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[国体少年男子]雨中のファイナルは互いの堅守崩れず0-0ドロー、神奈川県、福岡県が両県V!!

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[10.1 国体少年男子決勝 神奈川県 0-0 福岡県 上富田スポーツセンター球技場]

 U-16年代の都道府県選抜日本一を争う第70回国民体育大会「2015紀の国わかやま国体」少年男子サッカー競技は1日、決勝を行い、2連覇を狙う神奈川県と初優勝を目指す福岡県が対戦した。前後半計70分間を0-0で終えた熱戦は、延長戦でも決着がつかずスコアレスドロー。この結果、大会規定により両県優勝となった。神奈川県の優勝は2年連続6回目で、福岡県は2度目の決勝挑戦で初優勝。両県優勝は11年大会決勝で千葉県と静岡県が0-0で引き分けて以来、4年ぶりとなった。

 ともに単独優勝したかった思いはある。だが、福岡県の木下直洋監督(八幡高)が「相手が1枚、2枚上手だったですけど、よく頑張りましたね。全国制覇を掲げてやってきたので、そういう気持ちが通じてできたかなと思っています」と語れば、神奈川の重田征紀監督(横浜FCユース)も「相手もなかなか崩れなかった。選手たちは(同点優勝という結果に)結構納得していないというところが強くて。でも最後までやり切れたのは大きいかなと思いますし、胸を張って帰れればいい」と語ったように、両指揮官は時折激しい雨が叩きつける中で90分間戦い抜いた自チームの選手、そして相手チームを讃えていた。

 4-5-1システムを軸に戦う両チーム。決勝戦の神奈川の先発はGK早川友基(桐蔭学園高2年)、4バックは右SB石原広教(湘南ユース、2年)、CB工藤泰平主将(日大藤沢高2年)、CB西山大雅(1年=横浜FMユース)、左SB澤田章吾(1年=横浜FMユース)の構成。中盤は山田康太(横浜FMユース、1年)と藤本寛也(東京Vユース、1年)のダブルボランチで右MF堀研太(横浜FMユース、1年)、左MF伊藤優世(横浜FMユース、1年)、トップ下が村田聖樹(川崎F U-18、1年)、1トップを和田響稀(湘南ユース、1年)が務めた。一方の福岡はGKが緒方翔平(東福岡高1年)で4バックは右SB中村駿(東福岡高1年)、CB西洸瑠(福岡U-18、1年)、溝口峻(筑陽学園高1年)、左SB国生竜成(筑陽学園高1年)。中盤は南里慧斗(筑陽学園高2年)と福田湧矢(東福岡高1年)のダブルボランチでトップ下が青木真生都(東福岡高1年)、右MF平田怜(福岡U-18、1年)、左MF河野真吾(東海大五高2年)、そして最前線には主将の佐藤凌我(東福岡高2年)が入った。

 強い雨の影響によってボールコントロールに苦しむ中、互いの守備面が光る試合となった。ある程度ボールを支配されることを想定して試合に入った福岡だったが、特に味方との連係から狙いすましたチェイシングで度々相手ボールを引っ掛ける福田と、球際で強さを発揮する南里が奮闘。また危険なボールを溝口のインターセプトや中村のカバーリングで切り抜けるなど得点を与えない。一方の神奈川も指揮官が「この大会通じて大きく言えることはどの試合を見ても押し込まれることはあったんですけど、崩れることがなかった。そこはGKも含めてDFラインが集中力を切らさなかった」と評したように、今大会鉄壁の守りを見せてきた工藤と西山がこの試合でも簡単にチャンスをつくらせない。連動した動きで相手を狭いスペースへ追い込んでボールを奪い、相手の速攻に対してもスピードに乗る前にインターセプトしたりするなど、序盤からその堅守が攻略困難であることを感じさせた。

 その中で神奈川は村田のキープ力やサイドでボールを収める伊藤、局面で見せるスピード、パワーでサイドに穴を開ける堀を軸に攻撃していく。14分に村田が右足ミドル、16分にも藤本が左足ミドルを放った。一方、「相手の方が切り替え速くて、そこですぐに奪われるところがあった」(木下監督)という福岡だが、前半20分過ぎから2度のビッグチャンスをつくる。21分、平田との連係で抜けだした佐藤がそのスピードを活かして右サイドを独走。飛び出してきたGKをかわした佐藤は角度のない位置から右足を振りぬく。だが、これは力なく神奈川・石原がゴール前でカバー。福岡は29分にも福田の強烈な右足ミドルがゴールを捉え、GK早川がセーブしたボールを右サイドで平田が拾う。そして上げられたクロスをファーサイドの佐藤が頭で合わせたが、この一撃はクロスバーに阻まれてしまった。

 神奈川も後半開始直後に決定機。右サイドを石原が打開し、エンドライン際から出したラストパスを伊藤が合わせるがボールは枠上へ外れた。繋ぐことに固執せず、斜めのボールを交えて相手の背後を取る神奈川は17分にも和田が右中間を抜け出しかけるが、PAで溝口にカットされてシュートを撃ち切ることができない。神奈川は23分、伊藤に代えて大阪府戦で決勝点を決めているMF堀越太門(湘南工科大附高2年)を投入。後半終了間際には和田をMF岩崎駿(湘南工科大附高1年)へスイッチして勝ち越し点を狙う。一方、神奈川の切り替え速い守りの前にパスコースを塞がれていた福岡も福田を起点に攻め返してクロスやシュートへ持ち込み、32分には右サイド後方からのボールを絶妙なタッチでコントロールした佐藤がDFラインを突破するが、シュートに繋げることはできなかった。

 試合は0-0のまま延長戦へ突入。福岡はその前半10分にビッグチャンス。平田の右クロスのクリアボールに福田が走りこんだが左足ダイレクトで放ったシュートは枠上へ。対する神奈川は延長後半3分に堀の左CKをDF、GKに競り勝った岩崎が頭で合わせる。GK不在のゴールへボールが飛んだが、これは福岡MF福田が頭でクリア。惜しくも先制機を逃したものの、押し込んで攻め続ける神奈川は延長終了直前に再び単独優勝のチャンスを迎える。アディショナルタイム突入後の11分、石原の右FKのこぼれ球をPAの澤田がコントロール。そしてすぐさま左足を振りぬく。だが、勝負が決まったかと思われたこの一撃を福岡GK緒方が右手でストップ。そして次の瞬間、試合終了を告げる笛が鳴り響いた。

 両チームの選手は分け合った優勝を喜んでいたが、より単独優勝への思いを強くにじませていたのは神奈川の方。「優勝できたのは嬉しい。でもやっぱり同時優勝じゃなくて、自分たちだけが優勝チームになりたかった」(西山)、「正直、単独優勝が良かったなという思いが大きいですけれども、2連覇達成できて良かったと思います」(山田)という声などがあった。一方の福岡にとっては歴史を塗り替える初V。それだけに中村が「正直、最初は優勝なんて具体的に考えていなかったですけど、同時優勝という形で優勝できて驚いているのもあるし、嬉しい」と語り、西も「(九州予選からの)1か月、改善点とか克服しながら頑張ってきて優勝できて嬉しい」。全国制覇を成し遂げた喜びを素直に口にしていた。

 国体サッカー競技は全日程を終了。選手たちはこれから、各所属チームで再スタートを切る。神奈川の重田監督は「昨日も(すでに所属チームの)週末の試合のことなんか気にしていた。(今後は)自分のチームで活躍することがベースになると思うので、切り替えて頑張らないといけない」とエールを送り、福岡・木下監督は「ここがゴールじゃないので、でも上には上がいるぞということが分かったと思うので、まだまだレベルアップを目指してやってほしい。まだ高校1年、2年。この5日間だけでも十分に伸びしろがあった。レベルアップ目指して頑張って欲しいと思います」とメッセージ。全国大会で優勝という大きな経験をした神奈川、福岡のU-16世代の選手たちが、このタイトルを今後の飛躍に繋げる。

(取材・文 吉田太郎)
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