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来季争奪戦必至、「日本のサッカーを変える」とJスカウト陣注目の大器!! 国士舘大FW松本孝平

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[12.10 全日本大学選手権2回戦 桃山学院大2-3国士舘大 BMWス]

 異色の経歴を誇る大型ストライカーに熱視線が注がれている。国士舘大は10日に行われた全日本大学選手権(インカレ)の2回戦で桃山学院大に3-2で勝利した。この試合でJ複数クラブから注目されているFW松本孝平(3年=藤沢清流高)は、まずは1得点を挙げた。

 今季の関東大学リーグで19戦17得点を挙げて得点王に輝いた松本だが、たった1年前までは無名の存在だった。藤沢清流高を卒業後に国士舘大に進学するも、サッカー部には所属せず。「普通の大学生をやっていました」という。夢であった消防官になるために体育学部で学んでいた。

 それでも小学校1年生から始めたサッカーは続けていた。高校時代の友人たちと地元でクラブチームを創設し、県3部でプレー。しかし数か月が経つと、「周りがおじさんのチームばかりで、自分たちは若くて走れちゃうからおもしろくなかった」。そこで「ちょうどいいじゃん」と思いついたのが関東大学1部リーグに所属するサッカー部への入部だった。

 細田三二監督の元へ入部したいと直訴しにいくと「国家試験もあって忙しいけど、大丈夫か?」と心配された。松本の学ぶ体育学部スポーツ医科学科は、消防官などの国家公務員を目指すための学科。実習が多いことから部活動をやる人は少なかった。それでも迷うことなく入部を決断。大学1年生の冬、11月に正式に国士舘大サッカー部の一員となった。

 まずはCチームの一番下であるC3チームからスタート。一つ先輩のFW木下ロベルトがCチームからトップチームへ登りつめたのを刺激に努力を続けるとIリーグで活躍。2015シーズン開幕前に悲願のトップチーム入りを果たした。

 そこから「上がったからには試合に出たい」という強い気持ちでアピールを続けると、第3節・駒澤大戦(2-1)で先発起用される。このチャンスをつかみ、2トップの一角に定着すると、第6節・桐蔭横浜大戦では今季初ゴールを含む2得点の活躍でチームの6-1勝利に貢献した。「得点王になれるなんて思っていなかった」というが、シーズンが終わってみれば、17得点の活躍で得点王となった。

 結果を残した2015シーズンも終盤に差し掛かり、思い描いていた未来像が変わり始めた。松本は将来について「前は将来サッカーをすることは考えていなくて。(大学卒業後も)身体が動かせればいいかなと思うくらいだった」と明かしながら、「それでも自分が通用するようになって、段階を踏んでいくうちに道が開けた」としみじみと語る。

「人生の半分以上はサッカーをやってきたので。大学に入ったときの目標(消防官)よりも、今はそっち(サッカー)の方が大きいですね」。見えてくる景色が変わると、消防官からJリーガーへ夢も形を変えた。

 186cm・86kgのサイズがありながらも、スピードあるストライカーを巡っては、既に複数のJクラブが興味を示しており、4年生となる来季は争奪戦が繰り広げられることになりそうだ。複数のJクラブスカウトは「荒削りな部分がまだ多い」と指摘しつつも「楽しみな選手」と口を揃える。「あの身体であのスピード。順調に成長すれば、日本のサッカーを変えてくれる選手。日本の宝となり得る選手」とまで称えるチームもいる。「間違いなく争奪戦になる」と早くも各クラブが戦々恐々だ。

 松本山雅FCの江原俊行スカウトは「名前が名前だけにぜひ来て欲しい」と冗談を交えつつ、「山雅のスタイルに合う選手」と早くも“ラブコール”を送る。現時点では、湘南ベルマーレへ練習参加したのみだが、松本は「みんなとってもやさしくて、楽しかった」と振り返った。また、リオ五輪を目指すU-22日本代表チームのスタッフも松本のプレーを注視しているという。

 無名の存在から、一躍“大学サッカーの顔”まで登りつめる勢いの松本。しかし、国士舘大の細田監督は「まだまだ甘いですよ」と手綱を締める。「あのサイズで動ける選手はなかなかいませんけど、まだまだ。ここからJクラブの練習参加などで刺激を受けて成長していければ。あくまでもおごらないように」と話すとおりだ。

 指揮官の心配も他所に、松本自身は冷静で浮き足立つ様子はない。「周りにプロになった知り合いがいなくて、よくわからなくて」と戸惑いをみせるFWは「自分はまだまだまだまだ。全然です」と恐縮しきり。「自分は目立つプレーで点を取ったり、一人で点を取ったりはできない。有名なクラブでやってきたわけではないので、雑草魂を忘れないでやっていきたい」と表情を引き締めた。

(取材・文 片岡涼)
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