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[選手権予選]我慢強く戦い、CKから2発!名門・藤枝東が科学技術振り切り、静岡準決勝へ

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[11.3 全国高校選手権静岡県予選準々決勝 科学技術高 0-2 藤枝東高 草薙陸]

 第94回全国高校サッカー選手権静岡県予選準々決勝が3日に行われ、昨年度準優勝の藤枝東高が科学技術高に2-0で勝利。2年ぶりの全国大会出場へ一歩前進した藤枝東は7日の準決勝で飛龍高と戦う。

 25回目の全国大会出場を狙う名門・藤枝東が苦しみながらもベスト4進出を決めた。全国準優勝の歴史を持つ静岡工高と清水工高が学校再編されて08年に誕生した科学技術は今年、新人戦県8強で県1部リーグも5位。藤枝東OBの鷲巣延圭監督が「経験値はこの一年積めたと思う」というチームは挑戦者として藤枝東に挑みかかる。3分、左サイドからのパワフルな突破でDFに穴を開けたSB柴崎航士郎(2年)が左足シュート。こぼれ球に俊足FW山島嘉嗣(3年)が反応して左足を振りぬく。抜群のスピードで脅威となった山島を活かした攻撃で攻める科学技術に対し、藤枝東はパスさばき、ヘディングの強さなど中盤で存在感を放った1年生MF山口晏侍が精力的な動き光るMF渡邉航平主将(3年)のサポートを受けながらゲームメーク。20分には山口の展開からMF栗原健(3年)、SB尾崎文哉(2年)と繋いで左サイドを打開するなど攻め返した。

 科学技術も17分に右サイドから仕掛けたMF桑原大彰(3年)が右足を振りぬき、26分には左のオープンスペースを突いた山島の折り返しから10番MF三輪悠太(3年)が右足シュート。だが、しっかりとシュートブロックして危険なシーンをつくらせない藤枝東は30分、セットプレーをものにしてリードを奪う。右CKからMF神谷太智(3年)がフワリと浮かせたボールを蹴りこむと、ファーサイドの渡邉が頭で折り返す。これをゴールエリアに飛び込んだエースFW山田盛央(3年)が右足ダイレクトで押し込んた。

 先制された科学技術は前半アディショナルタイムに左サイドからカットインした山島が右足シュートを放ったが、これはクロスバー直撃。一方、前半を1-0で終えた藤枝東は伝統的にパスワークを持ち味とするチームだが、前半にイエローカードを受けていた山口をハーフタイムに交代させたことで、後半の攻撃は明確に背後を狙う形となった。リスクを嫌ってか、やや安易に蹴りこむシーンが増えてしまったが、ゲームの主導権は渡さない。前線で献身性を発揮する山田が良くボールをおさめ、右の俊足MF曽根大和(1年)がスペースを狙いながら追加点のチャンスを伺う。

 それでも就任1年目の小林公平監督が「完全に押し込まれる時間が長かったですし、GKとDFラインの間にはスペースを与えてないけれど、その前にスペースを与えすぎた」と振り返ったように、科学技術にバイタルエリアを活用され、特に終盤は我慢の展開となった。29分、科学技術は三輪の左CKからニアサイドへ飛び込んだCB堀口文太主将(3年)がダイビングヘッド。これはわずかにゴール右へ外れたが、37分には左サイドを突破した柴崎の折り返しから山島が左足を振りぬく。CB久松真之(2年)がブロックしてこぼれたボールが柴崎の足下に転がったが、シュート精度を欠いて決めることができない。この大ピンチもDFがしっかりと出した一歩で凌いだ藤枝東は逆に後半39分、交代出場MF井出皓介(2年)の右CKをニアサイドの交代出場MF秋田賢吾(2年)がコースを変えると、最後は1年生MF曽根が右足でゴールへねじ込んで2-0。公式記録上はシュート数4-14という展開だったが、シーズン後半から着実に高まってきているという守備力によって無失点で終えた藤枝東が準決勝への切符を掴んだ。

 主将の渡邉は「相手の勢いというものに飲み込まれる時間が多くて、その中でも粘り強くやれたことが勝因だと思います。(シーズン序盤は)相手の勢いになったら大量失点することが多かった。夏以降、そういう苦しい場面で耐えぬいて勝ち切ることができてきたのが成長できた要因だと思います」。藤枝東は今年4月、元U-17日本代表DFで同校のOBでもある小林監督が就任。1学年上にMF長谷部誠、同期にMF成岡翔やDF大井健太郎、MF岡田隆らがいる新指揮官は「あの時の強さというのは全国でも優勝候補になるくらい。それを取り戻したいと思っていますし、ボク、最後怪我して選手権に出ていないんですよ。恩師に恩返しできなかったので、いつか自分でチーム率いて借り返したい、恩返ししたいという思いで」指導者になったという。戦力的に飛び抜けた世代ではなく、プリンスリーグ東海では開幕3試合で12失点。伝統的なパススタイルのサッカーで勝つことを期待する声もあるが、まず守備を立て直すことから始めたチームはプリンスリーグ後期最初の3試合で静岡学園高に完封勝利するなど全て無失点で終えるなど力をつけてきた。「オールドファンからすると物足りないかもしれないですけど。勝たせてあげて、自信つけて」と小林監督。トレーニングではパスワークに徹底してトライしつつ、守り切ることもできる対応力も身につけたチームは「最低限」の4強切符を獲得した。

 総体後に主力の半数近くを含む3年生16人が引退。静岡を代表するサッカーの名門校である一方、県下屈指の進学校でもある藤枝東は3年生部員が11人にまで減った。怪我や不調などもあって一時3年生のレギュラーは山田一人だけだった時期もあるという。結果にも結びつかず、3年生は悔しい時期も経験したが、それでも「この半年くらいで特に渡邉とかは伸びてきている」と小林監督が評した渡邉らが巻き返し、この日は4人が先発して勝利に貢献した。渡邉は「(引退した3年生たちと)一緒にやりたかったんですけど、寂しい気持ちが大きいんですけど。今はその3年生たちも駆けつけてくれたんで、そういう人たちの思いも含めて次も絶対に勝ちたいと思います。まだまだだと思うんですけど、全国優勝できるように。次まで3日間あるんで、しっかり見なおして頑張っていきたい」。無冠のままでは終われない。伝統の藤色のユニフォームがまずは静岡ファイナルへの切符を勝ち取る。

[写真]後半39分、藤枝東は1年生MF曽根が2点目のゴール

(取材・文 吉田太郎)
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