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流経柏高から浪人生活を経て掴んだ王座、早稲田大・最年長DF八角の戦い

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[11.15 関東大学リーグ第22節 法政大1-2早稲田大 西が丘]

 どんなときもポーカーフェイスで淡々と仕事を全うしてきた。早稲田大DF八角大智(4年=流通経済大柏高)は優勝の瞬間も大きく喜ぶことはしなかった。試合後のスタンド前では笑顔をみせたものの、その後は優勝という成績を静かに噛み締め、誰よりも早く先を見据えた。

 現在、大学4年生の八角だが、流通経済大柏高を卒業後に一浪したため、実際は一学年上。早稲田大のなかで、ただ一人の“最上級生”にあたる。高校3年生時は「サッカーにそこまで賭けられなかった自分がいた」ことから、「サッカーだけに特化した大学にはいけないな」と決断し、浪人生活をスタートさせた。

 塾へ通い、サッカーから離れる日々が続いていたが、気がつくとランニングを始め、公園でボールを蹴っていたという。「自分はサッカーが好きなんだ」。自身と向き合うなかで、大学でもサッカーを続けることを決めると、小論文などのAO入試で早稲田大に合格。同級生から遅れること一年、早稲田大ア式蹴球部の一員となった。

 早稲田大の同期には、流通経済大柏高の一年後輩であるFW宮本拓弥(4年=流通経済大柏高)もいる。それゆえ、入学当初は「一個下にタメ口を聞かれているんだ……」と思うこともあった。だがそんな思いもすぐに消え、純粋に同期として受け入れると切磋琢磨する毎日が始まった。

 大学2年生時には「自分でも驚きました」と早くも主力の一人に定着。順調にキャリアを重ねていった。大学2、3年生時は「純粋にサッカーを楽しんでやっていた」。しかし、4年生になると状況は一変する。

 伝統ある早稲田大の最上級生。その重みはプレッシャーとなり、八角にのしかかった。シーズン初め、4月の練習から吐き気に見舞われたのだ。怪我明けでベンチに座る日々、「チームが結果を残せていない中、貢献できない自分への悔しさや憤り。最下位に落ちたチームを何とかしないとと思っても、力になりきれず、思い詰めたところが吐き気につながったのかもしれない」と振り返る。

「1年から3年で見ていた景色と4年生になっての景色は全く違っていて。4年生になってからは、人生で一番苦しい時期でした」

 しかし、その苦しみは誰にも見せなかった。“異変”に気がつかなかったという主将のDF金沢拓真(4年=横浜FMユース)は「弱みを見せないタイプだから」と八角について語る。チームの全員が年下ということもあり、“最年長DF”は人知れず多大な責任感を負ってプレーを続けた。

 4月から続く身体の不調は11月になった現在も収まらず。この日の法政大戦でも、「プレーに集中したくても弱い自分がいて、そのせいであまり納得いくパフォーマンスはできなかった」。万全なコンディションではなかったが、左サイドで攻守に貢献。チームは2-1で勝利すると、関東制覇を成し遂げた。

「ここまで苦しみながらも結果を出せたのも、応援したり、支えてくれた周りの人の存在があってのもの。自分にこのままじゃ終われないと強く思わせてくれた」

 今季の早稲田大は22戦19失点とリーグ最小失点を誇る。その左サイドを担う八角は、チームのなかで誰よりも危機察知力に優れているのかもしれない。チームメイトが得点を決めたときも、嬉しさよりも「危機感を感じる」と言い、「点を取ってくれた分、守る責任感は増してくる。DFとして失点しないのが一番大事」と力を込めるとおりだ。最終ラインに、新井純平(3年=浦和ユース)、奧山政幸(4年=名古屋U-18)、金沢とタレントが揃う早稲田大。そんななかで八角は、一味違った異質の輝きをみせている。

 関東制覇を遂げ、少し肩の荷も降りたかに思うが、全日本大学選手権(インカレ)も控えていることから、八角は「ここからの方が苦しい」と苦笑い。それでも、「日本一になって、喜びを抑えられないような自分になるために。インカレへ向けて準備できれば」と誓う。終始、固い表情で話していたDFだったが、このときばかりは未来を見つめて微笑んだ。

(取材・文 片岡涼)
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