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[選手権]「神がかっている」青森山田、後半AT2発で追いつきPK戦も制す

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[1.3 全国高校選手権3回戦 桐光学園高2-2(PK4-5)青森山田高 ニッパツ]

 第94回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦を行い、ニッパツ三ツ沢球技場の第2試合では桐光学園高(神奈川)と青森山田高(青森)が対戦した。桐光学園はU-18日本代表FW小川航基主将(3年=磐田内定)の2試合連続となる2ゴールで2点を先行したが、青森山田は後半アディショナルタイムに連続ゴール。土壇場で2-2の同点に追いつくと、PK5-4で競り勝ち、6大会ぶりの8強入りを決めた。5日の準々決勝では前々回王者の富山一高(富山)と対戦する。

 試合は高校No.1ストライカーのスーパーゴールで幕を開けた。前半32分、桐光学園は中央のMF鳥海芳樹(2年)からPA右の小川へパス。小川は右に流れながらも強引に体をひねって右足を振り抜き、ゴール左のサイドネットへねじ込んだ。

 エースのひと振りで前半を1点リードで折り返すと、後半3分にもMFイサカ・ゼイン(3年)の右クロスをファーサイドの小川がヘディングシュート。上体は伸び切っていたが、抜群の身体能力でしっかり捉え、ゴールネットを揺らした。

 2回戦の長崎南山戦(3-0)に続いて2試合連続の2ゴール。2-0とリードを広げ、このまま青森山田を圧倒するかと思われたが、後半19分のワンプレーが流れを大きく変えることになった。小川がPA内でU-18日本代表GK廣末陸(2年)に倒され、PKを獲得。これで3-0、ハットトリック達成かと思われた場面で、小川のキックはゴール上に外れた。

「まだツキがあるのかなと」。青森山田の黒田剛監督が振り返るとおり、ここから怒涛の反撃が始まった。PK失敗の前からMF吉田開(3年)、FW田中優勢(3年)、DF波塚勇平(3年)を立て続けに投入し、攻撃の圧力を強めていた青森山田。後半23分にはFW成田拳斗(3年)も投入し、交代枠を使い切った。

 FK、CK、そしてDF原山海里(3年)のロングスロー。再三のセットプレーで桐光学園ゴールに迫ると、後半アディショナルタイム2分、MF高橋壱晟(2年)の右CKをファーサイドのDF近藤瑛佑(3年)が頭で折り返し、成田がヘディングで押し込んだ。1-2。1点差に追い上げ、ピッチ上の空気は一変した。

 この場面ではGKの廣末もゴール前に上がっていた。監督の指示ではなく、自分の判断で上がったという廣末は「フィールド選手と比べて、自分は合わせるのは得意じゃない。でもブラインドになったり、おとりになったりして、他の選手が決めてくれればいいと思っていた」と、そのときの心境を語る。黒田監督は「彼の『俺が(点を)取ってやる』という気持ちでみんなの意識が変わった」と指摘。守護神の執念が、奇跡のドラマを呼び込んだ。

 2分後の後半アディショナルタイム4分、左サイドからのスローイン。再び廣末がゴール前に上がった。原山のロングスロー。廣末を含めた長身選手がニアサイドに飛び込んでいく中、ボールは密集地帯を越え、ファーサイドに流れてきた。合わせたのは165cmの吉田。ヘディングシュートがゴールネットを揺らし、2-2の同点に追いついた。

 試合はそのままPK戦に突入したが、流れは完全に青森山田に傾いていた。先攻の桐光学園は5人目の小川が廣末に止められ、万事休す。5人全員が成功した青森山田がPK5-4で競り勝ち、準優勝した09年度大会以来となる準々決勝進出を決めた。

 1回戦の大社戦(3-2)も2点ビハインドから3点を取って3-2の逆転勝利を飾った青森山田。黒田監督は「2点差をひっくり返すことはなかなかないが、そういう雰囲気を持ったチームであるのは間違いない。今年は本当に神がかっている」と、興奮気味に語った。「今年のチームは今までになくチームワークが良く、負けん気が強い。僕自身、何としても勝たせたいと思うチーム」。MF柴崎岳(鹿島)らを擁しても届かなかった選手権制覇。“奇跡のチーム”には、悲願成就を予感させる何かがある。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

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