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[MOM1531]松山工FW野川稀生(3年)_「選手権は格好つけられる場」。ビッグマウスのエースが目標の得点王に近づく2得点

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.24 全国高校選手権愛媛県予選準々決勝 松山工高 9-1 新居浜西高 新居浜グリーンフィールド]

 自他ともに認めるビッグマウスのFW野川稀生がしっかり仕事を果たし、松山工高を3年ぶり4回目の全国に一歩近づけた。

 今大会での目標を得点王に定める野川は初戦となった2回戦の大洲高戦で、幸先よくゴールを奪ったが、試合後に右足内転筋の肉離れを負傷し、この日は医者から試合を休むように言われていたという。それでも、目標を達成するためには1試合も無駄にはできない。監督に志願し、出場機会を得ると、「前半で代えられると思っていたので、なるべく早いうちに試合を決めたかった」と開始から野性味溢れるドリブルでチャンスを作った。

 この日、1点目は前半15分。ゴール前に飛び出したMF吉村泰成が倒されて得たPKだったが、「ここで得点数を稼いでおこうかなって思った。譲ってくれなかったら、強引にでも蹴るつもりだった」とキッカーに立候補し、きっちりとネットを揺らした。続く18分には自らのパスを起点に左サイドを崩すと、最後はゴール前に走り込んでヘディングで2点目をマーク。以降はMF越智楓岳の2得点をお膳立てし、試合を決定づけると後半17分にピッチを退いた。

 昨年も「得点王を獲る!」と高らかに宣言していたものの、終わってみれば1点も奪えず悔しい思いを味わった。だが、「今年は10番の責任を感じるし、夏の合宿で厳しい経験をして、自信もついた。シュートを外した際に『決めろよ!』って文句を言われても、結果的に1点でも多く獲れたら、チームへの恩返しになるのかなって思えるようになった」と得点への貪欲さが芽生えたことで、急成長。変化は、キャプテンのDF兵頭俊昭も気付いており、「前は自分がゴールを決めるというよりは、周りに決めさせるプレーが多かったけど、冬に向けて、『自分がエースだ』という想いが芽生えてきたように思う」。

 変化は得点への意識だけに留まらない。坂本哲也監督が挙げるのが守備面。「これまでは守備を嫌がっていて、彼が守備をやっていない状況から失点が多かった。夏以降、失点が減ったのは、彼がしっかり守備をやり始めたからもあると思う」と口にする。本人も、「夏までは走り込みが足りず、サボってる部分があったかなと思う。でも、最近は大西貴コーチから強く言われ続けたこともあって、守備をやらないとなって思うようになった。10番を背負うからには、攻撃だけでなく守備も頑張らないダメだなって」と話すように、攻守ともに責任を伴ったプレーを見せることで、試合での存在感を増している。

 試合後、「選手権予選は彼女が観に来てくれたりして、恰好つけられるじゃないですか(笑)。僕はそういう事でモチベーションを上げるタイプなんです」と、おどけたように、お調子者かつビッグマウスであることは間違いない。これまでは、有言実行を果たせなかったものの、今年は心身ともに確かな違いを感じる。大口叩きで終わらないためにも、得点王と選手権出場を掴むつもりだ。

(取材・文 森田将義)
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