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[選手権予選]2度のリード失うも、「今年は攻撃がストロングポイント」の遠野が5ゴールで花巻東ねじ伏せる:岩手

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[10.27 全国高校選手権岩手県予選準決勝 花巻東高 2-5 遠野高 盛岡南公園球技場]

 第94回全国高校サッカー選手権岩手県予選は27日、準決勝を行った。3連覇を狙う遠野高はFW佐々木琢光(2年)の勝ち越しゴールなどによって花巻東高を突き放し、5-2で快勝。遠野は11月1日の決勝で盛岡中央高と戦う。

 警戒していた花巻東の注目エースFW谷村海那(3年)に2ゴールを許して2度追いつかれた。それでも長谷川仁監督が「昨年はどちらかと言うと守備のチームで全国でも通用しなかったので(草津東高に1-3で初戦敗退)、もう少し自分たちの形で崩して行けるチームを目指してきました」と語り、FW須藤和輝主将(3年)が「去年のチームは守備がベースだったけれど、今年は攻撃というストロングポイントがあるのでしっかりパスを繋いで、守るところはしっかり守っていきたい」という遠野は5ゴールで難敵をねじ伏せて決勝進出。今年プリンスリーグ東北で仙台育英高に9-0、塩釜FCユースに8-1で勝った試合もある遠野は自信を持っている攻撃力で撃ち勝ち、連覇に王手を懸けた。

 立ち上がりから丁寧にボールを動かして、相手を動かしながら攻める遠野が花巻東を押し込んだ。そして前半12分、右中間の位置でFKを獲得したMF岩渕弘人(3年)が自ら右足を振りぬく。鋭く変化した高速FKがゴール右隅を破って遠野が先制点を奪った。花巻東はボールを奪ってから素早く前線へボールを送ろうとするが、早い段階で潰されてゴールに近づくことができない。それでも20分、速攻から左サイドのMF戸来雅也(3年)がDFラインの背後へボールを配球すると、相手CBの前に身体をねじ込んだ谷村が左足ループシュートで同点ゴールを決めた。

 エースが1チャンスで仕留めたゴールに花巻東は沸いたが、30分にFW瀬川祐生(3年)のグラウンダーのクロスを谷村が右足ダイレクトで捉えた一撃は惜しくも枠上へ外れてしまう。一方、遠野は谷村に2本のシュートを許したものの、試合の主導権を離さない。ポゼッション、セカンドボールの攻防でも上回ると、前半アディショナルタイムの41分には岩渕の右クロスをニアサイドの佐々木が頭で逆サイドのゴールネットへ流し込んで勝ち越した。後半も立ち上がりから遠野がチャンスを連発。佐々木のダイレクトの右足シュートやMF中野寛也(3年)がオープンスペースへ入れたパスからMF佐藤充(3年)が放った右足シュートなどで花巻東ゴールへ襲いかかった。

 だが、「DF陣が頑張ってくれたから」(谷村)1点差のまま食らいついていた花巻東は、エースが再び1チャンスをゴールへ結びつける。10分、左中間から瀬川がDFの背後へパスを落とすと、競り勝って抜けだした谷村が右足で同点ゴール。遠野は主導権を握りながらもまたもやカウンターから谷村の一撃でリードを失ってしまう。だが、遠野は取られても取り返す。失点から2分後の12分、中野のサイドチェンジから佐藤が中央へ折り返すと、佐々木が右足シュートを右隅へ決めて3-2と勝ち越した。花巻東も三度同点ゴールを目指したが26分、PAわずかに外側の位置で不用意なファウル。遠野はこのFKを岩渕が右足で狙うと、DFに当ってコースの変わったボールがそのままゴールへ吸い込まれた。

 長谷川監督が「ボールを動かして相手を動かした分、最後相手も動けなくなってくる。間延びしてくるんじゃないかなというのは想定していました」という遠野は、縦パスから同点に追いつこうとうする花巻東の攻撃を凌ぐと、32分にも左CKからゴール前のポジション争いでPKを獲得。これを須藤が右足で決めて勝負の行方を決定づけた。須藤は「10番の谷村海那が要注意選手だったので、やられるのは想定内だったんですけど、そこで粘り強く戦う遠野スタイルで戦おうと言っていた。それが勝利に繋がった。(今年ストロングポイントの攻撃面は)DFラインからのパスが繋げるようになってきた。(リーグ戦ではなく)トーナメントの一発勝負でもできれば本物だと思う」

 どうしても岩渕や須藤のマークが厳しくなる中で、この日はトレーニングで好調だったという2年生FW長谷川が春以来という先発出場。「自分のストロングポイントのシュートはめげずにやってきました。何日か前の練習から手応えがあった。DFが苦しい時もしっかり結果を出してDFを楽にさせられるFWになりたい」という長谷川は指揮官も認める得点嗅覚の高さを発揮して2得点を奪った。人工芝グラウンドを活用してボールを扱う、繋ぐというトレーニングの質が上がっているという遠野。磨いてきたスキルに加えて、2年生FWの台頭によって、ストロングポイントという攻撃はより破壊力を増している。岩渕は決勝へ向けて「俺らの代になって優勝していないので、チャレンジャーの気持ちでやっていきたい。去年県優勝という目標をもって優勝したけれど全国で何もできなかったので、今年は全国で1勝という目標に向かって練習してきた。全国でも勝てるようにしたい」。今年、無冠の王者は挑戦者の気持ちで決勝を戦い、全国への挑戦権を勝ち取る。

[写真]後半13分、遠野はFW長谷川が右足で勝ち越しゴール

(取材・文 吉田太郎)
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