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「東京五輪への推薦状」第12回:岡崎を継ぐサムライFW安藤瑞季がU-17代表デビュー戦へ挑む

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 2020年の東京五輪まであと4年。2020年に23歳を迎える1997年生まれ(現在の大学1年生の早生まれと高校3年生)以降のサッカープレーヤーは皆、東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持っています。今後、間違いなく注目度高まる東京五輪世代の選手たち。連載中のコラム、「東京五輪への推薦状」では元エルゴラッソ編集長で、現『J論』編集長の川端暁彦氏にいまだ年代別日本代表への招集経験がない選手、「まだまだ、いるぞ」という才能たちを連続で取り上げてもらいます。第12回は長崎総合科学大附高のFW安藤瑞季選手です。


 現地時間3月14日、プレミアリーグで首位を走るレスターのFW岡崎慎司が衝撃的なバイシクルシュートを突き刺し、フットボールの母国にその勇名を轟かせた。ただ、よく知られているように、岡崎は高校時代から日本を代表し、世界レベルで活躍できるストライカーになると思われていた選手ではなかった。この連載の意義を象徴するような選手でもあるわけだが、今年の九州高校サッカー新人大会でも「まるで昔の岡崎みたいだ!」と思わせてくれる選手がいた。

 長崎総合科学大附高のFW安藤瑞季(1年)は、17日から開幕するサニックス杯国際ユース大会を戦うU-17日本代表に追加招集で選出された。各年代を通じて初めての代表招集である。厳密に言えば、この連載に登場する資格はないのだが、彼を取り上げることは九州新人大会の時点で決まっていたのでお目こぼしいただければと思う。

 高校では3トップのセンターFWを務める。徹底してサイドを破ってのクロスから得点を狙うチームにあって、安藤の役目はポストワークよりもフィニッシュワーク。175cmと決して大柄ではないが、勇猛果敢にニアサイドへ飛び込んで相手DFより少しだけ早く点で合わせる能力は滅法高い。カウンターから一気に裏へ抜け出していくプレーも魅力で、鹿児島開催となった今年2月の九州高校サッカー新人大会ではこの二つの形からゴールを量産して、得点王にもなった。準決勝では選手権王者・東福岡に冷や汗をかかせる先制弾を鮮やかに決めるなど、存在感を見せ付けた。その活躍ぶりには、70歳の情熱家・小嶺忠敏監督も「1年生のときは本当に怪我が多かったんだけど、良くなってきた。馬力があるし、シュートもある」と目を細めた。

 安藤自身があこがれるのは、その小嶺監督の教え子でもある元日本代表FW大久保嘉人(川崎F)。「どこからでもシュートを決められる、自分にとって特別な選手」と目を輝かせる。もっとも、自分が大久保とはちょっとタイプの違う選手であることも自覚しており、「ゴリゴリ行ってフィニッシュまで行くのが自分(のスタイル)。その気持ちは忘れないようにしたい」とも断言する。

 ちなみにU-17日本代表選出の報は「先生から特に何も言われてなくて、インターネットで知った」と笑う。代表メンバーには友達どころか知り合いレベルの選手もほぼいないという状況だが、「チームの代表として呼ばれたと思うので、絶対に負けていられない。自分がどれだけやれるか試したい」と力強く語ってくれた。

 縦に速い、ダイナミックなサッカーの中で生きるのは分かっているが、ポゼッションで存在感を出せと言っても難しいだろう。ただ、U-17日本代表の森山佳郎監督はそんなこと百も承知のはず。となれば、変にエリートくさいプレーをするのではなく、持ち前の勇猛果敢さと、どんな形であれゴール前に来たボールをゴールに押し込むという岡崎を彷彿とさせる“安藤らしさ”を表現していくしかない。青いユニフォームをまとって刻む最初の一歩は、「全国で通用する選手になる」という年初に掲げた目標をかなえるための第一歩となる。

(取材・文 川端暁彦)
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