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[選手権予選注目校]神村学園、試練の場に挑む技巧派集団

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 鹿児島の技巧派集団は、最後の大舞台に立てるのか。高校総体予選で神村学園高は、決勝戦の後半終了間際に追いつかれ、延長戦で鹿児島実高に敗れた。足下の技術とパスワークは、圧倒的。有村圭一郎監督が「どことやっても、ボールは持てる」と話すように、全国大会でもほとんどの試合で主導権を握ることが可能なレベルにある。得点力もないわけではない。プリンスリーグ九州では、1年生FW高橋大悟が得点ランク3位に入る活躍を見せている。機動力の高い國場龍之介も7位タイと上位にランク。鮮やかなコンビネーションからゴールを陥れることが可能だ。

 しかし、高校総体で悔しさを味わったように、相手にとどめを刺すことができなければ、最後の最後で勝利の女神に見放されることもある。強豪ひしめく鹿児島を制し、目標である日本一へ突き進むためには、流れをつかんだときに一気にリードを広げる力強さ、たった一度のピンチさえも高い集中力で防ぐ強かさが必要だ。

 狭い局面を物ともしない技術を持ち、2020年の東京五輪出場を個人的な目標とする2年生MF橘田健人は「先制点を取っても、その後の追加点が取れない」と、いわゆる負けパターンを認識している。ボールを支配し、相手をコントロールし、勝ったような気になったとき、ピッチに悪魔が降りて来る。洗練された技術を持っているがゆえに陥りやすい罠だ。特に後半の失点癖は克服すべき必須のポイントとなる。気分良く試合を運ぶだけでは、最後の最後まで揺れ動き続ける試合の流れを抑えることはできない。

 彼らは、夏の悔しさを糧に勝負強さを身につけるつもりだ。前線での起用経験豊富なレフティーの2年生MF重村拓斗は、夏前にボランチでテストされた際に「まだ守備が悪いけど、アドバイスを受けて頼れる中盤の選手になりたい」と話し、持ち前の技術にスプリント力や守備力を加えようとしていた。

 主将のDF中島宏大も「総体では、カウンター1本でやられて、1回のピンチで負けることもあると知った。個人としては、絶対的な守備の柱になりたい。チームのために自分を犠牲にできる、最後の一歩、二歩を出せる選手になりたい。チームとしても、最後まで声を掛け合って戦いたい」と気を引き締めた。

 鹿児島県予選は、組み合わせに恵まれたと言えるかもしれない。プリンスリーグ九州で2位につける鹿児島城西高、高校総体予選の優勝校である鹿児島実は反対側のヤマだ。しかし、甘い考えがもたげれば、再び厳しい結果を突き付けられるかもしれない。6日間で5試合という国内で最もハードな日程で行われる鹿児島県予選では、思わぬ伏兵が勢いを増してくる可能性もあるからだ。持ち前の技巧を全国大会で披露するための勝負強さは備わったのか。神村学園が試練の場に挑む。

[写真]2年ぶりの鹿児島制覇に挑む神村学園の中軸、橘田健人

執筆者紹介:平野貴也
1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1カ月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし。
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