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[選手権]「東京五輪世代の逸材集結!冬の主役候補たちvol.7」野洲MF林雄飛(3年)_悔しさ糧に変貌したレフティー

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第94回全国高校サッカー選手権

 夏以降、野洲高の山本佳司監督と会う度、耳にしたのが「めっちゃ、良くなってるやろ?」という言葉。笑顔と共に自信が浮かぶ視線の先にいるのは、MF林雄飛(3年)だ。関西では名の知れた存在ではあるものの、これまで目立った経歴は県選抜くらい。日の丸とは縁がなかったが、この1年で大きく飛躍を遂げ、選手権の主役候補としてだけでなく、東京五輪のメンバー入りも期待できるまでになった選手だ。

 もともと「止める」「蹴る」「運び」といったテクニックは高く、左足から繰り出すドリブルとパスは技巧派が集う野洲の中でもひと目置かれるほど。山本監督も入学前から大きな期待を寄せており、1年時から出場機会を掴むと、2年時には主力の一員として欠かせない存在になっていた。ただ、「1、2年の時は周りの先輩が皆、上手い選手ばかりで追いつこうと精いっぱい。プレーに余裕がなかった」と振り返るように、上手い選手ではあるものの、遠慮が見られたのも事実。これまで2年間は選手権出場を掴めずに終わるなど、上手さを結果に還元できていたとは言い難い。

 そんな彼が変身するきっかけとなったのは、今年6月に行われた総体県予選。準決勝で守山高に敗れて全国総体を逃すと、試合後は会場から動けなくなるほど泣きじゃくる彼の姿があった。敗戦を機に生まれた変化の一つはプレー面。これまでは中盤でタメを作り、パスで攻撃の起点となるタイプで、「これまでは周りを活かすことばかりを考えていたけど、ガツガツ守ってくる相手や、ブロックを組んでくるチームに何もできなかった」が、県総体以降はチームを勝たせるために、よりゴールに絡む意識を高めた。スタートの位置こそトップ下だが、試合が始まるとプレーエリアは縦横無尽。試合状況に応じて、サイドや前線に飛び出しチャンスを生み出す。加えて、「スペースでボールを受ける動きも攻撃の一つと思えるようになった」と話すように、ボールを持っていない時の動きも向上し、上手いだけでなく、怖さも備えた選手に変貌を遂げた。

 もう一つの変化はメンタル面。春先から雰囲気が良くないチームを盛り上げるべく、牽引しようと考えていたものの上手く行かずにいたが、県総体で負けてからは「このままでは行けないとチームメートに気づいて欲しかった。技術に関してなら僕らは徹底してやってきたから、自信がある。足りない闘争心とか高校サッカーらしい頑張りが身につけば、負けないはず」と練習から声を張り上げる姿が見られるようになったという。プレー面とメンタル面で存在感が増した彼に主将の座が託されるようになったのも自然な流れ。彼の成長がなければ、2年ぶりの選手権出場はなかったかもしれない。

「昨年、選手権予選の準決勝で退場してしまって、チームに迷惑をかけた。その後の決勝に負けて、新チームになってからも先輩のために練習してきたのに県総体で負けたり、この3年間は悔しいことの方が多かった」。野洲で過ごした3年間をそう振り返るものの、積み重ねた悔しさがあったからこそ逞しさを増し、より自分の持ち味を表現できるようになった。頂点を目標に掲げる選手権は、彼が全国区の存在へと羽ばたくきっかけとなる大会かもしれない。

(取材・文 森田将義)

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