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[Jユースカップ]「団結力」が強さの源、大分U-18がクラブユース選手権王者・横浜FMユースを退けて準決勝進出!

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[11.1 Jユースカップ準々決勝 大分U-18 0-0(PK4-3)横浜FMユース カシマ]

 11月1日、2015Jユースカップ第23回Jリーグユース選手権大会準々決勝が行われ、ベスト4チームが出そろった。茨城県立カシマサッカースタジアムの第1試合では、大分トリニータU-18と横浜Fマリノスユースが対戦し、九州の雄が夏のクラブユース王者をPK戦の末に退ける結果となった。

「横浜FMさんは個としてもチームとしても本当にレベルが高い相手でしたが、自分たちらしさは出せたと思います」

 大分・山崎哲也監督はそんな言葉で試合を振り返る。W杯規格の巨大スタジアムが作り出す雰囲気もあって少々気負いや緊張も見られた大分だったが、ベースとなる球際の強さは揺るがない。コンパクトな陣形を保ちながら、ロングボールのこぼれ球を拾って序盤からトリコロール軍団を押し込んでいく。

「球際で上回ったとは別に思っていないですよ」と山崎監督は言うものの、横浜FM・松橋力蔵監督は「球際のところで本当に勝てなかった」と開口一番に脱帽。「うちの選手たちも相当タフに戦えるようになったと自負していますが、大分さんのタフさはそれ以上でした」と相手チームの強さを称えた。あれだけ球際で戦えてなお、「別に」と言えてしまうこと自体が大分のベースの高さを物語っているとも言えるだろう。

「本当はもっとつなぐつもりだった」という趣旨の言葉を監督・選手ともに残した大分だが、DF吉平駿が「FWの(吉平)翼と対面のCBがミスマッチだと思ったし、相手がロングボールを嫌がっているというのは感じていたので」と言うように、あえてロングボールを増やしていたというのもまた事実。シンプルに攻めてくる大分に対し、横浜FMは総じて「後ろが頑張って跳ね返してもこぼれ球がまるで拾えず、こちらの良さを出せない試合展開にされてしまった」(松橋監督)。

 もっとも、夏の王者もそれだけで終わるチームではない。左MF遠藤渓太が果敢な突破でチャンスを作れば、FW渡辺力樹はパワフルな突破からの強シュートでゴールを脅かす。ディフェンス陣も大分のパワフルな攻めに対して、最後のところで粘り強く対抗。「良さを出せない中でも悪いなりに戦うということが今日はできていた。可能性を残しておけた」と松橋監督も胸を張る。相手の狙いがハマる中でも、悪いなりに五分の展開に持ち込んだのは横浜FMの地力の高さの裏返しだった。結果、試合は拮抗状態のまま推移していくこととなる。

「どれだけみんなでハードワークできるかだと思っていた」という吉平駿の言葉が双方に当てはまるような緊迫した状態で時間のみが経過し、数少ない決定機をどちらもゴールにはつなげられず、0-0のまま延長戦も終幕。決着はPK戦に委ねられることとなった。

 迎えたPK戦。大分のキッカーは立候補制だが、5番手まですぐに埋まった。「PKは得意じゃないんです。中学のときも外してしまった思い出があるので」と言う吉平駿は、3回戦に続いて自ら5番手を選択。「(3回戦は不在だった双子の)翼が『5番手を蹴る』と言い出すと思っていたら『俺は4番手でいい』と言うので、自然とまた5番になっちゃっただけです」と笑う。大分が一人、横浜FMが二人外している「決めれば勝ち」という後攻独特の状況ペナルティースポットへ。「正直不安でしたけど、けがで出られない脇田雄真のユニフォームを下に着ていたので、あいつの顔を思い出して蹴ったら、入ってくれました」。雄叫びをあげて、ベンチへ疾走。歓喜の抱擁を交わした。

 山崎監督は「チームプレーがあって、プラス個人がいる。誰がいないとダメというチームじゃないですし、誰かに頼ったチームでもない。それが今年のチームの強さです」と言う。吉平駿は強さの秘密として迷わず「団結力」を挙げた。「思いが強すぎてバラバラになってしまった試合もあったんです。でもいまは、みんながみんなのためにブレることなくやれている感覚があります」。頂点も見えてくる段階だが、指揮官と選手は奇しくも「そうではなく、一戦一戦やるだけ」と言葉を同じくした。夏の王者・横浜FMを相手に見せた戦いぶりは、そうした強さを確かに証明するものだった。

[写真]勝利を決めるPKを決めた大分U-18DF吉平駿がチームメートと歓喜の抱擁

(取材・文 川端暁彦)
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