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[大学選手権]「地方でもできるんだ」と示すはずが…最多22年連続出場の高知大は4失点敗退

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[12.10 全日本大学選手権2回戦 早稲田大4-0高知大 BMWス]

 “地方の雄”として出場校中最多の22年連続で冬の日本一決定戦に挑んだ高知大(四国)だったが、早稲田大に0-4の零封負けを喫し、2回戦で大会を去ることになった。

 2010年に行われた第59回全日本大学選手権(インカレ)では、準々決勝で当時の関東第1代表だった明治大を2-0で撃破。全国4強入りも果たした実力者だったが、再現はならなかった。

 野地照樹監督は「あの時の4年生は明治だろうがなんだろうがやってやるというメンタルがあった。そういう話を今の子たちにもして『恐れるな、戦え』と。『男気をみせろ』と言っていたんですが。逆に『そんな甘くないよ』と『男気はこういうものですよ』と見せられた感じになってしまった」と振り返る。

「22年連続で全国へ出ているのに緊張して何もできないなんて。我々は地方から来て、全国大会を楽しみにサッカーをしているわけで。力を出し切れないで敗退するのは寂しい」

 前半15分の失点が分かれ目だった。高知大のプランとしては、4年生3人が揃った経験豊富なDFラインで守備では耐え切ることが前提。無失点あるいは1失点で凌げば、勝機はあるとみていた。しかし、主将のDF西岡大志(4年=初芝橋本高)のクリアミスからボールを奪われ、早々と失点。

 指揮官が「あの失点がしかもキャプテンのクリアミス。フリーで止めても良かったし、GKにバックパスしてもいいし、何でもできるところでのクリアミスだった」と悔やみ、「もちろん勝つつもりでいたし、勝てない相手ではないと思っていた。でもあの失点でびびったんでしょうね……」と選手たちの気持ちを推し量った。西岡主将本人は「あの失点がなければ……僕のクリアミスからだったので完全に僕のせいです」と背負い込んだ。

 とはいえ、結果は0-4だったものの数字ほどの力量差があったわけではない。西岡も「こんな点差が開くゲームじゃなかった」と言えば、相手の古賀聡監督も「いつやられてもおかしくなかった」と振り返るとおりだ。早々と失点した後も、諦めずに果敢に仕掛けた高知大は、4失点後も足を止めることはなかった。

 0-4になってからは、ベンチ入りしていた4年生を次々と投入。前半34分から出場したMF曽根友祐(4年=清風高)やMF西岡愛仁(4年=愛知松蔭高)らがドリブル突破から敵陣へ切れ込んでいった。「早く1点を追いつければ変わるかなと思っていたが4失点。最後はベンチの4年生が出て、4年生の引退試合になっちゃったね」と苦笑した野地監督だったが「ただ1点を取りにいけと。それは伝わってしっかり攻めてくれた」と最上級生を労う。

 試合後、スタンドの前で挨拶した西岡主将は涙で声を詰まらせながら、「3年生以下はこの試合を見て感じるものや響くものがあったと思う。次に生かして欲しい。惜しいにもほどがない試合で申し訳ない。1年間ついてきてくれてありがとうございました」と頭を下げた。「いかに4年生がしっかりしていないとダメなのか。悪い例として、反面教師として見てくれれば。次に活かしてくれることを願ってます」。

 22年連続でインカレに出場しており、全国大会の経験値ではトップクラスにあたる高知大。しかし、この日の試合では積み重ねてきた経験をピッチ上で活かすことはできなかった。「全国大会というのは楽しみたい。勝ったら楽しいんだぞと。びびったりそんなことはせず。『なんや高知大はやりにくい相手だな』と。地方でも出来るんだというのを見せられれば良かったんですが……」と野地監督は寂しく笑った。

 4年生は無念な思いを胸に抱え、大学サッカーを涙で終えた。この経験を無駄にせず、再び全国の舞台で“高知大あり”と見せられるか。全ては後輩たちに託された。

(取材・文 片岡涼)
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