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「東京五輪への推薦状」第11回:北九州の”野生児軍団”九国大付が放つ新たな「面白い」タレントMF今田源紀

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 2020年の東京五輪まであと4年。2020年に23歳を迎える1997年生まれ(現在の大学1年生の早生まれと高校3年生)以降のサッカープレーヤーは皆、東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持っています。今後、間違いなく注目度高まる東京五輪世代の選手たち。連載中のコラム、「東京五輪への推薦状」では元エルゴラッソ編集長で、現『J論』編集長の川端暁彦氏にいまだ年代別日本代表への招集経験がない選手、「まだまだ、いるぞ」という才能たちを連続で取り上げてもらいます。第11回は九州国際大付高のMF今田源紀選手です。


 名古屋の韋駄天FW永井謙佑を筆頭として野生味あふれる選手を日本サッカー界に送り出してきた福岡の雄、九州国際大付高。打倒東福岡にあらためて燃える今季の新チームにも、ちょっと変わったタレントがいる。

 強いインパクトを受けたのは昨年末の高円宮杯プレミアリーグ参入戦だった。九州2位でこの舞台に臨んだ九国大付が12月11日に行われた初戦で対峙したのは、夏の日本クラブユース選手権を制した“大本命”横浜FMユース。激戦区の関東を抜けてきたJユース屈指の強豪に対して、九国大付は約1か月前の高校サッカー選手権福岡県予選で敗退済み。モチベーションという部分を含めて難しい試合になるだろう。そんな単純な構図も思い浮かんでしまったが、北九州の野生児たちはそんなに“浅い”チームではなかった。

 戦術的には“ドン引き”に近いが、殻に籠もる感じはない。一言で表せば、「獰猛(どうもう)」。猛々しくボールに当たり、横浜FMに自慢のテクニックを披露するスキを与えない。パワフルというよりソウルフルである。決してカッコ良さやオシャレな感じのするサッカーではないのだが、彼らが本気で勝ちに来ていることは明らかで、それが何とか知恵と技でそれを打ち破りに行った横浜FMのチャレンジと合わせて、“フットボールらしい”好勝負になった。

 試合が進むに連れて目を惹かれたのは九国大付のボランチである。2年生MF今田源紀
は、あわや先制かという強烈なヘディングシュートでトリコロール軍団を脅かし、運動量と球際の強さ、それに何より180cmの体格にもかかわらず“無理の利く”身体的なアビリティの高さが際立ち、自然と目を奪われた。相方である主将の水城太賀ほど洗練された選手ではないが、何というか“面白い”のだ。結局、九国大付は現U-19日本代表のFW和田昌士にスーパーゴールを食らって敗れるのだが、終わったあとに「もうちょっと観たかった」と思わせる余韻は確実に残った。

「あの試合は自分たちの中でも、『一番戦ったな』と思えた試合でした」

 2月の九州高校サッカー新人大会で当時のことを訊ねられると、今田はそう振り返った。チーム事情もあってボランチからトップ下へポジションを上げた今季、「去年は守備が8割くらいだったけれど、今年は攻撃が7割くらいの意識でやっている」と、よりゴールを目指すようになった。ただ、トップ下の位置でも守備力の高さは際立っており、相手ボランチからボールを刈り取るプレーは天下一品。ヘディングの強さと合わさって一般的ではないちょっと変わったトップ下として存在感を出してくれそうだ。

 江藤謙一コーチは今田について「とにかくサッカー馬鹿、サッカー小僧なんですよ」と笑いつつ、「中学まではヌボーッとした感じで、そもそも特待生でもなかったんですよ。でも体が大きくなって筋力が付いてきたらホントに変わった。とにかく走れるし、タフで怪我をしないし、体を張れるし、パワーや身体能力も持っている」と、その才幹に賛辞を惜しまない。

 水城前主将の背負っていた伝統ある「14番」と共に「魂」も継承した新シーズン、九国大付の「柱」となるべき選手は誰がどう観ても今田である。「サッカー選手として生きていく」という夢をかなえるためにも、まずは全国への扉を開くことを目指す。先輩たちの残してくれた魂を糧に、新たな道を切り開く。

(取材・文 川端暁彦)
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