語ったように11年10月1日に行われた第28節横浜FM戦でリーグ戦デビューを飾った。しかし、2年目はリーグ戦での出場はゼロ。試合に出場できないことが、焦りへとつながっていく。「2年目で本当につまづいてしまって…。とにかく試合に出たいという気持ちが強過ぎて、レンタルでクラブを渡り歩くことになりました」。13年はJ2群馬、14年はJ2大分に新潟からの期限付き移籍で在籍するが、出場機会はわずかに限られた(13年11試合、14年1試合出場)。

「今、振り返ってみても本当に辛かったですね。特に大分ではまったく試合に絡めなくて、この先どうなってしまうのかとすごく自信を失ったシーズンでした」。辛い時間を過ごしたかもしれないが、「人間的に成長した」と語る増田は、今季も新潟からのレンタルでJ3町田に戦いの場を移した。J1からJ2、そしてJ2からJ3へとカテゴリーは下がっていくが、「今年、結果を残せなければ本当に自分は終わると思ってシーズンに臨みました」と断固たる決意を持ち、15年シーズンを迎えていた。

 そして迎えた今シーズン――。開幕戦はベンチを温めたものの、徐々に出場機会を増やし、第7節J-22戦からは出場停止を除いて全試合先発出場を続けている。「ようやくチャンスをつかみ、コンスタントに試合に出られるようになりました」と笑った男は、今節のJ-22戦での勝利で「日本を代表する選手たちに勝てたのはチームとしても、個人としても、やれるという自信がついた」と胸を張って答えた。

 少しつまづきながら、プロサッカー人生を歩んできたのかもしれない。しかし現在、ピッチに立つ喜びを味わっている23歳は「結果を残し続けてJ1まで戻りたい。今後どう巻き返せるか、自分の中で燃えています」と再びJ1のピッチに立つことを目標にこれからも走り続ける。

(取材・文 折戸岳彦)
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