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[Jユースカップ]今大会で示した「成長」こそが勝因、浦和ユースが初優勝!

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[11.15 Jユースカップ決勝 名古屋U18 1-2 浦和ユース ヤンマー]

 11月15日、Jユースカップ第23回Jリーグユース選手権決勝がヤンマースタジアム長居にて行われ、浦和レッズユースが2-1で名古屋グランパスU18を撃破。初めての栄冠に輝いた。

「硬かったですね」と浦和・大槻毅監督が苦笑を浮かべ、「ホントに『硬いな』という感じで、変なミスが多かった」とゲームキャプテンの渡辺陽も首をひねる立ち上がり、名古屋側に最初のゴールが生まれる。最終ラインから始まる速いパスを起点に左サイドを抜け出したDF吹ヶ徳喜のクロスに、FW北野晴矢がワントラップから鮮やかにボレー。「この大会1点も取れていなかったので、絶対に決めたかった」と語る男が見事にファーストゴールを突き刺した。

 これで主導権は完全に名古屋。「入りはすごく良かった」(吹ヶ)という手ごたえのある内容で浦和を押し込む。「ボールを奪ってもすぐに引っかけられて、落ち着くところがない」(大槻監督)浦和は、準決勝までに観られた激しいプレッシングからシンプルに攻め切る“らしさ”もまるで観られない。「相手のロングボールが簡単にサイドで収まってしまうし、プレスをかけてセカンドを拾ってという自分たちらしさが出せなかった」(川上開斗)。戦術的にも、神出鬼没の動き出しを見せる左MF深堀隼平を捕まえようとして穴を空けてしまうことが多く、「中盤を5枚に増やそうか迷った」(大槻監督)ほどの混乱ぶりだった。

 もっとも、ここで終わらないのが浦和ユース成長の証。序盤の混乱を何とか乗り切ると、浦和のもう一つの武器である積極的なドリブルが増えてくる。「縦への仕掛けは僕らの武器だし、仕掛けることでセットプレーのチャンスも増えてきた」(川上)。浦和が持ち直していく流れの中で、27分にターニングポイントとなるプレーが生まれる。浦和FW新井瑞希を倒した名古屋DF池庭諒耶に2枚目のイエローカードが提示され、退場になってしまったのだ。

 ここからゲームの流れは一変する。直後の30分に新井のロングループシュートがバーを叩いたこぼれ球を渡辺が頭で押し込んで同点とすると、さらに前半終了間際の45分だった。「セットプレーを重ねていれば、ウチには小木曽(佑太)がいるんで。いつかは得点できると思っていた」と、チームメートから抜群の信頼を置かれるCB小木曽佑太が得意のヘッドでみせる。MF影森右京のCKから頭で合わせると、これが相手DFに当たってゴール。記録上はオウンゴールと判定されたものの、実質的には完全に競り勝った小木曽の3試合連続ゴールだった。

 一人少なくなって、なおかつビハインドでハーフタイムを迎えた名古屋。「あの2点目が……」と高田哲也監督が嘆いたのも無理はないが、絶体絶命だからこそ割り切った。新たに組み上げたゲームプランは、「後半の半分は我慢する。残りの半分で勝負をかける」(同監督)というものだった。

 その後半、名古屋は心が折れていないことを力強く示す。「誰一人としてあきらめないで最後まで戦えた。この大会が始まる前の僕たちだったら、どんどん失点して試合にならなくなってしまったと思う。でも今日はみんなで力を出し切れた」(吹ヶ)。我慢の展開から、最後は後ろを3バックに切り替えて、攻撃にすべてを懸ける。「『刺すか、刺されるか』。それだけだった」(高田監督)。一方、浦和は「早く3点目を決め切ってラクになりたいという思いが裏目に出た」(大槻監督)。双方にチャンスが生まれるオープンな流れの中で、名古屋にもFW森晃太、DF横山聡大の決定的シュートがあったが、いずれもゴールならず。結局、スコアは2-1から動かず、浦和が栄冠に輝いた。

 勝負を分けたのは一つの退場劇だったが、大槻監督は「ラッキーだとは思わない」と明言する。「あの時間帯、仕掛けに行っていたからこそ最初のイエローカードが出たし、(退場場面も)かつての新井だったら競りに行っていない。あのシーンであれを出したのは彼が見せた成長で、だからあの一連のプレーは必然だったと思います」と教え子たちが、今大会で示した「成長」こそが勝因だったと総括した。

(取材・文 川端暁彦)
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