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[MOM352]鹿屋体育大FW片井巧(2年)_「やんちゃボウズ」が大舞台で輝く

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.8 全日本大学選手権1回戦 福山大1-5鹿屋体育大 柏の葉]

 流れが変わるという瞬間がある。それを未然に防ぐのもベンチワークだ。前半終了間際に1点差に詰め寄られた鹿屋体育大は後半開始と同時に思い切って動く。青木竜監督は中盤の攻防に不満を感じていたこともあり、システムを変更。そしてスピードのあるFW片井巧(2年=藤枝東高)を投入した。

 采配は的中した。後半開始と同時に勢いよく攻めようとする福山大に思うようにボールを持たせない。逆に大きなサイドチェンジや持ち前の走力が武器となり、福山大の体力を奪っていく。そして狙い通り片井が利いてくる。1点を追加して迎えた後半22分にはスルーパスで裏に抜けて加点。同33分にはゴール中央から豪快にゴールネットを揺らしてみせた。

 片井は高校時代は藤枝東高のエースとして活躍。3年時の清水桜が丘との高校選手権静岡県大会決勝では決勝点を挙げるなど、大会MVPと得点王を獲得した。全国的にも名前を売ったが、大学は関東ではなく、九州リーグの鹿屋体育大を選択。「関東で中間のチームに行くよりは九州でトップで全国行こうと思った」。しかし鹿児島の地では厳しいレギュラー争いが待ち構えていた。

 2年生になった片井に青木監督はBチーム行きを命じた。理由は精神面。自分でも「ちょっと自分が良くないプレーをしたり、使われてないなと思うと表情に出ちゃう。試合中にはなるべく出さないようにしているのですが、乗っているときと、乗ってないときの差が激しいんです」と認めるほど、課題は明確だ。ただ、この措置は青木監督の期待の表れ。「やんちゃボウズ」と表現する片井の性格を把握したうえで、「言うこと聞かないことが多くて手間がかかってますけど、学生の教育の1つ」と敢えて突き放したのだ。

 監督の期待通り、後期リーグからはAチームに復帰。同学年のFW向高怜(2年=鹿児島城西高)や、FW森川和命(1年=熊本ユース)と切磋琢磨を続け、後期はレギュラーとして試合に出続けた。1回戦はスーパーサブ的な起用となったが、2回戦以降は先発出場も十分考えられる。

 同世代のライバル意識も強い。FWの争いはもちろん、プライベートでも仲がいいと話すMF松田天馬(2年=東福岡高)は意識する存在。「今は天馬の方がいろいろチヤホヤされている。この学年は天馬だけじゃないというところを見せていかないといけない。ライバル意識というか、天馬を超えるくらいの気持ちで頑張りたい」。ラッキーボーイの出現も重要になる短期決戦。「やんちゃボウズ」の存在は貴重だ。

(取材・文 児玉幸洋)
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