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[選手権]「個々の力では勝てない」…全国仕様に“バージョンアップ”の香芝が藤枝東から金星

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[12.31 全国高校選手権1回戦 藤枝東高 0-0(PK3-4) 香芝高 浦和駒場]

 第94回全国高校サッカー選手権は31日、各地で1回戦を行い、浦和駒場スタジアムの第2試合では藤枝東高(静岡)と香芝高(奈良)が対戦。スコアレスのまま前後半80分を終えた試合は、PK戦を4-3で制した香芝高が初戦突破を決めた。

 奈良県予選を3年ぶりに突破して、選手権出場を決めた香芝高の米原勝監督は一つの決断を下して今大会に臨んでいた。「ウチのチームは全国大会に出る常連チームに対して、個々の力では勝てないと調整試合の中で分かりました。攻撃に枚数をかけると最終ラインが耐えられなくなるので、システムを変更しました」。

 守備時には5バックとなるため、5-4-1のシステムを採用しているように思われるが、指揮官いわく、システムは“3-4-3”。「5バックというのを植え付けると、選手がまったく攻めないようになったので、あえて『3-4-3』というシステムだと言い聞かせています。守備のときは中盤から2人降りてきて、5バックになるんだと言い聞かせました」。そして、このシステム変更が全国の舞台で威力を発揮した。

 序盤からボールを保持して試合を進めるのは藤枝東。しかし、“5バック”で守備に重心を置く香芝を崩し切れず、なかなか決定機を創出できない。すると前半19分には藤枝東をアクシデントが襲い、負傷したDF久松真之(2年)がDF大塚新斗(2年)との交代を余儀なくされた。その後も得点は動くことなく、前半終了のホイッスルが吹かれる。

 スコアレスのまま後半を迎えても攻める藤枝東、守る香芝の構図は変わらない。だが、米原監督が「最初から耐える展開を予想していて、そういう準備をしてきた」と振り返ったように、香芝は焦らない。そして、たとえ危機を迎えても守護神のビッグセーブでしのいだ。後半7分にはMF渡邉航平(3年)のパスからFW山田盛央(3年)に決定的なヘディングシュートを放たれるも、好反応を見せたGK藤井佑輝也(2年)が阻む。さらに直後の同8分には右サイドから送られたボールをゴール前で受けた山田に鋭いターンからシュートまで持ち込まれたが、これも藤井がセーブしてゴールを許さなかった。

 一方の攻撃陣は最前線に残るFW佐藤晴(3年)にMF竹末蒼大(2年)や途中出場のMF武藤巧真(1年)が絡むカウンターから好機を生み出そうとするが、なかなかシュート場面を創出できない。後半32分には縦パス1本で抜け出したFW吉川大輝(3年)がフィニッシュまで持ち込んだが、ボールは枠を捉え切れなかった。その後も、時には8人のフィールドプレーヤーがPA内に戻り、集中力を切らさない守備を披露した香芝を藤枝東は攻略し切れず。0-0のまま前後半80分を終了し、勝敗の行方はPK戦に委ねられることになった。

「PK戦では100パーセント勝てると思った」。そう語ったのは香芝の米原監督。「県大会が終わって3日間の合宿をしたのですが、そのうちの1日をPKの練習にあてましたし、その後もずっとPKの練習をしてきました。どこのチームにもPKの練習だけは負けていません」。その言葉を体現するように、この日ビッグセーブを連発した藤井が2本のシュートをストップし、PK戦を4-3で制した。全国の猛者と戦うため、「県仕様から全国仕様にバージョンアップ」(米原監督)させるために決断したシステム変更がハマった香芝が、プラン通りに試合を進めて2回戦進出を決めた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 折戸岳彦)
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