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“圧倒的に熱い”新指揮官の下で名古屋U18が示し始めた反発力

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[3.13 プーマカップ群馬大会決勝 名古屋U18 6-0 関東一高]

 “圧倒的に熱い”男が名古屋にやって来た。その情熱について「火傷に注意しないといけない」と言ったのは、森山佳郎U-16日本代表監督。今季から名古屋グランパスU18の新監督に就任したのは、かつてその森山氏と二人三脚でサンフレッチェ広島ユースを引っ張っていた山崎真氏である。

 山崎氏の招へいに動いたのは、名古屋U18の前監督にして現TDの高田哲也氏。「(山崎新監督は)名古屋に足りないものを持っている」という評価だった。何が足りないのかといえば、「心技体の『心』の部分」(山崎監督)ということになる。

「(広島ユース時代に)対戦していたときから感じていたことだけれど、中に入ってみてあらためて感じるところがありました。名古屋は本当に上手い子が多い。その一方で、やっぱりメンタル面に課題がある。就任してから技術的なことよりも精神的なことを働きかけることが多いですが、それは今年ずっとそうしていくつもりです」(山崎監督)

 山崎コーチが指導していた時代の広島ユースはとにかく逆転勝利の多いチームだった。その理由をメンタルタフネスだけに求めるのは安直に過ぎるが、しかし一因だったことは間違いない。指揮官が求めるのは「殴られたときにシュンとなるのではなく、殴り返しに行ける選手」だと言う。

「名古屋の選手は本当に素直です。大人びた選手も多くてトレーニングもやりやすい。でも僕がやりやすいことがいいのかどうか。もっとギラギラ、メラメラしているやつがいてもいいし、僕の言うことに反発してくる選手がいたっていい。僕がゴリさん(森山監督)から学んだのは、そういう選手がいたほうがかえってチームとしては強くなるということなんです」(山崎監督)

 チーム内の仲の良さについても、「それでいいのか?」と働きかける。「お互いもっとバチバチやり合える関係が本当のチームワーク。そうやって積み上げていかないと、本当に苦しいときに力が出てこない。今はいいときはいいのだけれど、流れが悪くなるとみんな一斉に悪くなる。そこで『おい、行くぞ!』みたいな選手が出てくるチームにしないといけない」と言う。

 就任して2か月余りという段階だが、山崎監督は「手ごたえも出てきています」と明言する。3月12日から13日にかけて開催されたプーマカップ群馬大会Ⅱの前橋育英高戦では「新チームになって初めて」という逆転勝ちを収めた。「1点差でいいから勝ち切れるチーム、そして逆転勝ちのできるチームを目指している」山崎監督にとって、選手が示した反発力は、率直にうれしかったようだ。

 名古屋からオファーが来たとき、山崎監督は「絶対にやらせてほしい」と即座に返したという。それはこのチームが持つ課題を認識すると同時に巨大な可能性も感じていたからだ。「僕はオブラートに包むとか、黙ったままやるとかできない人間です。選手たちには僕が何を課題と感じているかはそのまま率直に伝えたし、これからもそうやって愚直にやっていきます」と言う新指揮官の下で、名古屋U18がどう変わるのか。果たしてシーズン終盤にどういうチームに化けているのか。楽しみに待ちたい。

(取材・文 川端暁彦)

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