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[新人戦]パスワーク成熟の近大和歌山が上々の滑り出し「県総体、選手権予選で優勝して、全国で戦えるチームに」

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[2.6 和歌山県高校新人大会3回戦 星林高 0-5 近大和歌山高 田辺スポーツパーク]

 平成27年度和歌山県高校サッカー新人大会の3回戦が6日に行われ、星林高と近大和歌山高が対戦。5-0と大勝した近大和歌山が7日に行う準々決勝へと駒を進めた。

 OBである藪真啓監督が就任して今年で3年目。今年、現体制で初の全国大会を狙う近大和歌山が上々の滑り出しを見せた。立ち上がりからテンポの良いパス回しで試合の主導権を握った近大和歌山だが、「新チームになってから初めての公式戦なので、少し硬さが見られた」(藪監督)というように、足元でボールを受ける場面が目立ち、5バック気味の布陣でゴール前を固めた星林を崩せず。サイドからのクロスも相手DFに弾かれる状況が続く。前半12分にはMF森下敬介のスルーパスからFW村雲秋斗がシュートを放つもGKの正面。続く13分にも中央の森下から右のMF田中友に開き、村雲がゴールを狙ったが、枠を捉えることができない。

 得点には至らないものの、徐々に緊張がほぐれた近大和歌山は前の選手を追い越す動きが増加。流動的な仕掛けで星林の守備を崩す機会が増え、22分にはエリア左でFKを獲得する。キッカーは10番の森下。彼がゴール前に入れたクロスをMF伊藤誠祥が頭で合わせてゴールネットを揺らした。続く24分には左サイドを駆け上がったDF小畑甚がゴール前にクロスを展開。田村が反応したこぼれ球が混戦となったが、最後は村雲がターンから左足を振り抜き、2点目を叩き込んだ。更に27分にも右からテンポのいいボール回しでサイドを変えて、小畑の下へ。PA左に持ち込み打ったシュートがゴールに突き刺さった。押し込まれる時間が続いた星林も32分に自陣でのボール奪取からFW福井優が左を前進。左前方に出したパスをFW玉置裕一がフリーで受けたが、トラップが大きく相手GKの下へ転がってしまう。

 後半に入ってからも近大和歌山のペースは変わらず。7分にMF貴志圭吾が右ポスト直撃弾を放つなど積極的に追加点を狙いに出た。12分にはMF藤原渓が左からグラウンダーのクロスを展開。ゴール前でこぼれたボールを森下が押し込もうとしたが、GK長濱充恭の好セーブによって、CKに逃げられた。再び試合が動いたのは18分。パス回しから右サイドを抜けた田村がゴール前にパスを入れると、反対サイドの藤原がダイレクトで合わせて4点目をマーク。28分にも中盤での素早いパス回しから、浮き球がゴール前に入ると、飛び出したGKよりも先に村雲がボールに触り、無人のゴールに流し込んだ。以降は「課題は終盤にある。終盤に足が止まってミスも増えた。シュートチャンスで打てなかった。1試合通して安定して試合を進められるようになりたい」と伊藤が反省を口にしたように勢いが落ちたため、このまま5-0で試合終了を迎えることになった。

「時間をかけることができているのが今年の強み。やってくれると思っている」。そう藪監督が口にするように、近大和歌山は確かな手応えを持って今年に挑む。前年から大幅にメンバーが入れ替わった昨年の新人戦は体格面で見劣りする下級生で挑んだことも相まって、持ち味が出せず初戦敗退。全国高校総体予選もベスト8で初芝橋本高に敗れて涙を飲んだ。夏の合宿によって、精神的に急成長を遂げて挑んだ選手権予選も決勝戦まで進んだものの、再び初芝橋本に完敗。決して芳しい結果が残せたとは言えない一年ではあったが、半数以上を占めた下級生たちが貴重な経験を積んだ。

 今年は「プレーの呼吸が合っている」と伊藤が口にするなど、持ち前のパスワークが成熟。年明け早々に参加した選手権に出られなかった有力チームが集う「ニューバランスカップ」の1次グループで暁星高と北海道大谷室蘭高から勝星を奪う原動力になった。決勝トーナメントの1回戦で桐生一高に敗れはしたものの、他県の強豪と接戦を演じ、選手たちが自信を得たのは確かだ。新人戦での目標は内容に拘ること。「昨年は組み立てる所までは出来たけど、ゴール前でもっとチャレンジすべきという反省があった。なので、今年は複数で連動して、アタッキングサードを崩したい。選手の関わりを増やして得点を奪うのが今年一年の課題」と藪監督を話すように大会を通して、より攻撃の質を高めることができれば「県総体、選手権予選で優勝して、全国で戦えるチームになる」(DF九鬼拓己)という目標が見えてくるはずだ。

[写真]近大和歌山MF森下は、高い技術力で攻撃を牽引した

(取材・文 森田将義)

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