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[選手権予選]計11ゴールが乱れ飛んだ熊本ファイナル、2つの大目標掲げる大津がまずは県内3冠達成

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[11.14 全国高校選手権熊本県予選決勝 大津高 7-4 東海大熊本星翔高 水前寺]

 第94回全国高校サッカー選手権熊本県予選決勝が14日に熊本市の水前寺競技場で行われ、今年新人戦、総体予選優勝の大津高と初の全国大会出場を懸けた東海大熊本星翔高が対戦。両校合わせて11ゴールが乱れ飛んだ撃ち合いは大津が7-4で制して県内3冠と3年ぶり16回目となる全国大会出場を決めた。

 決勝で大量7ゴールを奪って、最後は3点差での勝利。ともにガンバ大阪入りが内定しているU-18日本代表CB野田裕喜主将(3年)とFW一美和成(3年)を筆頭に、ストロングポイントを徹底的に磨かれたタレントたちが各ポジションにズラリと揃う大本命が、前評判通りの強さを示して頂点に立った。その青いユニフォームがピッチ上で見せた抱擁の連続、雄叫びのような声は選手権の全国切符を心の底から欲していたことが伝わってくるような歓喜。野田は「自分たちは1回も選手権に出ていない代なので、自分たちの代でというのはずっと思っていた」と声を弾ませ、一美は「目標としていた3冠が達成できたのでとても嬉しかったです」とまた笑顔を見せた。県内3冠、日本一という2つの大目標を掲げてきたが、自分たちはそれを絶対に実現するんだ、という強い意志。平岡和徳総監督は「これでみんないろいろな不安から開放される。人の成長って安心感がないと生まれないんですよ。だから、今度の勝ちは新しい安定感をつくるので、才能ある選手が一気に伸びていくんですよ。ボクが(選手たちを)預かるのは1000日間しかない。1000日間の中で安心感や安定感とかをつくるためには試合へのこだわりが必要」。そのこだわりが勝利への喜びをまた大きくさせた。

 戦前、優位と見られた大津だが、思い切り良く先制パンチを撃ちぬいたのは東海大星翔の方だった。前半6分、東海大星翔はMF瀧上優(2年)がタッチライン際から左足アウトサイドで出した技ありパスを起点にFW渡邉駿(3年)が右サイドを突破。その折り返しをニアサイドのMF小野湧哉(2年)が右足ダイレクトで決めてリードを奪う。東海大星翔スタンドが沸き返ったが、試合を再開した大津の選手たちの表情には笑み。野田は「自信に溢れているというか、『何点取られても取り返してやるよ』という」心境だったことを口にしたが、漲る自信はすぐにスコアに表れた。

 10分、東海大星翔DFのクリアが乱れ、ボールは左サイドの高い位置にいたMF杉山直宏(2年)の足下へ。杉山がゴールエリアへ狙いすましたラストパスを入れると、2列目から飛び込んできたMF河田健太郎(3年)が1タッチで同点ゴールを押し込んだ。すると、15分、19分にはいずれもMF河原創(3年)が右足でゴールエリアへ放り込んだ左CKが相手の守りのミスを誘い、最後はいずれも河田をわずかにかすめる形で連続ゴール。記録上は河田のハットトリックとなる3ゴールであっという間に2点リードとした大津はさらに23分、CB眞鍋旭輝(3年)が左サイド後方から放り込んだFKがDFの頭上を越え、これを胸コントロールして抜けだしたFW一美和成(3年)が、GKとの1対1から左足で4点目のゴールを奪った。

 大津は1タッチを多用したパスワークから大きな展開を交えて攻め続け、また10番MF吉武莉央(3年)が「きょう、自分はもうチームのために走ろうと思っていたので、平岡先生が普段言っているように『上手くやるより全力でやる』っていうのを心がけて、それをチーム全体も心がけていたと思う」と語ったように、局面局面で相手以上に走る姿勢も光った。その走る姿勢で相手の攻撃リズムを崩した大津は36分にも追加点。左サイドからゴール方向へドリブルで仕掛けた一美がPAで横パスを入れると、DFよりも一瞬速く走りこんだFW原岡翼(3年)がスライディングシュートで合わせて5-1とした。前半で4点差。東海大星翔にとっては心折れてもおかしくないような展開だったが、ファインゴールによって失意から蘇る。37分、渡邉の左クロスをファーサイドのFW守田雄樹(3年)がダイビングヘッドで合わせて鮮やかに2点目を奪うと、ハーフタイムに2選手を入れ替えて迎えた後半の2分にはカウンターから守田が左足シュートを決めて2点差にまで迫った。

 東海大星翔には運も味方する。大津は11分に左サイドを吉武、一美、河田のパスワークで崩すと、最後はラストパスを杉山が押し込んで再び3点差。だが、15分、自陣中央でクリアしようとした大津DFのクリアが味方に当たり、DFラインの背後へ転がる。抜け目なく狙っていた東海大星翔FW渡邉がGKとの1対1から左足シュートを決めて再び2点差としてみせた。大歓声の中、勇気づいた東海大星翔はこの日FW起用となった10番MF矢野達基主将(2年)や小野を起点にサイドを変えながらさらなるゴールを狙う。だが、SBの攻撃参加を減らしてバランスを取った大津は、逆サイドへのパスを次々とインターセプトして攻撃を勢いづけない。野田は「あれを最初からやらないといけない」と苦笑いしたが、大津はスコアが動き続けた試合にしっかりと歯止めをかけた。

 サイド攻撃、ミドルシュートなど多彩な攻撃を見せた攻撃陣のスコアも相手GK市原悠大(2年)の奮闘によってストップしたが、大津は野田や眞鍋がルーズボールをダイビングヘッドでクリアするなど予測、出足で上回り、相手をゴールに近づけなかった。そしてアディショナルタイム、原岡の折り返しを一美がゴール。大津にこの日7度目の歓喜の輪ができたと同時に試合終了の笛が鳴った。

 日本一を目指した夏の全国高校総体では3回戦で関東一高に1-4で敗退。怪我や調整不足という部分もあったが、野田は「いい教訓というか、まだまだオマエら甘いということを教えられたと思う」と引き締める。そして一人ひとりが自覚をもって夏を過ごし、今大会では眼の色を変えて臨んでくる相手を圧倒。不運な失点があってもそれを跳ね除ける強さを見せつけた。平岡監督が「全国に大津ファンがいるので大いにやりがいがありますよ。熊本はこんなもんじゃないと表現しなければいけない」と語る全国大会での目標は日本一。吉武は「今はもう楽しみでしょうがないです。マークとかも厳しくなると思うんですけど、その中でもやっていかないといけない」と力を込め、野田は「自分たちはピッチの中だけじゃなくて外の奴らも絶対に勝つという気持ちをもっていると思う。そこの気持ちの差で優勝まで行きたいです」と誓った。実力的には間違いなく優勝候補の一角。そのタレント軍団が「気持ちの差」も見せつけて悲願の日本一を掴みとる。

(取材・文 吉田太郎)

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