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[大学選手権]関学大DF高尾、名古屋U18育ちのルーキーが過ごした飛躍のシーズン

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[12.19 大学選手権決勝 阪南大0-4関西学院大 駒場]

 目まぐるしい1年だった。関西学院大(総理杯/関西1)は全日本大学選手権(インカレ)決勝で阪南大に4-0で勝利すると、初優勝を果たした。関西学院大の先発唯一の1年生、DF高尾瑠(1年=名古屋U18)は右SBでプレー。90分間をそつなくこなし、優勝へ貢献した。

 名古屋グランパスU18出身の高尾。高校2年生時にサイドハーフからサイドバックへポジションを変え、現在に至る。大学進学の際には「呼ばれたのがここしかなかったので」、関西学院大へ進んだ。

 本人はルーキーイヤーから試合に出られるとは「全然思っていなかった」というが、今年2月10日に初めて関西学院大の練習へ参加すると、約3週間後の3月上旬には主力組に定着。まさかの展開に「本当にびっくりしました」と振り返る通りだ。

 そして関西学生リーグが開幕。4月5日に行われた第1節・大阪産業大戦(5-0)で先発デビューを果たした。前期リーグの序盤戦こそ、ただただプレーするのに必死だったが「本当に最初は危なかった。全然上手くいかなくてやばかったんですけど、どんどん慣れてきた」というように、場数を踏むたびに手応えを得ていった。

 コンスタントに出場を重ねると、関西選手権制覇、総理大臣杯優勝、関西学生リーグ優勝へ貢献。リーグ戦の活躍を認められ、関西学生アウォーズでは新人賞も受賞。181cmの高さを生かした守備や、果敢な攻撃参加はチームの武器となった。

 この日の決勝戦では、対面の左SBが名古屋U18時代の1学年上の先輩で「僕が高2のときの高3で一番上手いと思っていた人」というDF金来遠(2年=名古屋U18)だった。だからこそ、対戦を「ちょっと意識していました。上手いからバトりたいなと思っていました」と言う。先発が発表された直後のスタジアムでは金と顔を合わせ、「出るんすね」「出るやん」とわずかばかりの会話もした。

 しかし試合が始まってみると、高尾が攻め上がるシーンは少なく、金とやり合う場面もほぼなかった。準決勝・明治大戦では積極的な攻め上がりから得点を決めていただけに、攻撃参加も期待されたが見せ場のないままに終わってしまった。

 対面した金のプレーには刺激を受け、「普通に上手かった」と舌を巻いた高尾だが、自身は不完全燃焼だったようで、「今日はもう全然だめです。身体が動かなくて前にいけず、攻撃も良くなかったと思います」と肩を落とした。それでも攻撃参加は少なかったものの、守備ではしっかりとした対応をみせ、相手の突破を許さず。冷静な判断でボールをさばくなど、落ち着いたプレーは光った。

 普段見せる強引な縦への突破で相手の脅威となるプレーとは裏腹に、試合後は一つ一つ言葉を選びながら、謙虚にゆったり話すなど、また違った一面をみせる1年生DF。しかし、手応えを感じている部分について口を開くと「守備では対人とか全然勝てると思うし、攻撃も中から走っていくプレーではついて来れる人はあまりいないと思ってます」と強気に言い切った。

 ルーキーイヤーに主力SBとしてプレーすると4冠を達成。期待のかかる2年目のシーズンへ向けては「今後は4回生が抜けてしまうので、チームの核となる選手になりたい」と誓う。関西学院大の右サイドに高尾ありと、ここから示し続けるつもりだ。

(取材・文 片岡涼)
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