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誰よりも声を張った流経大DF今津「みんなに笑われたりしたけれど…」

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 誰よりも声を張り、強く激しくプレーした。26日に行われた全日本大学選抜最終選考会。紅白戦では緊張により身体は固く、連携も取れずに戸惑う選手が多いなか、流通経済大DF今津佑太(流通経済大2年=流通経済大付柏高)ははっきりとしたコーチングで存在をアピールした。

 「ディエゴ!ディエゴ!ディエ、ディエ……ディエゴ!」。思わずスタンドを含めた周囲から笑いが漏れた。後方から前線のFW田場ディエゴ(国士舘大1年=日大藤沢高)へ向けて、今津が発したコーチングだった。声を張ったDFは「ちょっとみんなに笑われたりしましたけど、みんな緊張している部分があったので、よりコーチングをしていこうと思いました。分かりやすく、はっきり伝えれば、チームの統一につながっていくかなと思ったので」と説明する。

 寄せ集めのメンバーでの紅白戦。どのチームも連携不足を露呈し、パスミスが頻発。DFラインも統率が取れていたといえる状況ではなかった。それでも今津は自分に出来ることを見つけ、声を出した。「自分はそれくらいしかできることはないので。声とかは切らさないでやろうと思っていました」。選考がかかった紅白戦で怖気づかずにプレーできる強心臓ぶりを改めて見せつけた。「最後まで戦える選手を見つけたい」という宮崎純一監督ら選抜スタッフの前で充分なアピールになったはずだ。

 昨年の流通経済大は夏の総理大臣杯を連覇し、冬の全日本大学選手権(インカレ)を制する順風満帆なシーズンだった。1年生ながら主力CBとしてプレーした今津は、相手エースを封じ込めるなど、チームに大きく貢献。迎えた2年目の今季、流通経済大には3冠の期待がかかった。しかし、蓋を開けてみれば2015シーズンは無冠。総理大臣杯は準決勝で明治大に1-1(PK3-5)で敗れ、関東リーグは首位と勝ち点8差の5位。インカレは準々決勝で散った。

 無冠のシーズンを振り返ったDFは「自分のミスで失点した部分は少なからずある。それは優勝できなかったことにも関わってくるので、そういった時に情けなさや無力さは感じました」と唇を噛む。

 とはいえ転んだままではいられない。「1年目は確かにいいシーズンだった。でも自分としては、勝てなかった今シーズンは、日本一になるために足りなかったものに気づけたので。これから改善して、今後の糧にして頑張っていって、このシーズンも良いシーズンだったと思えるようにすればいいかな」と前向きに捉える。今季の反省は来季に活かす。

 また、今津は「2年目にして難しい部分も出てきたかな」と言う。失うものもなくチャレンジしていた1年目は、勢いそのままに突っ走るだけだった。しかし、2年目の今季は昨季と同じようにプレーするだけでは、結果はついてこなくなったからだ。厳しい1年だったが「前に進んでいるということ」とあくまでプラスに捉えるDFは「1年生のときには先輩から補ってもらっていた部分を、今季は自分がやることも増えてきたので。そういう部分がまだ出来ていないと気づけた。そこをどう改善して伸ばしていけるか。自分の真価が問われる」と表情を引き締めた。

「1年生のときは好きにやらせてもらって勢いもあった。でも今度は勢いだけではなくて、戦術的な部分なども考えて、色々な部分で判断できるようになっていかないといけないのが課題として出てきている。選手としての幅を広げるというか、そういった部分を頑張っている途中です」

 選考会ではDF菊池流帆(大阪体育大1年=青森山田高)やDF鈴木大誠(筑波大1年=星稜高)ら1年生CBが奮闘を見せた。血気盛んで勢いに乗るルーキーたち。全日本入りを目指す彼らの前に先輩・今津が立ちはだかる。

(取材・文 片岡涼)

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