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[選手権]敵将も脱帽…開始29秒の一撃!!矢板中央MF坪川「最高でした」

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[1.2 全国高校選手権2回戦 鳴門高0-3矢板中央高 ニッパツ]

 鮮やかな一撃だった。試合開始からわずか29秒、矢板中央高(栃木)のMF坪川潤之(3年)がハーフウェーライン付近から左足で放ったシュートは相手GKの頭上を越え、ゴールネットを揺らした。先制した矢板中央は流れに乗ると、試合終了まで主導権を握り続けた。

 鳴門高(徳島)のキックオフで始まった一戦。相手が大きく蹴ろうとしたボールがこぼれ、バウンドするとピッチ中央の坪川の下へ流れた。「胸トラップしたときにGKが見えて、すぐにシュートを打とうと思いました」。冷静に胸でトラップし、ワンタッチで前へ押し出した。ハーフウェーラインを超えたセンターサークルの中。狙い済まして左足を振り抜くと、ボールは弧を描いて伸びていった。

 「打った瞬間に入ったと思った」と坪川は振り返る。必死にボールを目で追うと、相手GKの頭上を越えてネットへ吸い込まれるのが確認できた。「毎試合狙っています」と話したMFだが、「こんなキレイに入ったのは初めて。全国初ゴールですし、最高でした」と笑顔をみせた。

 偶然に生まれたゴールではなかった。試合前のスカウティングから鳴門GK河野匠哉(3年)が前に出てくるタイプの選手だと分かっていたという。「(相手GKは)前に出てくるGKだった。うちには背後のボールに強い選手がいるので、そこを狙ったボールを出して、GKにクリアされるのが嫌で。自分がどんどんシュートを打って、GKが前に出にくくなったら(森本)ヒマンとかがより活きると思った」。入らなくても味方を活かす一助になると考えてのロングシュートだったが、そのままネットを揺らすという最高の結果となった。

 このゴールで先制した矢板中央は後半にも2点を追加。鳴門の出鼻をくじくと、最後まで寄せ付けなかった。鳴門の計盛健一コーチは「ファーストシュートを止められなかったのは全て私の責任。全国の経験不足であの場面を警戒できなかったのが敗因です」と悔やむ。敵将にそう言わしめるほど価値のあるゴールだった。

 試合前から「相手GKは前に出てくる選手だから、その辺を意識してゴールを見よう」と声をかけていたという矢板中央の高橋健二監督だったが、開始直後の得点につながるとは思ってもいなかったようで、「まさか、あんなに早くああいうシュートを決めるとは」と驚きの表情。「素晴らしい。非常に良かった」と坪川を労った。

 身体能力の高いFW森本ヒマン(3年)やDF星キョーワァン(3年)が注目を集める矢板中央。坪川は「自分としてはヒマンとかをもっと活かしてあげたい。もっといいボールをあげて、楽にしてあげたい。それに守備ではキョーワァンをカバーしてあげたい」と気遣う。黒子に徹する覚悟を持つMFだったが、この日は強烈なシュートで一躍ヒーローとなった。

(取材・文 片岡涼)
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
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