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[MOM1545]松本一GK清水昌行(2年)_PK職人でも存在感見せる守護神

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.31 全国高校選手権長野県予選準決勝 創造学園高 0-0(PK2-4)松本一高 アルウィン]

 大きな切り札が、勝利を引き寄せた。シュート数3対17という苦しい展開をしのいでいた松本一高は、延長後半の終了間際にGKの交代を行った。先発した2年生GK林泰生に代わってピッチに足を踏み入れたのは、同学年の清水昌行だ。夏までは正GKとして活躍していたが、夏の終わりに腰椎分離症に見舞われた。フルタイムの出場が難しくなり、忸怩たる思いを胸にベンチに座ることになった。「本当は先発で出たい」が本音だ。それでも、練習では仲間のPK練習に付き合うようにしてゴールマウスに立ちはだかり、来るべきときに備えた。

 高校までGKをやっていたという父に指導を受けたのがきっかけで、小学生の高学年からGKというポジションについた。以降は「最初から試合に出て、4本、5本とビッグセーブをして、無失点に抑えるのが理想。味方がなかなか点を取れないときに、後ろから鼓舞してチームを勝たせられるGKになりたい」という理想を追いかけてきた。とにかく、チームが勝つことが1番大事。その思いだけを胸に、ベンチスタートでも役立つことを考えていた。これ以上ない苦しい試合の正念場で、出番はやって来た。

 味方の信頼は、厚かった。同学年でスーパーサブとして起用されているドリブラーの小松怜也は「練習でも蹴った方向に必ず飛んでくる。僕は8番目のキッカーでしたけど、5本あれば1本は止めてくれるので、絶対に自分までは回ってこない」と確信していた。PK戦の2本目、清水は右に飛んで相手のシュートを防いだ。勘が良い。助走を見て方向を読むのだという。陣頭指揮を執っている吉田慶士コーチも「1本は必ず止めてくれると信じていたので、予定通り」とケガの功名で生まれた「PK職人起用」の手ごたえを話した。もう1本は相手のキックミスでゴールを外れたものだったが、PK戦を4-2で制し、清水はチームを初の決勝に導く立役者となった。

 決勝戦は、2連覇を狙う都市大塩尻高が相手。守勢を強いられる展開は免れないだろう。しかし、清水の投入でPK戦を制したチームには勢いが出る。どれだけ苦しくても、最後までもつれ込めば、切り札があると信じて戦えるからだ。点が取れないときにチームを助けるGK――形こそ違えども、清水の信念はチームに通じている。

(取材・文 平野貴也)
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