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[新人戦]5発快勝!選手権の悔しさを糧に、名門・藤枝東はパススタイル貫いて勝つ

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[1.31 静岡県高校新人大会中部地区決勝 藤枝東高 5-0 科学技術高 藤枝東高G]

 平成27年度静岡県高校新人大会サッカー競技中部地区大会は31日、2ブロックの各決勝戦2試合が行われ、藤枝東高静岡学園高がそれぞれ優勝した。藤枝東と科学技術高とのブロック決勝は藤枝東が5-0で快勝。中部地区大会の上位12チームが県大会に出場する。

 スタイルを貫いて勝つ。序盤から主導権を握って攻める藤枝東は3トップの中央に入ったFW岩田寛生(2年)が良くボールを収めて中央、サイドから分厚い攻撃。MF井手皓介(2年)とMF山口晏侍(1年)のダブルボランチから岩田への縦パスが入り、これにトップ下で絡む10番MF曽根大和(1年)が個でDFを剥がすなど決定機をつくり出した。先制点は前半8分。相手DFラインのパス交換が乱れたところを「ああいうところを狙うのはボクの得意なところなので。去年DFもやっていましたし、球際のところでは負けないと思っていたのでパスが弱かったところを狙っていった」という岩田が強引にボールを奪い取り、右中間から中央へ持ち込んで左足シュートを流し込む。

 その後も右オープンスペースへの配球などピッチを広く使ってスペースをつくりながら、中央を細かい連係で破ろうとする藤枝東は23分、右CK後の混戦から山口が競り勝ち、最後は曽根がゴールへ押し込んで2-0。さらに38分には井出からの縦パスを受けた曽根が右への動きでDFをかわしながら右足シュートをゴールへ叩き込む。科学技術もCB増田連太(2年)中心にゴール前で踏ん張り、カウンターから10番MF中村勇次(1年)とFW加藤翼(1年)の連係やMF加島誠也(1年)の仕掛けなどから攻め返す。だが、前半は藤枝東の3-0リードで終了。ケガでDF久松真之(2年)、MF若尾海(2年)ら主力候補を欠いた藤枝東だが、注目GK細川脩造(2年)やCB村松正規(2年)、中盤で高さを発揮した山口ら守備も大きく乱れることなく前半を終えた。

 科学技術は後半、セットプレーや長身FW堀瑠伊(2年)の突破などで反撃したが、藤枝東はボールを握って主導権を離さない。そして18分には山口のインターセプトを起点に左サイドからPAへ運んだ交代出場FW後藤達弥(2年)がゴールを背にヒールパス。山口のリターンを受けた後藤が右足で決めて4-0とした。メンバーを入れ替えながらも「(下のチームの選手や)途中出場した子たちも努力している子たちなので(選手層に)厚みが出てきているのかなと思います」と小林公平監督が目を細める藤枝東は、井手の好パスなどでチャンスをつくると32分にも井手がストレートの弾道で蹴りこんだ右アーリークロスを後藤が右足ダイレクトで合わせて5-0で快勝した。

 全国高校選手権優勝4回の藤枝東は昨秋の全国高校選手権予選で2年ぶりに優勝。トーナメント戦、プリンスリーグ東海でも結果が出ず、前評判は決して高くなかったが、守備に重きを置いて勝ちに徹したチームは無失点優勝を果たした。だが、ボールを保持して主導権を握り、鮮やかな崩しでゴールを奪い取る本来のパススタイルを十分に発揮できた訳ではない。期待された中で臨んだ全国でも、攻撃は不発。5バックを敷いてきた香芝高の分厚い守りを破ることができずに0-0からのPK戦の末、まさかの初戦敗退を喫してしまった。

 全国の強豪相手にも自分たちのスタイルを発揮し、勝つチームにならなければならない。まだ新チームがスタートして1か月弱だが、小林監督はボールを保持する時間を増やすため、その意識を高めるために自チームと対戦相手のポゼッションを計測させて数字でも選手たちに説明しているという。この日はスタンドの観衆を唸らせるようなパス、崩しを見せたが、それでも厳しいプレスを受けた試合では変化をつけられなかったり、スペースを見つけられなかったりとまだまだ課題がある。この科学技術戦ではできた部分もあるが、名門はより高いレベルを目指すだけに満足感はない。小林監督は「昨日の試合の映像見せたりして『(選手同士の)関係作ってサッカーしろよ』と。(この試合に関しては)スペースあったから、よく味方、相手のスペースを見つけながらできた。あれが速くなった時に自信持ってできるか。全国で戦う上ではまだまだ足りないものが多い」

 藤枝東にとっては同じ進学校で、パスワークと判断力を武器に戦う國學院久我山高が全国準優勝したことは刺激になったという。小林監督は「向こうがスタイル貫いて勝って、ウチがスタイル変えて県大会勝って。余計に悔しかったですね」と素直に認めていたが、選手たちも同じ思いを抱いていた。曽根は國學院久我山の準々決勝や準決勝も見たと言い、岩田は「久我山、いいサッカーだねとみんなの中で話していて。見ていて凄く面白いサッカーをしていたので自分たちもやりたい」と力を込める。

 今年は全国舞台で自分たちがスタイルを貫いて勝つ。今はそのために力を磨く。曽根は「新チームになってパスを繋ぐことをやってきたけれどまだ全然繋げていない。もっと質を上げていかないと、静学(静岡学園)とか(清水)桜が丘相手にはできないと思う。まだまだ簡単なミスとかも多いので」と質を上げることを口にし、岩田は「まだまだ詰めていくところがある。全国優勝が目標。昨年は全員がそれを強い気持ちで思っていたかというと少しズレがあったかもしれない。チーム全体としてもう一度、全国制覇という目標を掲げてそれを目指していきたいです」。県1部リーグで戦う今年はリーグ戦で常に主導権を握ることを目指しつつ、大学生などレベルの高い相手との厳しい試合も経験しながら強化していくプランがある。山口が「去年悔しい思いしたので今年こそ全国優勝」と口にしたように、悔しい思いを糧に成長を目指す藤枝東が全国で必ず借りを返す。

[写真]前半8分、藤枝東は岩田が左足で先制ゴール

(取材・文 吉田太郎)

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