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[選手権予選]名勝負となった“清水ダービー”、1年生FW白井の延長V弾で清水桜が丘が清水東破る!!:静岡

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[11.3 全国高校選手権静岡県予選準々決勝 清水桜が丘高 3-2 清水東高 草薙陸]

 第94回全国高校サッカー選手権静岡県予選準々決勝で清水桜が丘高清水東高が激突。延長戦にもつれ込んだ熱戦は延長後半9分に1年生MF白井海斗が決めた決勝点によって、3-2で清水桜が丘が勝った。今夏の全国高校総体予選の優勝校、清水桜が丘は11月7日の準決勝で静岡学園高と戦う。

 全国優勝3回の清水商高の伝統を受け継ぐ清水桜が丘と全国優勝1回、準優勝3回の清水東が決勝トーナメントで対戦するのは実に20年ぶり。“清水ダービー”は清水桜が丘の名将・大瀧雅良監督が「執念と執念のぶつかり合い」と評した大熱戦となり、劇的な幕切れで清水桜が丘が準決勝へ勝ち上がった。清水桜が丘の2度のリードを清水東が追いついて突入した延長戦。ここで清水東はセカンドボールを支配し、テンポよくボールを動かすMF富士野雄太(3年)を中心とした攻撃からビッグチャンスをつくる。9分に交代出場の1年生SB永島周汰の“危険な”クロスに富士野が飛び込み、延長後半2分にはFW稲見凌(3年)の左クロスのこぼれにFW湯澤隆志(3年)が反応する。だが渾身の右足シュートはGK正面。さらに3分には自らのシュートのこぼれ球に反応した永島が決定機を迎えるが、右足シュートはゴール左へ外れてしまう。

 逆に清水桜が丘は延長後半から投入された1年生の俊足FW松下祐也や白井がチャンスメーカー役となると9分、熱戦に決着をつけるゴールが生まれる。清水桜が丘は最終ラインからCB稲荷田明秀(3年)が前線へフィードを入れると、ゴールを背にして浮き球をコントロールした白井が左後方から寄せてきたDFのマークを外しながら右足を振りぬく。これがゴール左隅へ吸い込まれた。今夏の全国総体予選決勝で決勝ゴールを決めている1年生がまたも会場を揺るがすような一撃。清水桜が丘の歓喜の輪が広がり、試合再開直後に終了の笛が鳴り響いた。主将のMF杉本隼(3年)は「勝ち切ることが大切。いい試合できたと思いますし、やっている選手自身も最後まで楽しかったと思う」と語り、大瀧監督は「良くやった。良くやれたな、ウチは」。二度追いつかれながらも三度勝ち越して勝ち切った選手たちに目を細めていた。

 90年度以来、全国舞台から遠ざかっている清水東は今年、元日本代表MFで、監督としてジュビロ磐田を率いた経歴も持つOB・長澤和明氏をヘッドコーチに迎えた。05年度に常葉学園橘高を全国大会初出場へ導いている長澤氏だが、県下屈指の進学校である清水東ではコンディション面も考慮して朝練習を行わないなど当時に比べると練習量は控え目で、授業後の2時間練習で集中してチームづくりをしてきたという。その清水東は序盤から小さなスペースを上手く活用したポジショニングとパス出しで主導権を握る。また背番号3のCF伊藤圭祐(3年)もボールを収める役割で健闘。14分にはFW鈴木玖風(3年)のスルーパスからDFの前に上手く身体を入れた富士野が決定的な右足シュートを放った。

 だが清水桜が丘は18分、杉本の左CK後の混戦から最後はFW山田柊斗(3年)が自ら放った右足シュートのこぼれ球を左足で押し込んで先制点を挙げる。この後は攻撃のリズム、精度が悪くなった清水東を清水桜が丘が押し込んだが清水東は40分、右中間から左前方へのドリブルで清水桜が丘の守備網に穴を開けたFW湯澤隆志(3年)が、切り返しでDF2人を外して右足シュートをゴール右隅へ流し込む。

 ひとりでこじ開けた同点ゴールに清水東スタンドは大盛り上がり。清水桜が丘は後半13分に守備の柱・大森圭一郎(3年)が負傷退場して苦しい状況に追い込まれた。だが、清水桜が丘は後半9分から右サイドに入ったFW野木智大(3年)が縦へのスピードを発揮し、FW山田が前を向いて思い切りよく勝負。高い位置でボールを奪う右SB水野歩夢がサイドから押しこむなど相手に流れを渡さない。迎えた22分、右サイドから中へ切れ込んだ野木のクロスをファーサイドの山田が1タッチでゴール方向へ蹴り込むと、DFに当たったボールがゴールラインを越えた。この後、勢いづいた清水桜が丘だが、31分にMF鈴木章司(3年)が迎えたチャンスは清水東GK八木洸大(3年)がセーブ。勝利への執念を見せる清水東は試合終了2分前の38分、MF中村拓斗(3年)の右クロスのこぼれ球を1年生DF永島が豪快にゴール左上へ突き刺して同点に追いついた。名勝負となった「清水ダービー」。試合後、スタンドからは勝者・清水桜が丘、敗者・清水東に対しても大きな、大きな拍手が送られていた。

 劇的な形で追いついた清水東の勢いを感じながらも延長戦で振り切った清水桜が丘の杉本主将は「1点取って追いつかれて。2点取ってまた追いつかれるという。でも、自分たちとしては追いつかれても、『また、やろう』『また、やろう』という感じだったので切り替えてやれた」。そして「あっちが点取った時とかも歓声凄くて、ウワーとなったけれど、自分たちは自分たちでと切り替えた。こっちの(清水桜が丘の)応援に感謝したいですね」と語った。また山田は「チームはやるべきことが一緒なんで、誰が入ってきてもやれると思います」と語り、交代出場の野木や松下、最終ラインに投入されて大森の穴を埋めたCB石井智大(3年)というベンチスタートの選手たちが見事に役割を果たして全員で掴んだ勝利に胸を張った。大熱戦となった清水ダービーを全員の力で勝ち切った清水桜が丘。13年度の学校再編後、現校名では初となる全国選手権出場へあと2勝とした。

(取材・文 吉田太郎)
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