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[選手権予選]「自分たちが出て勝つ」秋田県勢の全国連敗ストップへ、伝統校・秋田商が7発決勝進出!

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[10.22 全国高校選手権秋田県予選準決勝 秋田商高 7-1 秋田西高 八橋陸上競技場]

 第94回全国高校サッカー選手権秋田県予選は22日、準決勝を行った。名門・秋田商高は秋田西高に先制されながらも、FW青山和樹(3年)の3得点などによって7-1で逆転勝ち。秋田商は2年ぶり41回目となる全国大会出場を懸けて24日の決勝で西目高と戦う。

「優勝旗を奪いに行く、チャレンジャーだと言い聞かせている」。昨年優勝を逃している秋田商の小林克監督は選手たちに挑戦者としての心構えを求めるが、この日は球際の激しさの部分、貪欲にゴールをもぎ取りに行く部分でも“秋商らしさ”を欠いた試合となった。硬さもあって受け身になり、中盤、最終ラインでしっかりとブロックをつくる秋田西相手にチャレンジする縦パスを入れることができない。それでもサイドからチャンスをつくる秋田商は前半7分、左SB高橋渓允(3年)の左クロスから青山がGKの頭上をフワリと突くヘディングシュート。だがこの一撃はクロスバーを叩いてしまう。逆にセカンドボールの攻防戦で優位に立った秋田西は、カウンターからMF保坂隼人(3年)のアーリークロスが10番FW伊藤佳佑(3年)に通るなど秋田商を脅かすシーンも作り出した。

 そして16分、秋田西はカウンターから前線でボールを受けた伊藤が思い切り良く左足を振りぬく。体重のしっかり乗った一撃は弾丸ライナーでゴール左隅を破った。右手人差し指を突き上げながら大興奮のスタンドへ駆け寄り、両手でその声をさらに煽った背番号10。01年度以来の全国を目指す秋田西がV争いの本命・秋田商からリードを奪った。だが、4-3-3システムの2列目に位置するMF山本隼主将(3年)、MF菅原隆晃(3年)の両司令塔を経由してサイドへボールを運ぶ秋田商は「左サイドで攻めようというのがあって、みんなから高い位置取れと言われていた」高橋が起点となってアーリークロスを連発。サイドへの寄せの甘い秋田西の弱みを突いて外からの攻撃でゴールをこじ開けに行った秋田商は22分、左ショートコーナーから山本が右足でクロスを入れる。GKの頭上を超えたボールをファーサイドの青山が頭でゴールへ沈めて同点に追いついた。

 アーリークロスに加えてDFラインの背後を狙う青山らを活用するなど多彩な攻撃を見せる秋田商はさらに32分、中央のショートコンビネーションからFW菅原晟也(3年)が左中間へ抜け出すと、最後は菅原晟のラストパスを青山が右足で合わせて逆転。39分にも左クロスのこぼれを拾った山本の横パスを菅原隆が1タッチで決めて3-1で前半を折り返した。流れが悪くても山本が「得点はいろいろなパターンで取れている。(これからも)発揮していきたいと思います」という得点を奪いきる力を持つ秋田商は後半5分にも「(自分の役割は山本)隼とテンポ上げることと、自分はスルーパスを出せると思っている」という菅原隆のスルーパスから右足シュートを決めた青山がハットトリック達成。1タッチパスを交えて攻める秋田西も前線の伊藤、FW木曽皓人までボールを繋いで1点を奪い返そうとするが、いい形でシュートへ持ち込むことができない。

 一方の秋田商は10分にも菅原隆の右クロスをニアサイドへ飛び込んだ菅原晟が頭で合わせて5-1。20分には山本のループパスに反応した交代出場FW仙波拓真(3年)が1タッチでゴールへ流し込むと、29分にもカウンターから一気に抜けだした仙波が右足シュートを決めて7-1で快勝した。リードを奪われる意外な展開も、小林監督が「テンポよくボールを回しているうちに相手の足を止めることができると思っていたので、ここで慌てるよりももう一回繋ぎ倒そうといういうことを選手たちには話していた」という秋田商は慌てることなく攻めて逆転勝ち。指揮官は決勝へ向けて「見ている人が熱くなるようなプレーを連続したい。バチバチという激しさ、攻撃の連続性とかそういうところを出していきたい」と語った。

 秋田商の目標は全国で勝つことだ。現在秋田県勢は04年度大会で秋田商が1勝したのを最後に現在10年連続で初戦敗退中。だが、山本と菅原隆をはじめ、青山、CB佐藤嘉幸ら攻守に好選手揃う今年は全国で勝つ自信がある。1年時に全国舞台を経験している山本は「もう一回あそこに立って勝てるように。勝つなら今年。自分らのチームならばチャンスがあると思う」と語り、高橋は決勝へ向けて「絶対優勝します。全国で勝つ自信はあるので、自分たちが出て勝つというのが今年の目標。まずはスタートラインに立たないといけないので、全国のスタートラインに立てるように頑張ります」と誓った。

 全国最多の40回出場、全国優勝2回など東北地域を代表する伝統校の秋田商は常に全国舞台に立っていなければならない存在。菅原隆は「(予選で敗れた)昨年の悔しさがある。今年は絶対行こうという気持ちで練習もやってきた。県予選優勝も通過点だと思う。まずは決勝で勝って全国でも勝ち進みたい」と意気込んだ。新人戦、総体予選、県1部リーグの3冠をすでに達成。まだ重圧に対する弱さ、相手に付け入る隙を与えてしまっている部分がある。それでも秋田商は秋田を代表する存在として「全国で勝つこと」への使命感を持って戦うだけ。ライバル・西目との決勝を制して全国へのスタートラインに立つ。

[写真]前半22分、秋田商はFW青山がヘディングシュートを決めて同点

(取材・文 吉田太郎)
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