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約500万円で19人補強、千葉・高橋GM「整理しないと先にいけない」

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 ジェフユナイテッド千葉は2016シーズンへ向けて、大幅な選手の入れ替えを行った。チームを去ったのは昨季の主力を含む24名。新たにチームへ加わったのは、レンタルバックの選手を除いて19名にものぼる。17日にはフクダ電子アリーナで新体制発表会が行われ、フロントスタッフや監督、選手全員が登壇した。

 会見後に取材に応じた高橋悠太ゼネラルマネージャー(34)によれば、新加入19選手を獲得する際にかかった移籍金は約500万円のみ。川崎Fと契約を残していたFW船山貴之を完全移籍で獲得するのに移籍金が発生したものの、残る18名は0円で獲得した。

 今回の大量放出の裏には“財政問題”もあった。2016シーズンのJ2では「上から4番目」ほどの資金力を持つ千葉だが、これまでに獲得したFW森本貴幸などの移籍金がクラブの財政を圧迫していたのだ。昨年11月にGMへ就任したばかりの高橋氏は「移籍金にかける割合が尋常じゃなかった。移籍金が選手の給料の首を絞めているような状況だった。そうすると実際にいい選手を取ることはできない。そこを整理しないと先にはいけない状況になっていました」と明かす。

「(昨季の)あのメンバーをあのまま持てなかった。彼らを残していたら来年も再来年も償却があるし、実質的な選手に人件費をかけられないという状況でした」。契約を残していた選手を他クラブへ売却することで、この問題を整理したのだ。

 また新生・千葉には千葉県内出身者や県内の高校出身者が多いが、これは意図せぬ形で起きた偶然だったという。クラブへの愛や強い気持ちを持っている選手を集めた結果、キャリアのどこかで千葉県に接したことのある選手が多くを占めた。

「リストアップした選手にオファーを出して会うと、千葉出身の選手はジェフに対する気持ちをどこかに持っている選手が多かった。優先順位として、気持ちが強い選手を集めたいというなかで、千葉出身の選手が多くなった。どちらの選手を取るか迷ったときは、千葉に対する気持ちがある選手を取ろうとも思っていた」

 また高橋GMが千葉への強い思いを持つ選手の獲得を第一優先にすると決めたひとつのきっかけがある。昨季・最終節の讃岐戦(0-2)後、ミックスゾーンで選手たちの様子を見ていたときのこと。「そういうときにチームが一つになるという雰囲気が見られればと思いましたけど、表情を見ているとチームから心が離れている選手が何人かいたので。そういう状況で勝てるほどJ2は甘くない」。この光景が“改革”を後押しした。

 そして組織を改変するなかで、一つのポイントとしたのが「上下関係の構築」だった。高橋GMは「僕自身、ジェフの中を見たときに、分かりやすく言うと上下関係がしっかりしていないとすごく思ったんです。若い選手が先輩に対してのリスペクトがなかったりとか、目上の選手が若い選手に対して意見とか注意とか、選手として大事にしないといけないことを言えない選手が多くて」と昨季を振り返る。

 ここ数年の千葉では、クラブ初のタイトルを獲得したイビチャ・オシム監督の率いた2003~2006年当時の千葉を知る選手は少なく、かつてのクラブの雰囲気を知る者も減った。ナビスコ杯を2連覇した勝者のDNAは薄れつつある。クラブの栄枯盛衰に寄り添い続ける選手に対しては、若手から自然とリスペクトする感情が生まれ、そこから上下関係が構築されていく。「あの時代を知っている選手」というだけで、尊敬の対象となるのだ。しかし、昨今の千葉にはそのような面が少なく、組織としての基盤にその要素が入っていなかった。

 だからこそ、今オフに改革を進めるクラブ側にはかつての“レジェンド”を揃えるという選択肢も浮上していた。具体的には「出戻りの選手を増やすこと。かつて千葉でやっていた山岸(智)や羽生さん(直剛)、巻さん(誠一郎)を戻してチームをつくる」と考える時期もあったと高橋GMは明かす。

 しかし「監督がそういう選手を使いやすいかどうかと考えた結果、逆に千葉への強い思いを持った新しい選手を多く集めた方が、監督が何かを強く言ったときに一つになれる浸透度はどう考えても早いし、自然と上下関係も出来ていく」と思うに至り、今回の24人退団の19人補強という大幅な戦力入れ替えを実施した。

 早稲田大までは選手としてプレーしていた経歴を持つ高橋GMは、八千代高時代に千葉県選抜として国体優勝した当時のチームメイトでもあるMF佐藤勇人にチームリーダーとしての信頼を寄せている。「勇人は一番初めにクラブに残ると真っ先に決断してくれた責任感ある奴なので。一回も外に出ることを考えずにいてくれた」と明かす。

 また新加入選手ではDF近藤直也やGK佐藤優也の名を挙げ、「勇人もそうですし、ドゥー(近藤)とかあの辺が引っ張っていってくれれば。ドゥーはレイソルでもそれをやっていた選手なので。あと佐藤優也は練習中に一番喋っていますし、ああいう言葉に力を持っている選手というのはいないといけないとは思っていた」とピッチ内外での立ち振る舞いに期待を寄せた。

 加えてGMは今後、選手との契約方法についても見直しを計る意向だ。今オフに「残したいという思いがあった選手に対しては、そういう話をしたりはした」と言う。福岡へ移籍したDFキム・ヒョヌンや仙台へ加入したDF大岩一貴には契約延長などのオファーをしていた。しかし、2人とも他クラブへ移籍。残したかった戦力を失うことになってしまった。

 同GMはこの状況に契約の結び方に原因があったと指摘。「残したい選手を契約で縛れていないんです。昔の話になりますが契約の仕方に問題があった。J1だったらフリーで出て行っていいとか、契約を残したいといっているけど、切れてしまう形になっているとか。そういう契約が乱発していた」。だからこそ「そこはしっかりしていきたい」と“テコ入れ”を明言する。

 関塚隆監督は会見の場で「19名の志の高い新たな選手たちを加え、新生・千葉としてスタートします」と話した。かつての千葉を内側から肌で感じていた選手はたしかに少ない。しかしながら対戦相手として、あるいは地元のクラブとして、心のどこかにジェフを感じ続けていた選手やスタッフが多く集まった。意図せず刻まれたジェフのDNAを呼び覚まし、J1昇格という目標の下、新生・千葉の挑戦が始まる。

(取材・文 片岡涼)

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