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[選手権]「自己責任」でつかんだ松山工、50年ぶりの勝利!!

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[1.2 全国高校選手権1回戦 松山工1-1(PK4-1)丸岡 駒沢]

 松山工高(愛媛)が、丸岡高(福井)をPK方式の末に下して同校50年ぶりとなる嬉しい1勝を記録した。1月3日、駒沢で駒澤大高(東京B)と対戦する。福井の雄・丸岡は、同点に追いつく粘りを見せたものの、一歩及ばなかった。

 県予選無失点の丸岡の堅守と、県大会決勝で9ゴールを挙げた松山工の攻撃力が見どころとされたこの試合。松山工の坂本哲也監督が「前半は普段の出来の40%」というように、前半は丸岡のペースだった。「前半はSBが上がってくるのはわかっていたのでそこにFWをぶつけようと。あと、県外のチームとやると真ん中を割られるので、中央に枚数を増やした」というのは、丸岡の小阪康弘監督が明かしたゲームプランだった。結果として「前半はハマった」(小阪監督)。松山工としては「SBがサイドを駆け上がってなだれこんでいくサッカーを心がけている。うちは機動力が持ち味、個々の力で挑む」(坂本監督)持ち味が消され「立ち上がりから防戦一方。ディフェンシブなサッカーになった。全国では思うようなサッカーをさせてくれない」と痛感させられた。

 しかし「前半は危険な場面が多かったが集中が切れなかった。ハーフタイムに守備の立ち位置を修正し、攻撃のポジションも少しワイドに」修正を施す。結果「自分たちのサッカーに持って行けるような時間帯になって、そこから勝機をうかがおうとした」(坂本監督)。後半5分、心がけていたサッカーが具現化する。中央、FW野川稀生(3年)から右SBのDF兵頭俊昭(3年)へボールが渡ると右サイドを突破。中央への折り返しにFW徳永吉晟(3年)が合わせて先制した。

 どちらかというとペースを握っていた丸岡には痛い失点。しかし「追いついてくれると思っていた。0-1でも0-2でも、諦めないでいれば相手の動きは落ちてくる。いつもは失点して空気が沈むが、今日は沈まなかった」と小阪監督がいうように、反撃に出る。後半25分、右サイドのDF折尾凌太(2年)のクロスをMF芹川大希(3年)が頭で合わせる。バーに当たって跳ね返ったところを再び芹川が押し込み同点とした。勢いに乗る丸岡はこの後にも、押し込むシーンがあったがゴールにはならず。試合はPK方式にもつれこむ。

 松山工のキッカーの順番を決めたのは選手たちだった。「どうする?と聞いたら自分たちで決めます、と。私の案は採用されなかった(笑)。自立という言葉が適切かはわかりませんが、今の3年生は1年のときから自分たちで考え、意見を出してきた。我々指導陣は、メニューは与えこそしますが、その後の詳細は見守ることが多かったんです」(坂本監督)。最終学年になる頃には、指導陣が言う前に空気を察し、自分たちで動けるチームに成長したという。そんな彼らの自主的な責任感もあってか、キッカーは4人全員が成功した。

 一方、丸岡は2人が外してしまう。「キッカーの順番までキチッとやったつもり。絶対に外さない2人だったので…ショックは大きいです」。小阪監督がしばし沈黙の後口を開いた。それだけショックの大きさが伝わってくる。対照的だったPK方式への入り方。どちらが正解ということはない。この試合に関していえば、我慢をし続けた松山工が、最終的に報われた形になった。

 事実、坂本監督は満足していない。「明日は駒澤大が相手。アウェーになるが、今日みたいに守りに入りたくない。劣勢な場面も出てくるだろうが前からプレスをかけていくことは変えないでいきたい」と意欲を口にした。選手たちは試合前に、50年前に選手権に出場したOBから当時の話を聞いたという。本人たちにとっては遠すぎる話、だが、同校にとっては快挙といえる今日の1勝。次の試合は、「50年」という呪縛から解き放たれ、より活きが増した試合が見られるか注目だ。

(取材・文/伊藤亮)
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