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[MOM356]札幌大MF大友一就(4年)_「著しい問題」の落とし前?懺悔の劇的弾

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.8 全日本大学選手権1回戦 九州産業大2-3札幌 町田]

 懺悔のゴールだった。札幌大(プレーオフ)は九州産業大(九州3)に3-2で勝利。セットプレーで奪った3点で逃げ切ると、初戦突破を果たした。ゲームキャプテンを務めるMF大友一就(4年=旭川実高)は後半アディショナルタイム3分の決勝点を含む2得点の活躍をみせた。

 セットプレーで3得点が生まれたが、試合後に札幌大の指揮を執る木島敦コーチは「著しい問題があったので、今回はセットプレーの練習は一度もやっていない」と明かした。その理由はまさかの“不祥事”にあった。

 札幌大は11月30日に上京し、都内のグラウンドで練習を行ってきた。そんななか、選手たちは宿舎のホテルで誕生日の選手を祝うために大騒ぎ。偶然にもフロアの廊下にいた木島コーチは「何を考えているのか、バカすぎる。他のお客さんのことを考えないのか」と激怒した。

 これによりコーチは「競争と緊張感を持たせるため」にセットプレーや戦術練習などを一切せず、「誰が出るか分からない状況」をつくることを決断。初戦の3日前、5日に行った東洋大との練習試合では「勝たなかったら4年生はインカレないから」とまで追い込んだという。

 自らも一緒になって騒いでいたという大友は「怒られるのも当たり前だなと……」と振り返って苦笑い。合宿前には下級生が問題を起こしていたこともあり、「最高学年がこんなことをやってどうするの。どう落とし前をつけようか」と4年生でミーティングを行った。反省する中で迎えた東洋大戦は0-0のドロー。辛うじて首の皮一枚がつながった大友ら4年生は「誠意はみせられたかな」と言う。

 そして、迎えた全国大会。セットプレーや戦術練習はしていないため「調整はできていない酷い状態だった」とコーチは明かす。それでもチームは粘りをみせた。前半5分に失点するも、同17分にMF岡部航大(3年=駒大苫小牧高)が直接FKを沈めて同点。同30分にCKから大友のゴールで逆転に成功した。後半15分には2-2に追いつかれるも、終了間際のアディショナルタイム3分には再びCKから大友がヘディングシュート。「延長戦もあるから後ろに引いたほうが……」とよぎったというが「最後だからいこう」とゴール前へ走りこむと一撃を叩き込んだ。これが決勝点となり、札幌大は3-2で競り勝った。

 劇的な決勝点。ゲームキャプテンとしての立場を守る一撃に大友は「たまたま僕のところにきたので」と言うが、「入ったと思っていなくて、見てみたら決まっていた。やったー!って思いました」と頬を緩ませる。「まとまりがないチーム」と自チームを言い切るが、「それも一人ひとりが強い考えを持っている良さがあるということ。いざサッカーになると一つになっているので」と前向きに捉えた。

 2回戦の相手は総理大臣杯王者の関西学院大だ。“問題”を起こしてしまったものの、1回戦の劇的勝利でチームの雰囲気は上を向いた。コーチは「呉屋くん(大翔)にチャレンジしたい」と言い、大友は「圧倒的に劣勢になるかと思いますけど、一つになって戦っていきたい」と先を見据えた。

(取材・文 片岡涼)
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