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福岡J1昇格の勢いを五輪予選へ…亀川「周囲の厳しい目をモチベーションに」

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 DF亀川諒史にとって今季は飛躍を遂げるシーズンになった。今季より湘南ベルマーレからアビスパ福岡にレンタル移籍すると、キャリアハイのシーズン38試合に出場。J1昇格プレーオフを勝ち上がった福岡躍進の大きな原動力となった。そしてもう一つ、亀川には来年1月に開催されるリオデジャネイロ五輪最終予選(AFC U-23選手権)での大仕事が残されている。22歳が今の思いを語った。


3連敗でチームが持った危機感

―プレーオフを制してのJ1昇格おめでとうございます。決勝は劇的な展開でしたね。
「結果が出てホッとしています。先制されて負けてもおかしくない状況でしたが、最後はチームの力が上回ったんだと思います。プレーオフは3位のチームがこれまで勝ち上がったことがないというジンクスがメディアとかでも結構言われていたので、耳には入っていました。個人的にそれほど意識することはなかったのですが、覆すのは楽しみでした」

―今季を振り返ると開幕3連敗を喫するなど、苦しいシーズン序盤だったと思います。
「開幕3連敗で始まって、最下位。サポーターの期待を裏切ってしまいました。でも最後の結果を見てみれば、今はその3連敗が笑い話になればいいなと思っています。僕は2連敗したあとにU-22日本代表(AFC U-23選手権予選)に行ってしまったのですが、3連敗のあと、選手だけで話し合ったというのも知ってました。チームに戻ると、ひとつになったというのを感じたんです。チームに危機感があったんだと思います。みんな、いくら監督が言おうとも、結局は自分たちがやらないといけないよねって自覚を持ったんだと思います」

井原正巳監督が就任するということで期待が集まった中での開幕3連敗でした。
「僕自身も移籍する時には井原さんになるって聞いていました。すごい名の知れた人でしたし、守備の部分では成長できると感じて入団しました。一緒にやってみても細かいところを突き詰めてという人だなと感じました。3連敗してから井原さんが強調しだしたのが、まずは守備からというのをキーワードとして言われていました。チームでしっかり守備をして、奪ったら全員で出ていくというようなサッカーを目指していました。守備からという一体感が強くなったと思います」

―亀川選手は湘南でチョウ・キジェ監督の指導も受けています。違いは感じますか?
「チョウさんはどちらかというとメンタル面のことを強くいう人。井原さんは戦術面を強くいう人ですね。一番思ったのは、試合前が真反対なんです。井原さんは一週間練習してきたことを試合前のミーティングで確認するんですけど、チョウさんは戦術とか軽く言って、あとは気持ちを作る。モチベーションを上げることが多いですね。指導面では、井原さんはコーチに任せるところは任せてというバランスを見ながらやってくれます。選手との距離も近すぎず、遠すぎずという感じで。個人的にはポジショニングの部分をよく言われます。少しでもこれでいいやって気持ちを持つなと言われています」

―今季はリーグ戦38試合に出場するなど飛躍のシーズンになりました。
「この世界は試合に出てナンボだなと改めて感じました。あとは試合に出ることで責任感が増しました。自分自身、アビスパに来る前の3年間は、試合に出たり出なかったりだったので、出ない人の気持ちもすごく分かる。その人たちの気持ちを背負わないといけないと思ってプレーしています。でもゴールがなかった。シーズン中はアシストも1回だけでしたし、目に見える結果を出すことは出来なかった。そこが課題かなと思います。自分の中では全く満足は出来ていません」

―ただ、すぐにチームに馴染めたことは大きかった。
「アビスパというチームがすごくコミュニケーションが取りやすいチームだったことが大きいです。個人的にはグイグイ行くタイプではないのですが、そこに関してもすぐに行けたので。それはチームのみんなに感謝しています。来年についてはいろいろ話し合っている状況ですが、福岡に残るにしても、湘南に戻るにしても両方J1なので、しっかり考えたいです」


周囲の厳しい目をモチベーションに

―いよいよ、リオデジャネイロ五輪最終予選(AFC U-23選手権)が来月13日から始まります。率直な今の心境は?
「初めて代表に選ばれた時からオリンピックに行くというのは大きな目標でした。いつもはアビスパというチームを背負ってますけど、次はもう一つ大きな国を背負わないといけない。でも楽しみたいという思いは日に日に高まっています。メンバーに選ばれるという可能性がある以上、絶対に狙わないといけないと思っています。そこで活躍することが出来れば、個人的な大きな財産になる。そこは自分の中で大きな目標です」

―中東・カタールでの戦いというのもポイントになります。
「中東には何回か行っていますが、やはり熱さは毎回感じるところです。環境面もそうでし、食事の面でも日本は恵まれてるなと感じます。ただ遠征を重ねるたびに経験が積み上げられているので、そこに関しては慣れが必要かなと思います。それよりも、いかに日本の特長が出せるかだと思っています。連携の部分はある程度出せると思っているので、心配はしていませんが、やはり勝負を分けるのは気持ちの部分だと思います。精神面が海外の選手には劣ってしまう部分があると感じます。そこは個人個人の問題だと思うので、それぞれが自覚を持たないといけないと思います」

―ただ、J3での戦いや練習試合でも思うような結果が出せていない代表に心配の声も多いです。
「そうですね。記事とかでもいろいろ書かれている通り、周囲の目が厳しい。でもみんなそういう目を覆そうと、プレッシャーに感じるのではなく、モチベーションにしているというのはあります。単純なことで、勝つ負けるで評価されることだと思います。どれだけ綺麗にやろうとしても負けてしまえば意味がないですし、どれだけやられても1点取って勝てば勝ちだと思います。結果だけを求めないといけない。手倉森誠監督も気持ちの部分でやらないといけないというのはよくおっしゃっている。そのためにも気持ちを見せないといけないなと思っています」


ピッチには左足から入る

―亀川選手と言えば、今季の福岡では左サイドが主戦場でしたが、両サイドが出来ることが特長だと思います。
「そこは高校のときからそうでしたし、両方できるのは強みです。どちらかしか出来ないという選手よりも選択肢が増えるのはいいことだと思っています。ほかの選手にないところなので、自分を出していかないといけないのかなと思います」

―現在履かれているアンダーアーマーの「クラッチフィット」が、両足のキックの正確性をサポートしているようですが、スパイク選びでポイントにしていることはありますか?
「一発目履いた時のフィット感を重視しています。そこはずっと変わりません。今は『クラッチフィット』がベストだと感じています。アンダーアーマーのスパイクを履くようになったのは、プロ1年目の終わり頃。いい関係が築けているので、今後も使っていきたいです」

―ゲンを担いでいることとかありますか?
「ピッチに入る時は常に左足から入るようにしています。プロになってから、自然とそうなりました。意識的にしているというか、自然となっているのを、『あっ左や』みたいに感じてからです。五輪最終予選でも『クラッチフィット』とともに左足からピッチに入るので、注目していてください(笑)」

―五輪最終予選、そしてリオデジャネイロ五輪をどんな大会にしたいですか?
「日本の中でやっているのと、国を背負ってやるのは、やはり違う経験になると思います。今のA代表を見ても、4年前の五輪代表の人たちがオリンピックを経験して入っている。自分の中では選ばれるだけでなく試合に出ないといけないと思っているので、結果を残すことが大きな目標につながるのかなと思っています」

(取材・文 児玉幸洋)
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