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[MOM1549]丸岡DF道木宏明(3年)_「初めてサッカーを辞めたいと思った」苦しみ超えた主将。心とプレーで優勝導く

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.1 全国高校選手権福井県予選決勝 丸岡高 1-0 北陸高 テクノポート福井]

「苦しいことばかりの一年だったので、最後に報われて良かった」。DF道木宏明(3年)がそう振り返ったように、今年の丸岡高は新人戦、総体予選を落とすなど苦難の連続。リベンジを誓ったこの日も決して楽な試合ではなかった。だが、小阪康弘監督が真っ先にマン・オブ・ザ・マッチとして挙げたように、これまで苦しみ続けたキャプテンの存在があったから、選手権出場を掴めたと言っても過言ではない。

 立ち上がりこそ、FW嶋津裕真にシュートを打たれるなど守備の不安が見られた丸岡だったが、以降は「一人行ったら、一人はカバーに行く守備の基本を徹底していた」と周囲と上手く連係をとりながら、北陸の攻撃陣に決定的な仕事をさせず、無失点を保った。一方で、攻撃陣はあと一歩及ばず、苛立つ展開に。いつ緊張の糸が切れてもおかしくない状況で、支えとなったのは道木のコーチング。点を獲れない不満から、チームメイトがヒートアップしそうになると、小まめに声をかけて、落ち着かせた。「我慢する時間が続いて、苦しかったけど、全員で声をかけあうことができたから、耐えられたと思う。苦しくても頑張れたのは、インターハイ予選で負けてから、厳しい練習を続けて、精神的にも、肉体的にも成長できたから。試合中も、『辛いことをしてきたのは、僕たちの方が多いんだ』って声を掛け合って集中を保った」と振り返る。

 延長後半のアディショナルタイムに決勝点を奪えたのは、そこまで焦れずに守り切った守備の奮闘があったから。小阪監督は、その中心にいた道木を「落ち着いて、守備をやってくれたのは大きい。相手の2トップをゼロ点に抑えてくれたことで、チームに落ち着きを与えたと思う」と称えた。

 この日は強固な守備を見せたものの、夏までは「誰を使っても失点をしていた」(小阪監督)と目を当てられない状況で、全国総体出場を逃す結果に。浮上のきっかけが掴めず、苦しいチームを引っ張るため、「精神的な支えになれるように意識している。自分が苦しい時は、皆も苦しいはずなので、なるべく声をかけていた」という道木だったが、一度は心が折れそうになったことがあるという。

 それは、県総体の準決勝で福井商高に敗れたため、冬に向けてリスタートを切った夏休みのこと。チームは、選手権出場に向けて3部練習などハードなトレーニングを重ねていた。肉体面で追い込まれた状況で、追い打ちをかけたのは、小阪監督からの「オマエみたいなキャプテンはいらない」などと期待しているからこその厳しい言葉。道木は「『嫌やな』『逃げたいな』って思ったりもしました。初めてサッカーを辞めたいと思うくらいにまで、追い込まれていました」と振り返る。それでも、仲間の存在や、選手権出場への強い想いが彼を踏み止まらせたという。「今となっては、丸岡高のキャプテンという重圧を背負うことができて良かったと思う。次は落とせないというプレッシャーの中で夏を乗り越えたので、結果が出てホッとしている」と安堵の表情を浮かべたように、苦しい時期があったからこそ、精神的にタフになり、この日の守りに繋がったのは間違いない。

(取材・文 森田将義)
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