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[選手権予選]「まずは県予選優勝」攻守にタレント揃う矢板中央、全国4強越え、その先への第一関門を9-0快勝:栃木

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[10.17 全国高校選手権栃木県予選2回戦 佐野東高 0-9 矢板中央高 日光丸山公園サッカー場]

 第94回全国高校サッカー選手権栃木県予選は17日、2回戦を行い、3連覇を狙う矢板中央高はFW森本ヒマン(3年)のハットトリックの活躍などによって佐野東高に9-0で快勝。矢板中央は24日の準々決勝で足利工大附高と対戦する。

 ともに184cmの長身を持つ星キョーワァン主将(3年)、川上優樹(3年)という高体連屈指のCBコンビとMF坪川潤之(3年)や森本ら全国上位と言えるほど充実したタレント。いずれもJクラブが注目していた彼らを筆頭にGK渡辺優三(2年)ら下級生含めてチームのスケール感は大きく、高橋健二監督は全国4強入りした09年度のチームと比較しても「タレントはあの時よりもいる。狙えるチームだと思います」と期待を寄せる。だが、夏の総体予選は決勝でライバル・佐野日大高の前に0-2で敗退しており、指揮官も「とにかく油断しないで、栃木を突破して全国へ行きたい」と県予選突破に集中。かつてFW富山貴光(現大宮)やFW湯澤洋介(現栃木)を擁した08年度は県決勝でシュート20本以上を放ちながら敗れ、全国ベスト4翌年で期待値の高かった10年度も県決勝で敗れているだけにスタッフ、選手に慢心はなく、川上は「(矢板中央は)『良い』『良い』と言われている時はあまり勝てていないらしいので。(だからこそ)自分たちは乗り越えて全国に行きたい」と誓った。

 その矢板中央の今大会初戦。雨の中で始まった試合は前半4分、矢板中央がいきなり試合を動かす。右SB古家秀太(3年)の右クロスをファーサイドの森本が圧倒的な打点から放ったヘディングシュートでネットを揺らす。さらに8分には左サイドから崩し、最後は森本が残したボールをMF伊藤心(2年)が弾丸ミドルで決めて2-0とした。この日対戦した佐野東は11年に佐野女子高から男女共学化された創部5年目のチーム。先発11人中8人が下級生という若いチームだったが、0-2からはかなり落ち着いて守ることができるようになり、1年生FW中野聖也のキープ力を活かした速攻からMF落合恵太(3年)やMF湧川マキシ(2年)までいい形でボールをつなぐなど攻め返す。

 だが矢板中央は取り組んできたテンポの速い攻撃でサイドへボールを運び、MF茂呂圭輔(3年)の突破や右SB古家のクロス、そしてセットプレー含めて発揮したゴール前での高さで相手をねじ伏せる。36分には右サイドを切れ込んだ古家の折り返しをFW澤野祐輝(2年)が右足シュート。このこぼれ球を澤野が自らゴールへ蹴りこむと、38分には古家の右アーリークロスをDFの背後から飛び出した森本が頭でプッシュして4-0と突き放す。さらにアディショナルタイム突入後の41分にも古家の高精度クロスからゴール前でDF2人に競り勝った茂呂が頭でゴールへ押し込んで5-0とした。

 川上と星を中心に相手の反撃を芽を早い段階で潰す矢板中央は後半、足を攣らせる選手が続出した佐野東からさらに加点する。6分に澤野が左サイド後方から蹴りこんだ右足FKがGKの頭上を越えてそのままゴール。13分には右クロスのこぼれ球を森本が豪快に左足で突き刺して7点目を奪った。そして25分には左CKから交代出場のFW大畑亜輝(3年)が8点目。そして37分には坪川の右CKを川上が頭で決めて9-0で試合を終えた。

 県2冠を獲得して迎えた総体予選は決勝で敗退。星は「決定力が欠けていて、取れるところで取れなくて、負けパターンにハマってしまって負けてしまった」と振り返る。フェスティバルでも結果を残すなど、全国的にも評価の高かった春からまさかの予選敗退。チームリーダーの星が「自分らの中でもどこか心の甘さがあった。チームとしての甘さと個人としての甘さが出た大会だったと思います」と反省する総体予選からチームは危機感をもって成長を目指してきた。その成果は確実に実となり、この日は個々の能力の高さと高橋監督が「ちょっと今までスピードが遅かった。最後スピードアップすることは意識してやっていました。手数かけて下げてどうのといういうところで結果が出ていなかったので、シンプルにやろうと」と説明したダイナミックな攻撃で圧倒。また、チームはこの試合では数が少なかったものの、左利きの司令塔・坪川が縦に割って入ったり、コンビネーションからゴールを奪う上手さも備える。

 全国総体準優勝の市立船橋高と練習試合で引き分けるなど、チームは手応えも掴んでいる。その力を全国で発揮するためにまずは何としても県予選を突破すること。高橋監督は「とにかく、いろいろな相手が精一杯やってくると思う。最後まで我々の諦めない粘り強いサッカーをやって、延長戦でも、PK戦でも結果を出せるように全員サッカーで頑張っていきたい」。そして川上は「全国でもいい勝負できると思う。練習試合も重ねてきたし、いい結果も出ている。連動のところがまだ甘いと思うけれど、この予選で直していければ全国でも行けると思います。まずは県予選優勝することだと思うんですけど、全国行ってウチのベスト4という目標を越えて準決勝、決勝と上がっていって全国制覇したいです」。課題はまだまだある。だが、予選の中でさらに成長を遂げて第1目標を達成し、全国で大暴れする。

[写真]矢板中央は前半アディショナルタイム、この日左サイドで存在感を発揮したMF茂呂がヘディングシュートを決める

(取材・文 吉田太郎)
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