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[プレミアリーグ参入戦]観衆魅了の110分間!「公立の雄」大津が静岡学園との好バトル制し、プレミア復帰!

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[12.13 高円宮杯プレミアリーグ参入戦2回戦 静岡学園高 2-3 大津高 広島一球]

 観衆沸かせた名勝負は「公立の雄」が制す! 高円宮杯U-18サッカーリーグ2015 プレミアリーグ参入戦2回戦で静岡学園高(東海1、静岡)と大津高(九州1、熊本)が激突。プリンスリーグ東海とプリンスリーグ九州をいずれも圧倒的な強さで制した両チームが、互いにそのスタイルを存分に発揮した名勝負は延長後半アディショナルタイムにFW原岡翼が決めた決勝点によって大津が3-2で勝った。「公立の雄」大津は13年以来となるプレミアリーグ復帰を果たした。

 2-2で後半を終えた時点でスタンドから大きな、大きな拍手が両校選手に送られていた。高校トップレベルの強豪同士が高いスキルを発揮し合った90分間を讃え、「まだ20分間もこの勝負を見られる」という期待の拍手。延長戦の末に敗れた静岡学園だが、川口修監督は「これだけ見ている人がワクワクするサッカーを静学、大津両方のチームで出せたのは素晴らしいこと。勝ちにこだわるだけじゃなくて、自分たちのスタイルで勝負して、スタンドに来た人全員を満足させられたと思う」と胸を張り、大津の平岡和徳総監督も「将来性のある子供たちがピッチで22人出た。こういう試合が高体連ならではのいい選手をつくっていけると思いますよ」。ともに育成に定評のある両校が110分間の戦いで力を出し合い、個々が成長を遂げた一戦。「ボクらも見ていて面白かったです」と語った九州の名将は勝利したこと以上に、高体連の両校が繰り広げた名勝負に満足そうな表情を浮かべていた。

 試合は静岡学園の多彩なアイディアとテクニック、大津の1タッチパスなど高い技術と判断、相手に触らせないでシュートまで持ち込む持ち味がぶつかり合った。先制したのは大津。前半10分、左サイドからPAに入った10番MF吉武莉央がシュート体勢からクロスボールを選択する。ファーサイドのMF杉山直宏がダイレクトで合わせると、GKが弾いたボールをFW藤山雄生が押し込んだ。ケガ上がりでベンチスタートのU-18日本代表FW一美和成(G大阪内定)に代わって先発した2年生FWのゴールで大津がリードを奪った。

 前半押し気味に試合を進め、FW加納澪主将やMF旗手怜央が決定機を迎えた静岡学園だが、追いつくことができなかった。それでも後半開始からCB鹿沼直生をボランチに上げて中盤の構成力を高めた静岡学園は10分、左コーナー付近から左SB荒井大が狭いDF間を射抜くパスを旗手に通す。すると、背番号10は1対1から細かい緩急をつけた仕掛けでDFを振り切り、左足シュートを叩き込んだ。このゴールで静岡学園の勢いが増したが、大津も10番が魅せる。18分、MF河原創が高い浮き球のパスをDFラインとGKとの間に入れると、落下点に入った吉武がボールの勢いをゼロにする超絶トラップ。これでGKと1対1となった吉武が冷静にゴールへ沈めて2-1と勝ち越した。

 静岡学園は22分にMF薩川淳貴の突破から加納がクロスバー直撃のヘディングシュート。直後に旗手がDFを外して放った左足シュートはDFにクリアされたが、27分にも旗手が左サイドでDF3人を抜き去りシュートを打ち込む。一方の大津もカウンターからビッグチャンスを迎えたが、突き放すことができない。迎えた33分、静岡学園は荒井の左CKをニアサイドの鹿沼が頭で合わせると、クロスバーをかすめたボールをゴールライン上の大津DFが弾く。ゴール前で混戦となったが、その前に鹿沼のヘディングシュートがゴールラインを越えていたという判定で同点となった。

 ロングボールで相手を押し下げながら、空いたスペースを1タッチパスや吉武、原岡らの個で巧みに攻略する大津に対し、静岡学園もPA付近までゆっくりボールを運ぶと、旗手や薩川、MF小宮嶺がドリブルスキルを存分に発揮。薩川が左サイドで魅せたリフティングからDF2人の間へ割って入る動きなど、特に後半は静岡学園の選手たちがドリブルで観衆を何度もどよめかせる。対する大津も右SB坂田直樹のミドルシュートやCB眞鍋旭輝のヘディングシュート、このこぼれに反応した原岡のシュートなど静岡学園ゴールを何度も脅かすが、ゴール前で必死に身体を張る相手を突き放すことができない。

 45分、大津は縦へのドリブル突破でDFの前に入った原岡がPAで倒されてPKを獲得。だが、右足シュートは右へ跳んだ2年生GK山ノ井拓己が完璧にセーブして試合は延長戦へ持ち込まれた。延長前半3分、カウンターから静岡学園がチャンスを迎えたが大津は好守で阻止。大津は後半37分に投入されたDF中野夏輝が「よく仕事しました」(平岡総監督)と相手エース旗手の動きを止め、U-18日本代表CB野田裕喜主将(G大阪内定)を中心としたDF陣もドリブルの脅威を未然に防ぐため、PA近くに入られる前に対応する。また再三好守を見せたGK前田勇矢の奮闘など必死の守りで3点目を許さず、逆に後半5分には吉武がクロスバー直撃の右足ミドルを打ち込んだ。そしてPK戦突入直前の延長後半10分、大津は平岡総監督が「PKだけ蹴らせようと思って」と説明した一美とGK中村圭佑を同時投入。総力戦で白星を勝ち取りに行った。するとその一美のキープからSB大塚椋介の獲得したCKが決勝点を生み出す。延長後半アディショナルタイム、大津は河原が左CKを蹴りこむと、ファーサイドでDFと競りながらゴールエリアへ飛び込んだ原岡が右足ダイレクトで試合を決める一撃を押し込んだ。

 局面局面で観衆を沸かせるようなプレーが何度も出ていた攻防戦を制した大津は、高体連チームとしては初となるプレミアリーグ復帰。「公立の雄」がプレミアリーグの舞台へ戻ってくる。前回戦った13年は厳しい戦いを強いられて最下位。相手を警戒するあまり、自分たちの良さを発揮できなかった。来季は野田や一美らが抜けるが、この日、激闘を勝ちきる経験をした選手たちがどのように成長して春を迎えるか。プレミア切符をプレゼントした野田は「残留してほしいです。こういう(静岡学園のような)相手とやることで成長できると思う」と期待し、平岡総監督は「あまりJクラブをリスペクトし過ぎたらいけなくて、きょうも向こうの良さがあるし、うちの良さがある。来年はしっかりと子供たちのストロングポイントをリーグの中で成長させるようにしたい」。2週間後に開幕する選手権へ向けて勢いもつける勝利。野田は「思い切ってやるだけ。きょうみたいに全力でみんなが諦めずに泥臭くやれば結果はついてくると思うんで、初戦、前橋育英戦をしっかり全力で勝ち切って波に乗って行きたい」。この日、全国準決勝、決勝でもおかしくないような激闘を制して目標を達成した大津が、次は全国制覇に挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
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