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[選手権予選]埼玉2回戦のビッグマッチ、浦和東が延長戦で武南撃破!!:埼玉

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[10.12 全国高校選手権埼玉県予選決勝T2回戦 浦和東高 2-1(延長)武南高 埼玉スタジアム第4G]

 第94回全国高校サッカー選手権埼玉県予選は12日、決勝トーナメント2回戦を行い、4年ぶり6回目の全国大会出場を狙う浦和東高と9年ぶり15回目の全国大会出場を目指す武南高との注目対決は、延長戦を含む100分間の熱戦の末、浦和東が2-1で勝利。花咲徳栄高と戦う3回戦へ進出した。

 今年の新人戦準優勝、総体予選4強の浦和東と関東大会予選4強で、現在県1部リーグ首位の武南。浦和東MF望月海渡(3年)、武南MF紺野和也(3年)という注目レフティーも擁する両校は、ともに頂点を狙う戦力を有する伝統校だ。今季、武南に3戦3敗だった浦和東の望月は「抽選会の時も『武南とかは嫌だな』とみんなで言っていたんですけど、まさかになっちゃって」と苦笑したが、勝ち抜くためにはいつかは乗り越えなければならない相手。鈴木豊監督が「この1試合に懸けていた。本来ならば、選手権では準決勝、決勝へ向けてという調整をするんですけど、この2回戦に懸けて来た」というほど、浦和東は集中して“天敵”との一戦を迎えた。「打倒武南」の横断幕に一人ひとりが意気込みや自分がすべきプレーを書き込み、練習でキツイ時にはその文字を見て気持ちを引き上げるなど打倒・武南へ集中。今夏、フェスティバルで優勝するなど結果を残した浦和東だが、8月下旬から県1部リーグでは7試合未勝利が続くほど低調だった。それでも、この試合に懸けてきた浦和東が大一番を制した。

 武南は試合開始直後にいきなりのアクシデント。DF阿部匠(3年)が開始3分もしない段階で負傷し、治療のかいもなく、交代を余儀なくされてしまう。DFラインの緊急交代を強いられた武南を、「守備に関してはいつピークが来てもいい。(選手権予選へ向けて)守備の約束事とプレスのかけ方、組織で守るということに重点をかけてやってきた」という浦和東が好守からの多彩な攻撃でプッシュ。8分には自陣での組み立てから望月が左足で素晴らしい縦パスを通すと、これで抜けだしたMF米田大介(2年)が決定機を迎える。武南は飛び出したGK近藤耕太(3年)の好セーブで危機を逃れたものの、望月のロングキックやキープ力の高いFW境田悠史(3年)を活かした縦への速さに加えてポゼッションから横の揺さぶりなど緩急をつけた攻撃を見せる浦和東に主導権を握られてしまう。武南の大山照人監督は「急に(選手が)代わるとそっちに集中してしまって本来のことができなくなる。最初の5分で子どもたちにとってあらぬ展開になっているから仕方ないかもしれないけれど、ああいう展開で冷静にゲームをコントロールできる選手がひとりでもいてくれたら、少しでも違ったと思う」とこの前半にピッチの中で試合を落ち着かせることができなかったことを残念がった。

 それでも武南は16分に紺野のスルーパスに反応したMF玉上雅大(2年)が切り返しから左足シュート。20分にはカウンターからFW渡邉宏輝(3年)がチャンスを迎え、30分にも紺野の左クロスが渡邉に通り、シュートへ持ち込む。だがCB高橋隼人主将(3年)がカバーリングよくボールをかき出し、GK遠藤季久(3年)が好守を見せる浦和東は逆に31分、コンビネーションから縦へ仕掛けたFW境田悠史が敵陣PA手前でFKを獲得。「昨日の夜とか(無料コミュニケーションアプリの)LINEとかでみんなとコミュニケーションとって、『頑張れ』とか言ってもらった。(控えの選手も)みんなこの場所を目指している。出れない人の分まで頑張ろうと」と気合十分でこの試合に望んでいた望月が右中間の位置から放った左足FKが鮮やかにゴール右隅のネットを揺らし、浦和東がリードを奪った。

「前半、ベストに近い内容だった」と鈴木監督が振り返る浦和東は後半も望月の左足ミドルやクロスで追加点を狙う。だが、武南は15分に同点に追いつく。ゴール前の混戦から渡邉の放った右足シュートが相手DFのハンドを誘発。PKが与えられ、これを紺野が左足でゴール右へ沈めた。武南は中盤のラインを越えると、紺野、玉上の両翼のドリブルなどサイド攻撃からFW瀬川クーシャ(3年)、渡邉のパワフルな2トップへボールを放り込む。特に後半終盤は運動量の落ちた浦和東を武南が攻め立てる展開。だが、36分に敵陣でインターセプトしたMF大澤空(3年)のクロスに2トップが飛び込むが、高橋、CB岡田慎(3年)を中心とした浦和東のしぶとい守りに阻まれるなど勝ち越すことができない。

 浦和東は高橋が「(追いつかれた後に)自分たちの足が止まった。奪ったボールも繋げなくて2次、3次と相手に攻められて本当にきつかった」という後半を乗り越えると、延長戦では交代出場の選手たちがチャンスに絡む。対する武南も延長前半8分に絶妙なターンでDFを振り切った瀬川が左サイドを独走。だが、クロスは通らず、10分に大澤の左クロスを中央の渡邉が上手くコントロールしたシーンも決め切ることができない。武南は延長後半開始直後にも速攻から紺野が抜けだしたがシュートはゴール左へ外れてしまう。その直後、浦和東の赤いユニフォームが歓喜に舞った。2分、境田を起点としたコンビネーションで前線までボールを運ぶと、PAでFW篠崎翔吾(2年)が粘り、右サイドでフォローしたSB熊谷涼(3年)にボールが渡る。「1ステップでも奥まで蹴れるキックの力を持っている」(鈴木監督)という熊谷がエンドライン手前から鋭いスピンをかけて上げたクロスがクロスバーを叩いてファーサイドへ到達。これを延長後半開始から投入されていたFW大野栞太(3年)が左足ダイレクトでゴールへ押し込んだ。

「(シュートシーンは)ほとんど覚えていないです。決まった瞬間は応援してくれたみんなの方に行って喜びを分かちあえたので嬉しかったです」という背番号21中心に大興奮の浦和東応援席。浦和東は直後にもFW西本陸(3年)の左足ミドルが左ポストを直撃する。だが、このまま終われない武南も必死の反撃。PAまで押し込んでクロスなどから同点ゴールを狙うが、赤い壁に跳ね返されて試合終了を迎えた。

 天を仰ぎ、ピッチに崩れ落ちる武南イレブン。勝った浦和東の高橋主将は「ピッチで戦っている11人、ベンチにいる仲間、応援してくれる仲間、応援してくれる親、コーチ、先生、全員の力がひとつになってこういう結果になったので、自分たちが頑張ったから勝てたわけでなく、みんなの応援があったからこそのこの結果だと思います」と周囲の支えに感謝した。大きな壁を乗り越えたが、まだベスト16。鈴木監督は「まだ16なんで、先のことも考えていない。(3回戦までの)2週間どうもっていくか。油断すると絶対にやられてしまう。一個壁を超えたんで、そこだけ締めてかかろうかな、と思います」と語り、高橋は「気持ち切らさずに、ここで燃え尽きないように。次またあるんでこの2週間でしっかり武南戦と違う気持ちつくって、全力でぶつかっていけるような準備をしていきたい」と力を込めた。目標は優勝だけ。この勝利に慢心することなく、次の試合へ向けた準備に集中する。

[写真]延長後半2分、浦和東は大野(中央)のゴールで勝ち越し

(取材・文 吉田太郎)
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