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“個人昇格”鳥取DF馬渡、複数クラブが興味も金沢行きを即決した理由

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 ツエーゲン金沢は21日、ガイナーレ鳥取に所属するDF馬渡和彰を完全移籍で獲得したと発表した。東洋大から鳥取でプロ生活をスタートさせ、大卒2年目を終えたばかりのDFはJ3からJ2へ“個人昇格”を果たすことになった。

 ルーキーイヤーとなった2014シーズンは開幕スタメンを果たし、21戦5得点2アシストの活躍。8月に右膝半月板損傷を負い、残るシーズンの離脱を強いられたものの、リハビリで心身ともにたくましさを増し、2年目を迎えた。

 しかし、今季は「2年目こそ勝負の年」という強い気持ちとは裏腹に31戦2得点1アシストと結果を残すことはできず。チームはJ3で首位・山口と勝ち点28差の6位。「めちゃくちゃ悔しいし、不甲斐ないシーズンだった」と唇を噛む。

「ベテランがいなくて若手中心のなか、プロの集団として甘かったのかなと。それに自分自身がそういう日々を過ごしてしまったのかもしれない、自身やチームに対して厳しくできなかったのが、個人の結果に出ているのかと思う」と悔しさをのぞかせた。

 それでも出場機会を重ね、鳥取の戦力となった馬渡の元へオファーは届く。シーズン終了直後の12月上旬、どこのクラブよりも早く、金沢から正式な獲得オファーが舞い込んだ。このときの気持ちを「J3の選手なのに早くから声をかけてくれて嬉しかった」と素直に明かす。

 鳥取での1年目は4バックの両SB、2年目は3バックの両WBでプレーしてきた。金沢からは右サイドだけでなく、左SBとしての起用を考えているとも伝えられ、運動量豊富であることや、左右の足でそん色なく蹴られること、90分間ハードワークを続けられる点が高く評価されたという。

 金沢の印象については、2014年3月16日の第2節で対戦した当時のことを振り返り「作田(裕次)さんや太田(康介)さんのCBを中心とした堅く強いチーム。手強い相手だなと感じていました」と言う。対戦がなかった今季も、テレビで金沢の試合を見たといい、「一人でやるチームというより、全員で攻撃して全員で守備するイメージ。攻撃も単独での突破よりも周りを使うし、守備面ではサイドで1対1になったときも、チームで守る印象」と感じたようだ。

 そして、この時の「金沢は自分の強みを生かせるチームかもしれない」という“直感”が移籍を後押しした。「周りから僕の評価で守備がウィークポイントと言われますが、ここでならば、それを消しながら良いところを出せるかなと思いました。だから金沢からオファーを頂いたときはすぐに決めました」と言うとおりだ。

 実際には金沢だけでなく、J2複数クラブが馬渡へ興味を持っていた。金沢からのオファーを保留にし、数週間ほど決断を先延ばせば、他クラブから正式オファーが来ていた可能性は高い。それでも馬渡は金沢行きを即決。「クラブハウスや練習場ができるのにも惹かれましたね、やったー!という感じ」と無邪気に笑った。

 金沢には馬渡と名前の響きがよく似たDF阿渡真也がいる。これについて笑顔で話した馬渡は「僕は今までカズって呼ばれていたので、これからもそう呼んでもらおうと思っていたら、MF佐藤和弘さんもいるので……」と戸惑いもみせると、「本当にどうしようかなって、つまらない人間だから他のあだ名もないので、(周りに)任せるしかないかなと。チームの人にも、何て呼んでもらえばいいんだろう」と苦笑した。

 順風満帆なスタートからの大怪我による挫折。立ち上がった2年目には不本意なシーズンに直面した。鳥取で過ごした2年間で様々な経験を積んだ24歳は「金沢の来季のチーム目標はわからないですけど、今年は『J2残留』だったじゃないですか。でも選手として上を目指すべきだと思うから、僕は金沢でチームとしてJ1昇格を目指したいと思います」と金沢のDFとして誓いを立てた。

(取材・文 片岡涼)

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