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[MOM1561]富山一GK久我芳樹(3年)_富山一に再び現れた“PK職人”、期待通りに「久我って」2本セーブ!!

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.3 全国高校選手権富山県準決勝 水橋高 0-0(PK3-4)富山一高 富山県総合運動公園]

「スタメンを信じていたから、今日はほとんど何もしてない」。試合後、大塚一朗監督がそう口にしたように、富山一高はスコアレスのまま、時計の針が進んでも交代カードを切らずにいた。指揮官が唯一、動いたのはPK戦突入間近の延長後半9分。残り1分を切ってから、ピッチに送り出されたのは、GK久我芳樹(3年)だった。

「点を獲って普通に勝ってくれるのが一番良いけど、試合に出たら俺が止めてやると思っていた」ものの、いざ声をかけられると、「めちゃくちゃ緊張した」。ピッチでの出番がないままPK戦に挑むことになったが、水橋高1番手のキッカーは昨年、国体選抜でプレーを共にしたDF下鳥あとむ。「一緒に練習をしていたので、どこに蹴るか分かっていた。思っていた通りにボールが飛んできた」とゴール中央に飛んだキックを冷静にストップ。MF四十田蒼が蹴った3本目は、相手の助走と軸をしっかり見て、ボールの飛ぶ方向を予想。見事に的中させて、決勝進出の立役者となった。

 今年の富山一はGKが豊作の年。この日、スタメンを務めた相山竜輝だけでなく、メンバーから外れた沖田諒に久我を加えた3人の実力差はないと大塚監督は話す。ただ、選手権予選に入ってからは、「調子が良い選手を試合に出している。今は一番バランスが良い相山を使っている」(大塚監督)との理由で久我の定位置は、サブGKになっていた。21得点を奪った3回戦の魚津戦では試合途中から出番を得たが、自らのミスで失点。準決勝までチームの失点は、この1点のみで、「ミスを取り返そうと思っていた」という。もちろん、望むのは守護神の座だが、今はチームが勝つことが一番。「自分ができることは今日みたいにPKを止めるとか、(相山)竜輝の怪我の穴を埋めるしかない。割り切って、自分のやれることをやるしかない」。

 富山一で“PK職人”と言えば、思い浮かぶのは日本一に輝いた一昨年度の全国大会準決勝・四日市中央工高(三重)戦。試合終了間際に投入されたGK田子真太郎が、見事にPKをストップし、勝利の立役者となった。本人は「少し意識したけど、自分は自分なので」と口にしたが、一部で“田子る”と呼ばれた先代が見せたPK戦での強さにちなみ、この日は「久我る」という表現をされて、チームメイトに背を押されたという。

「田子はPKに強くなく、気持ち的に乗せないとダメだったけど、久我は練習中から何本もPKを止めているので、『オマエなら止められるから、自信を持っていけ』と送り出せる選手。田子よりも久我の方がレベルは高い」と大塚監督が話したように、先代と違って、彼は本当の“PK職人”。本人も「小さい頃から、PKをよく止めていたし、富山一に入ってからGKコーチと練習をしていたので自信がありました」と胸を張ったように、今後も先発奪取を目指すGKの“PK職人”としての活躍に期待ができそうだ。

(取材・文 森田将義)
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